Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.30 マルチ CAM2000 オートフォーカスモジュール

2001年に登場したD1Hに続き、プロユーザー向けデジタル一眼レフとして昨年11月に発売となった D2H。新機軸のAFシステムを搭載した話題のモデルを、AF畑一筋の設計者ならではの視点で紹介!

内山重之 (うちやま・しげゆき)

開発統括部開発部第五開発課所属
入社以来AFシステムの開発一筋で、1987年以降に発売されたほとんどのAF関わってきた。プライベートで使っているカメラはU2がメインだが、仕事から離れて本当に撮影を楽しみたいときはマニュアル機のFM3Aを使うという。「AFシステムには教科書的な公式のようなものがなく、経験の積み重ねが頼り。私なりに蓄積したものを、後輩たちに残していけたらと思っています」

D2Hでお目見えした新しいAFセンサー「マルチCAM2000オートフォーカスモジュール」プロユースならではの充実機能に迫る!

D2HはD1Hの後継機で、新聞社などのプロカメラマンのユーザーも多いデジタル一眼レフですね。シャッターチャンスを逃さない、真骨頂ともいえる新AFシステムについて教えてください。

「はい。このD2Hのために新しく開発したAFセンサー「マルチCAM2000オートフォーカスモジュール」を搭載しています。ポイントは大きく3つあります。まず、従来の当社製品ではフォーカスエリアが最大5点だったのですが、それを11点に増やしました。撮影画面を広くカバーできるようになったんです。次に、両サイドを除く9点のフォーカスエリアがクロスタイプセンサーになっているので、縦縞でも横縞でもしっかりピントを合わせられます。3つ目は、デフォーカス検出範囲が広いことで、レンズが迷うことなくピントを検出できるという点です」

3つのなかで、一番の特長というとどれになりますか?

「やはり2番目のクロスタイプセンサーですね。このクロスタイプセンサー自体は、ヨコ方向だけよりタテ方向も感知した方が当然いいわけで、当社に限らず、またユーザーの間でもすでに評価されているものでした。しかし技術的になかなか難しいので、他社では中央付近しかクロスエリアを実現していません。当社では1996年発売のF5から横位置のエリアもクロスになっていますが、D2Hでは更に上下位置、そして斜め位置にもクロスエリアを配置する事が出来ました」

なるほど。そのクロスタイプセンサーを搭載するために、どういう技術が必要だったのでしょうか。

「レンズから入った像をCCDというイメージセンサーで感知させるんですが、普通はこれが1つなんです。しかしD2Hでは、クロスタイプセンサーを機能させるために、3つのCCDセンサーを組み込んでいます。1つのCCDセンサーで済ませようとすると、どうしても光学的に無理が出てくるんですね。ですから、3つのCCDセンサーを独立させて組み込みました」

1つじゃなく3つのCCDセンサーというところがポイントなんですね

「はい。3つのCCDセンサーは光学的には使用する部分が異なるのですが、これらを同一のCCDセンサーで兼ねさせるために設計するのに非常に苦労しました。「同一なら検査するときに楽かな?」なんて安易な気持ちで始めたら却って苦労してしまいました(笑)」

4つのモードと動体予測機能で新AFシステムを最大限に生かす工夫が

機能重視の新AFシステムですが、実際の使い方などについて教えてください。

「フォーカスエリアが11点もあると、たとえばピントを合わせたい対象が撮影画面の中央にないときなど、逆に不要なものを拾ってしまうかもしれませんよね。そこで、切り替えできる4つのAFモードを採用しています。1つのフォーカスエリアを選んで使う「シングルエリアAFモード」、選んだフォーカスエリアを他の10点でバックアップする「ダイナミックAFモード」、11点を5つに分けて使う「グループダイナミックAFモード」、そして一番手前にある被写体に重なるフォーカスエリアを優先する「至近優先ダイナミックAFモード」。この4つのモードを状況に応じて切り替えることで、さまざまなシチュエーションに対応できるようになっています」

「グループダイナミックAFモード」は、D2Hから登場したものですよね。

フォーカスエリア配置。11点のフォーカスエリアは、開放F 値の明るさにかかわらず、すべてのAFニッコールレンズ装着時に使用可能。開放F値(AF-Sテレコンバーター使用時は合成F値)が、F5.6より明るい場合は、すべてのフォーカスエリアがレンズを問わず使用できるため、レンズを交換しても安定したAF撮影が可能だ。
フォーカスエリア配置。11点のフォーカスエリアは、開放
F 値の明るさにかかわらず、すべてのAFニッコールレン
ズ装着時に使用可能。開放F値(AF-Sテレコンバーター
使用時は合成F値)が、F5.6より明るい場合は、すべて
のフォーカスエリアがレンズを問わず使用できるため、
レンズを交換しても安定したAF撮影が可能だ。

「はい。「シングルエリアAFモード」と「ダイナミックAFモード」は、D1Hでも使われていました。今回新しく採用した「グループダイナミックAFモード」ですが、これは11点あるフォーカスエリアを、大きく5つのグループに分けて、その1つを選んでピントを合わせるというものです。上、下、左、右、そして中央の5つですね。ピントを合わせたいものの画面上での位置を大まかに限定しますので、ピントの検出範囲を広く維持しつつ、構図を重視した写真を撮ることができます。撮影画面では、選んでいるグループが赤く表示されるので、視認性も問題ないと思います」

素早いピント合わせと構図の両方をカバーできるわけですね。

「その通りです。このAFシステムの名前に入っている「2000」というのはセンサーの画素数なんですが、F4のセンサーは200でした。それから10倍になっていまして、それだけ処理能力もアップしています。このD2Hは1コマにつき120msを実現し、1秒間で8コマの撮影が可能です。しかしそのスピードにレンズが対応しないと意味がないですから、レンズを駆動させる技術も重要です。またスピードといえば、動きを予測してピントを合わせるという機能があります。たとえば、短距離走のランナーを正面から撮ろうとしたとき、シャッターを切った瞬間にも被写体が速く動いているので、どうしてもレンズがランナーに合焦した時点からシャッターが切れるほんの僅かな時間でも撮影距離のずれが生じる為、どうしてもAFが遅れがちになります。それを、今までのレンズの動きから先の動きを予測して、レンズを動かしてピントを合わせてしまうんです。