Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.12 AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G

超音波モーター内蔵、AF駆動が静かで早く、手ぶれを補正するVR機能が搭載された新しいレンズが登場。
最新ニッコールレンズ開発にかかわる設計者によるいち早い新製品レポートをお届けします。

山崎 聡(やまざき・さとし)

ニコン映像カンパニー開発統括部第二開発部第二設計グループ。大学卒業後の平成4年、設計の仕事をしたいという動機から株式会社ニコンに入社。入社以来、レンズ鏡筒設計を担当。新製品AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8Gのおすすめの点は?「このクラスのズームレンズとしては、従来より格段に小型で軽量です。かなり速い被写体にもすばやく追いつけるので、スポーツ写真の撮影にも最適ですよ」

VR機能で機能性がググッとアップ! 手ぶれだけでなく、乗り物にのっているときの手揺れも補正

手ぶれ補正機能VR
これが手ぶれ補正機能
VR(Vibration Reduction)の正体。
NORMAL/ACTIVEの切り替えスイッチ
VR機能のON/OFF切り替えだけで
なく、NORMAL/ACTIVEの切り替え
スイッチも。

AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G、まだ発売日は未定ですが、発売より一足先に、開発スタッフならではの視点から、紹介をお願いします。

「はい。まずこのレンズの大きな特徴として、超音波モーター(SWM=Silent Wave Motor)を内蔵しているため、AF(オートフォーカス)駆動がとても静かで、しかも早いことが挙げられます。
 また、製品名にVRの文字がついている通り、手ぶれ補正(VR=Vibration Reduction)機能が付いています。これは撮影時、手の揺れを補正するためにレンズが動いて補正ができるというものです。
 ニコンでは、超音波モーターとVR機能を両方搭載した製品としてはじめてのものになります」

VR機構は、どんな仕組みで手ぶれを補正するのですか?

「カメラを手持ちで構えると、どうしても手の揺れは避けられませんよね。VRレンズはその揺れをX軸とY軸(縦軸と横軸)で検知するセンサーを内蔵していまして、レリーズボタンを半押ししている間に、レンズが自動的に動いて像のブレを補正するのです」

レンズ鏡筒のなかの光学系が全部動くんですか?

「いえいえ。全部ではなく一部の光学系だけです。製品としてのレンズは、もちろん複数のレンズ群からできていますが(AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8Gのレンズ構成は15群21枚)、その中の一部に補正をかける光学系があるということです」

一部とはいえ、補正のための微妙な動きは難しそうです。

「そうですね。動くメカニズムももちろん大切ですが、やはりキモとなるのは光学設計です。補正をするために光学系の一部を動かすことで、新しいブレを作ってしまったり、基本の光学性能が悪化してしまったら元も子もないわけですから(笑)。VR機構は、光学性能、メカニズム、ソフトウェアの三つの機能がうまくバランスをとりあってこその技術ですね」

シャッタースピードで3段分の補正ができるのはかなり役立ちそうですね。

「はい。とくにこのレンズは200mmまでズームができますので、VRが付くとだいぶ機能性があがってくると思います。  レンズという製品の進化は、いかに楽に、どれだけいいものが撮れるようになるかにあると思うんです。そういう面からまずAF(オートフォーカス)が進化してきましたよね。ピントを自分で合わせるのではなく、高速で動くものでもしっかりとピントを捕まえていてくれる。すると次に解決しなくてはいけないのは、やはり手ぶれになるんです。
 よく“これはピンボケ写真だ”といいますよね。でも多くの“ピンボケ写真”といわれるものは、実際には手ぶれが原因なんです。だからその手ぶれ部分を排除できれば、いい写真が撮れるレンズになるということです。
 最近のカメラの進化のなかで、やはりVRの存在というのは大きいですよ。VR機構をオンにしてファインダーをのぞくと、揺れがグンと減りますから」

皆様にはぜひ一度、ファインダーをのぞいていただきたいですね。

「はい。またAF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8Gでは、手ぶれを補正する機能以外にも、乗り物にのっているときの手揺れを補正する機能も搭載しました。手揺れはアクティブモード(※)に切り替えて補正をします。
 やはり乗り物にのっているときの手揺れと手ぶれは振動数が違うんですね。自動車、電車、飛行機、ヘリコプターなど揺れの激しい環境でも使えるように、強い振動でも補正できるように考慮しました。このアクティブモードが搭載されたのは、このレンズがはじめてなんですよ」

※アクティブモード=車上撮影時などのブレ低減に有効な設定

超音波モーターでAF駆動が静音 微少な制御も高精度に

図を使って超音波モーターの仕組
みを熱心に解説。専門的な分野に
なると難しくなってしまう話を、サー
フィンのたとえを使ってやさし
く説明。

AF駆動に使われている超音波モーターは、いったいどういう仕組みのものですか?

「普通のAFレンズはカップリング駆動といって、ボディに内蔵されたDCモーターを駆動源にし、ギアを使って、ボディとレンズを連結してAFを駆動させているんですが、超音波モーターは、文字通り超音波振動を利用したモーターを使って、レンズをダイレクトに駆動しています」」

どんな構造なんですか?

「超音波は、人間の耳には聞こえない音の波動です。こうしゃべっていると相手の耳に声が届くように、音は空気を揺らしながら周囲に伝わっていきますよね。こうして波動は前に進んでいくわけですが、その進む波動を“進行波”と呼びます。  超音波モーターでは、超音波の進行波を円筒の中でくるくると回らせています。その波の上にモーターをのせてやって、モーターを回転させるんです。  サーフィンにたとえて言えば、超音波は文字どおり波、モーターはサーファーです。サーファーがうまく波にのると、うまくモーターが回るんです」

超音波モーター技術の難しさはどういうところにありますか?

「そうですね。やはりサーフィンのたとえでいえば、波にのることですね(笑)。  超音波の進行波で起こした振動を、余計な方向に逃さず回転したいほうに出す。そのためにはもちろん、きれいな波を作る技術が必要です。  ニコンでは5年ほど前から超音波モーターを製品に搭載しているのですが、当初からかなり精度の高い超音波モーターを作ることができました。今は、同じ性能のものを、もっとお客さまが買い求めやすい価格にする努力をしています」

超音波モーターのすぐれた点はなんですか?

「もちろん、Silent Wave Motorの名前の通り、AF駆動音がとても静かだという利点がまずあります。  でも静音というだけでなく、モーターをムラなく動かせる機構なので、微少な制御をするのに最適なんですね。またメカニカルの面でいえば、円筒形状のモーターですので、レンズ鏡筒に入れるのにぴったりの構造をしていて、省スペース化にも役立っています」