Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.26 サービス部・修理グループ

大切に扱っているつもりでも、ついうっかり、ぶつけたり落としてしまうカメラ。

歪んだ、折れた、なんだか調子悪い……そんなトラブルをお助けするのが、サービス部修理グループ。

今回は、カメラの精度検査の実演も交え、カメラ修理の裏側を紹介します。

平野繁 (ひらの・しげる)

ニコンカメラ販売株式会社サービス部修理グループ
82年にニコン入社。2ヶ月の新人研修後、サービス部に配属される。社歴の半分以上をアメリカで過ごし、現地スタッフに修理の指導をする。好きなカメラはF100。「ピントがあう、シャッターを切る、という動作のひとつひとつがきちんとしていて、撮影に集中できる、本当に使いやすいカメラだと思います。操作をするだけでも楽しいカメラです」

遊馬勝実 (あすま・かつみ)

ニコンカメラ販売株式会社サービス部修理グループ
79年にニコン入社。国内のサービス部門で修理に携わる20年選手のベテラン。好きなカメラはNew FM2。「もう20年近く使っています。メカニカルなカメラが好きで、昔はよく山に登って撮影をしていました。子供の運動会などを撮るときには、New FM2では追い付かなくて、AFカメラを使っているんですが……。趣味で風景などを撮るなら、断然New FM2です」

衝撃、カビ……カメラやレンズのトラブルを確かな技術力で解決する「サービス部修理グループ」

「修理にくる製品から修理内容まで、持ち込
まれる製品は本当にさまざまです」

修理とひとくちにいっても、カメラからスキャナと、製品は多岐にわたります。サービス部では、どんなグループに分かれて修理をしているのですか?

平野「はい。私たちのグループは〈一眼レフ担当〉〈レンズ担当〉〈デジタルコンパクトカメラ クールピクスシリーズ、スキャナ、アクセサリ担当〉の3班に分かれて、製品の修理をおこなっています」

個別に、担当の機種とかが決まってるんですか? たとえば、F5はAさん、S型などの古いカメラはBさんとか……。

平野「いえ。以前は、“単能工”といって、ひとりの人が同じ機種を担当していたのですが、いま、サービス部は“多能工”に変わってきています。つまり、ひとりの人間が、いろいろな機種を担当しているのです」

なるほど、少数精鋭軍団ですね。修理にくる製品というのは、どんなものが多いんですか?

平野「そうですね。やはりカメラは、手にもって使う道具ですから、落としたり、ぶつけてしまったりといったショック品が多いですね。あとは、水をかけてしまったとか、ジュースをかけたとか、保存しているうちにカビが生えてしまったとか……。ニコンのカメラは衝撃に強くて丈夫だという評判をいただいていますが、やはり、耐えられる衝撃にも限度がありまして(笑)」

ぶつけたりすると、どんな故障が起きるんですか?

平野「たとえば、レンズをつけたまま何かにぶつけて、バヨネットマウントが歪んでしまうことがありますね。そんな場合は、バヨネット部を交換修理します。ただ、あまりに衝撃が強く、歪みがバヨネット部だけでなく、ボディ側にまで影響することもあります。そのときは、前ボディをそっくり交換ということもあります」

カビが発生してしまうこともあるのですか?

平野「長い間使用せずに密閉状態に置かれていると、カメラやレンズの内外部で、カビが繁殖することがあります。その場合は製品を分解するなどし、専用のクリーナーで清掃します。これは、かなり細かい作業になることもあります」

なるほど。

平野「今回は、修理をおこなう際の精度点検をお目にかけようと思っています。F5をモデルに、精度のチェックをしていきましょう」

機械精度の検査実演

1.ファインダーの精度点検
ファインダー精度が正しくないと、いくらファインダー内でピントを合わせても、フィルム面でピントがずれてしまう。右の写真の測定器は「コリメーター」といって、覗くと無限大の位置にマークが見られる。カメラのファインダーで見たとき、無限遠がぴったりと合えば、ファインダーのピント精度は保たれていることになる。

