Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.18 仙台ニコン

F5、D1シリーズなどニコンを代表する一眼レフカメラの主力生産工場「仙台ニコン」。ハイテクノロジーカメラの生産現場を、技術者の猪股氏が紹介します!!

猪股克幸 (いのまた・かつゆき)

株式会社仙台ニコン 映像事業部加工部品グループリーダー課長
1977年、株式会社仙台ニコンに入社。当時の製造部機械課に配属され、F3の部品製造を担当。その後、カメラ部品の工程・治工具の設計やレンズマウント部の生産性をアップさせるなどの活動をおこない、2001年より現職となる。好きなカメラはニコンFE。「入社後まもなくして買った最初のカメラですが、今でも大事に使っています。撮影するときは、もっぱら家族の運動会や旅行などですが……(笑)」

102
102号棟の1FはバヨネットやCCDブラケットの加工、102号棟の2FはF5・D1X・D1H・D100の組み立てをおこなっている。写真はバヨネットを加工する機械。
104
104号棟は1Fのみで、F5のボディやF3の部品などをつくっている。写真はF5のボディを加工する機械。
105
105号棟の1Fはゴミに弱い精密機械のためのクリーンルーム、2Fはカメラの基盤実装と点検をおこなっている。写真は高密度実装を可能にした「マウンター」と呼ばれる機械。

ニコンのフラッグシップ機を扱っている責任と誇りがあります

仙台ニコンはニコングループのなかではどのような役割を担っているのですか?

「ニコンの一眼レフカメラの主力生産工場のひとつです。ニコンの開発から、このようなカメラをつくってほしいという要望(図面など)が出ます。それに応じて、仙台ニコンが基準に合う素材などを探し、生産工程の計画を立て、機械などの選定をし、実際にカメラをつくっていきます」

現在は主にどのような機種を生産しているのですか?

「フィルム一眼レフカメラは、F5。デジタルカメラでは、D1X、D1H、そして、D100です」

なるほど。上級機種ばかりですね。

「そうですね。ニコンのフラッグシップ機を扱っているので、責任と誇りを持ってやらせていただいております」

F5以外は全てデジタルカメラですが、最近はデジタルカメラの生産が中心なのですか?

「ここ2~3年くらいで、一気にデジタルカメラが主力になりました。工場内もがらっと変えています。古い機械を一新して最新鋭のものを入れたり、ベルトコンベアをなくしたり……。  デジタル化に伴い積極的に技術的な変化にも対応しています。デジタル製品は組み立て方がちがうのはもちろんのこと、カメラの中に入る部品も全く異なります。たとえばCCDなどは、フィルム用のカメラにはなかったものの代表ですね」

多種少量生産の時代に合わせて ライン生産からセル生産へ

セル生産方式の作業ライン。作業台は分けられるように
なっているので、ラインの変更がスムーズ。ライン生産
のときよりも1人1人の作業の幅が増えるので、従業員
の技術習熟度は相当なものだ。

生産方法も時代とともに変わってゆくものなのですか?

「はい。以前はベルトコンベア等を利用したライン生産が主流でしたが、現在はセル生産という方法を採用しています。セル生産というのは、数人の作業者を1つのセルとして、そのセルのなかで1つの部品や製品をつくっていくという生産方式です。ベルトコンベアを使っていた時代は大量生産でしたから、だいたい1人が1~2工程を受け持ち、製品をどんどん流していくというやり方が、都合が良かったのです。しかし最近は、市場の変化に対応すべく、新しい製品が次々と発売され、生産期間と生産数の変動が激しくなっています。セル生産のように、生産品目の変更や生産数の増減に素早く対応できる生産方式が、欠かせないというわけです」

これらの作業ラインはすぐ組み直せるものを使っているのですか?

「はい。生産計画などに合わせレイアウトをスムーズに変更しやすいように、作業台の脚にキャスターがついています。ベルトですと、直線的に流すことしかできませんが、この方式だと曲線的でフレキシブルなラインを構築することができるのです。生産数の変動に対して、非常に柔軟な対応ができます」

デジタルカメラは繊細 ゴミや静電気が命とりに

静電気防止用のリストストラップ(青
いバンド)。ちょっとした静電気でも、
電気回路にダメージを与えるので、
徹底した対策が必要なのだ。
F5のボディを加工するための治工
具全体。いくつかの治工具をとりま
とめることによって、連続加工が可能
となり、加工時間の短縮につながった。

デジタルカメラならではの特徴的な生産技術要素というのはあるのでしょうか?

「小さな基板に小さい部品をたくさんのせる高密度実装が、重要な生産技術要素の1つです。最近のカメラは非常に高性能になっていますので、1つの基板にのせる部品点数が多くなっています。ですから、このような技術が重要になってきています」

その他、デジタルカメラならではの生産上の難しさはありますか?

「そうですね、非常に気を使う点としては、微細なゴミ対策でしょうか。CCDはゴミを嫌いますので、ゴミ対策は必須です。また電気回路は静電気に弱いので、生産過程における静電気に対しても、たくさんの対策を施しています」

具体的にはどのような対策なのでしょう?

「加湿器、機械本体アース、導電床、壁アース、導電スポンジ、導電トレイ、空調器、静電チェッカー、静電防止台車、導電性シート、イオライザーエアーガン、それと実際に作業する人(静電防止服、リストストラップ、静電靴)への対策です。  乾燥すると静電気はおこりやすいので、加湿器を使っています。空調器は湿度を一定にする役割をしています。他は静電気を身体にためないように電気を逃がすものを使っています」

なるほど。徹底的ですね。では、デジタルカメラにかかわらず、効率的に生産するために重要なポイントはありますか?

「自分たちの使いやすいように機械の細工をしたものを治工具というのですが、これが大きなポイントになっています。治工具によって加工時間やコスト、さらに品質などが全く変わってしまうからです。  おもしろいことに、治工具にはその人の顔が出るものです。使う側は誰が作ったものかわかるんですよ。センスのある人がつくった治工具は非常に使いやすく、長く残ってゆくものなのです」