Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.20 スピードライト SB-80DX

ガイドナンバー38(照射角35mm 、ISO100・mの数値)、ワイヤレス増灯撮影、多彩な発光モード、そしてデジタル一眼レフカメラ「D1 シリーズ」や「D100」への対応など、多機能&高性能を実現した「SB-80DX」。今回はその開発者の松井氏がスピードライトの構造やおすすめの使い方、開発への思いを語ってくれました。

松井秀樹 (まつい・ひでき)

映像カンパニー 開発統括部 第一開発部 第六設計課マネジャー
明治大学修士課程修了後、以前から好きであった写真に関わる仕事がしたいという思いから、1983年日本光学工業株式会社(現・株式会社ニコン)に入社。当時のカメラ設計部第三設計課へ配属され、SB-21から現在までスピードライトの開発に携わる。その間、多くの陸上用スピードライト、SB-104、SB-105などの水中スピードライト、スピードライトアクセサリー、スピードライトを制御するためのカスタムICの回路設計等を担当。趣味はもちろん写真を撮ること。「写真を撮るときは必ずスピードライトを付けています。スピードライトをお持ちなのに、日昼だからといって使用されていない方を見るとついつい“スピードライトを使ってください”と言ってしまいます(笑)」

「スピードライトはより立体的で自然な写真を撮るためにカメラの手伝いをしています」

まず、スピードライトの機能や構造について教えていただけますか?

「スピードライト(エレクトロニックフラッシュ)は、カメラ単体で撮影するよりも立体的で自然な写真を撮るために、光や影をコントロールして、幻想的な写真や芸術的な写真を撮る装置です。言ってみれば、カメラの手伝いをしている機械ですね。SB-80DXの自動調光機能を簡単に説明します。撮影者がスピードライトをカメラに装着し、電源を入れてカメラのシャッターボタンを押すと、被写体に対して最適な光量を発光するように自動的に制御することができます」

最適な光量はどのように調光されるのですか?

調光の方法にはいろいろな種類があります。まず、現在一般的になっているのがTTL調光(※1)という方法です。TTL調光は、TTL測光機能が付いているカメラが撮影レンズを通してスピードライトの光を測光し、スピードライトの発光量を調節する方法です。カメラのシャッターボタンが押されるとフィルムに露光するための自動制御が開始されるわけですが、それに連動してシャッター幕が全開した時点で装着されているスピードライトに発光開始信号を出します。スピードライトは、それに応答して発光を開始します。一方カメラは、内蔵しているセンサーによって被写体からの反射光を撮影レンズを通してリアルタイムで測光し、被写体輝度が適正になった時点でスピードライトに発光停止信号を出します。これを一瞬に行うのです。最近のカメラはほとんどがTTL機能がついています。この調光方法は撮影者がスピードライトに対して難しい設定をすることがないので、広く普及しています。

ニコンでは長くこの方式を採用しているのですか?

「ええ。でも、昔はこのような調光の方法はなく、スピードライトはただ光るだけで光量の調節もできませんでした。まず、外部自動調光方式のスピードライトが登場しました。ニコンで最初のTTL調光可能なカメラは、1980年に発売を開始したニコンF3です。そのときに併せてTTL調光可能なSB-11/12などを開発し、それ以来、TTL調光が主流となったのです」

ニコンのTTL調光には、20年以上の歴史があるのですね。

  • ※1TTL調光:TTL=Through The Lens の略。スピードライトの発光を、撮影レンズを通してカメラ側のセンサで測光し、演算。カメラとスピードライト本体で交信して発光量を適正に調節する調光方式。
  • ※2ガイドナンバー:Guide Number。スピードライトが発光する光量の大きさを示す数値。記号では頭文字をとってGN、G.No.あるいはG.N.と略記する。詳しくは こちら

古い銀塩カメラから最新のデジタルカメラにまで対応するSB-80DX「ボタンのレイアウトを工夫し、見た目にも使いやすくなりました」

バウンスアダプター。報道などでは、カメラにスピードラ
イトを取り付け、その発光部にバウンスアダプターの
キャップを付ける。
SB-80DX。多機能にもかかわらず、ボタンの数が少ない
ので使いやすそうな印象を受ける。

では、SB-80DXの特長を教えてください。

「最大の特長は多機能ということです。また、スピードライトの基本性能とも言える高速リサイクルタイム及び大光量ガイドナンバー(最大56)を実現していることも大きな特徴です。先ほど申し上げたTTL調光、外部調光、マニュアル発光、マルチフラッシュ発光の機能はすべて入っているので、様々なカメラに対応しています。たとえば、FM10やU、COOLPIX 5700やCOOLPIX 5000 などにも装着して、外部調光で撮影を楽しめます。さらに、14mm(ワイドパネル併用)から105mmまでのズームで、別売アクセサリーコードを使わなくても増灯ができるワイヤレススレーブモードがあります。付属品のバウンスアダプターというキャップにもぜひ注目していただきたいですね。これを付けることによって発光面が広くなり光をやわらげることができるのです」

ニュースなどで、報道カメラマンの方が持っているカメラに付いているのを見かけたことがあります。

「ええ。私もよく見かけます。たとえば、人の顔の正面にスピードライトを当てると“いかにもライトを当てています”というような不自然で硬い写真になります。でも、このバウンスアダプターを使うと発光面が広くなって全体がふんわりとするので、肉眼で見ているような自然な写真になるのです」

ボタンの配置も従来のスピードライトとだいぶ変わりましたが、ボタンのレイアウトはどのように決めたのですか?

「最終的にこの配置に決まるまでには、相当な議論を繰り返しました。形を見てピンとくる方もいらっしゃると思いますが、このアイデアの源となったのは携帯電話です。時代の流れを加味して、こういう形がすんなり受け入れられるのではないかという思いでつくりました。一番重要視したのは見た目のわかりやすさです。前機種のSB-28DXの背面スイッチは8個ありました。実はSB-80DXはモデリング発光ボタンが追加されているので9個のスイッチがあります。しかしながら整然と並んでいるSB-28DXよりもSB-80DXの方が使いやすいという印象が持てるのではないでしょうか」

なるほど。ボタンの配置も重要なポイントなのですね。

「はい。それにSB-80DXでは、収納されているワイドパネルを引き出した時に一緒に出てくるキャッチライト反射板に操作ボタン早見表があります。これによって使用説明書を持ち歩かなくてもこれで基本的な操作はできるようになっています。また、ボタンをいじりすぎて何が何だかわからなくなった時のために、ふたつのボタンを同時に押せば初期状態に戻る“ツーボタンリセット”という機能も加えました。一眼レフカメラには既に採用されているのですが、操作で悩まないように、ちょっとした工夫をして使いやすさを向上しています」