2.ボディパックの精度点検
マウントの取り付け面から、フィルム面までの距離が正しいかを測る。この距離が正しくないと、ファインダーでピントを合わせても、フィルム面でピントがずれてしまう。「バヨネットが変形してしまうと、0.1ミリくらいずれてしまうのですが、そんなときはバヨネットを交換して調整していきます」

3.オートフォーカスの精度点検
カメラの光軸を検査用被写体(チャート)に合わせて設定し、カメラ内部の測距用CCDによって得られた映像信号をコンピューターが自動的に計算して点検する。「コンピューターと連動して自動的に点検します。レンズは、調整用の基準レンズを使っています」

4.シャッターの精度点検
シャッター試験機を使用してチェック。 F5の場合、30秒から8000分の1秒まで、段階的にスピードを変えながら精度点検をおこなう。

5.露出の精度点検
実際にレンズを通過して入ってきた光の明るさをフィルム面で測定する。これを像面露光といい、それが規定内に入るかどうかチェックする。

精度確認で性能をキープ 作動の点検は逐一手作業でチェック

「確認や検査は、手間をかけてでも人間の
手で確かめながらやらないとダメなんです」

遊馬「機能的な検査は、以上で一通り終わりです。このあとには、作動検査をおこないます。これは、実際にフィルムを入れて巻き上げ・巻き戻しをおこなったり、各部操作の機能がちゃんと働いているかどうかの確認をします。機械を使わずに、手作業でおこなっています」

すべて手作業なんですか?

遊馬「はい。精度的なものは機械を使いますが、機能面では、たとえば自動露出にしても、プログラムモード、オート、シャッター優先など多機能ですし、カスタムモードでは、お客様が好みに合わせて操作系を変えたりすることができます。それらをひとつひとつ、チェックしていきます」

内部の構造だけでなく、製品の機能もひとつひとつ分かっていないと、修理はできないんですね。ところで、AFやシャッタースピード、露出など、さまざまな精度を確認していましたが、これは、どんなときに誤差が生じるんですか?

遊馬「何かの機能だけが、自然に壊れていってしまう、ということは通常はありません。こうしたチェックをおこなうのは、検査や調整、確認のためなんです。通常の使用をしている限りにおいては、AFが少しずつ狂ってくるとか、AEの精度が悪くなってくるということは、まず起こりませんので、ご安心ください。誤差が起こりうるのは、なんらかのショックでカメラのボディが歪んでしまうときです。そうすると微妙に、製品の寸法というか、距離にズレが生じてしまうので……。また、部品や電気部品を取り替えたりすると、組み終わった時点で、各種の検査をおこなって、精度を調整します」

製品の構造・機能を熟知しないとできない修理「日々の勉強がもっとも大事です」

「修理のプロであることは修理の知識・技術
はもちろん、内部構造などの製品知識まで
精通していなければならないんです」

機能面も確認するためには、カメラの使い方を熟知しなければいけないから、たいへんですね。

平野「そうですね。使用説明書に書いてあることは、全部勉強しますし、出先などで説明を求められることもあるので、修理の知識を身につけるだけではなく、製品説明もできるようにならなくてはいけません。カメラやレンズだけでなく、ソフトウェアの使い方もマスターしなければなりませんし、つねに勉強が必要ですね」

修理の工具とかは、みなさんどういうものを使っているんですか?

平野「工場から渡される工具を使っていますが、それに自分達で手を加えて使いやすくすることは、日常的におこなっています」

ネジなどをまわすのに、やはりコツみたいなものは、あるんですか? 意外に難しいことではないかと思うのですが。

平野「ああ、確かにコツがありますね。ネジをしめるときは、ネジにあったドライバーを使うことがまず第一に必要ですが、『押し込む力が7割、まわす力が3割』って感じにやるとうまくいきますよ。普通の方は、どちらかというと、まわす力が大きいのじゃないかと思います。でも、このくらいの力の配分でやらないと、花が咲いちゃう……これは、ネジのヘッド部がつぶれてしまうという意味ですが……と思います。こういうちょっとしたコツも、先輩から教わったり、後輩に教えたりします」