Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.10 第四世代・COOLSCAN“三兄弟”

フィルムをデジタルデータにできる「フィルムスキャナ」は、デジタルをもっと楽しみたい“銀塩派”には必須のアイテム! ニコンのフィルムスキャナ「COOLSCAN」の初代が発売されたのが1993年。現在発売しているのは、第四世代目にあたるCOOLSCANだ。今回は、第二世代のCOOLSCANから開発にかかわる池田氏に、スキャナの機能、開発途中の面白エピソードを聞いた。

池田孝弘(いけだ・たかひろ)

ニコン映像カンパニー開発統括部第三開発部第三設計グループ。1990年に株式会社ニコンに入社。入社当時は、光磁気ディスクドライブの開発に従事。1993年に映像カンパニーの前身のひとつである電子画像事業室電子画像設計部に移り、以来LS-1000、 COOLSCAN II、LS-2000(SUPER COOLSCAN2000)、COOLSCAN III、SUPER COOLSCAN8000ED、4000ED、COOLSCAN IV EDといった、第二世代以降のCOOLSCAN系フィルムスキャナの電気回路、ファームウェアの開発を担当。

知られてそうで知られていない?「フィルムスキャナは銀塩とデジタルの掛け橋です」

まず、フィルムスキャナがどんな機器なのか教えてください

「フィルムスキャナは、フィルムからデジタルデータを作るための機器です。デジタルカメラでは、撮った写真がデジタルデータとして保存されますよね。そのデジタルデータをフィルムから作れるんです。いってみれば、銀塩フィルムとデジタルの架け橋のような機器ですね。
 具体的には、フィルムスキャナをパソコンに接続して、スキャナにフィルムを入れて“スキャン”すると、写真の絵柄がデジタルデータとしてパソコンに取り込まれます。

“COOL”の名前に秘められた性能 技術革新とともに進化するフィルムスキャナ

手ぶれ補正機能VR
フィルムダイレクト電送装置“NT-
1000”と、カラー対応“NT-2000”の
当時のパンフレット
NT-3000の当時のパンフレット
1996年まで生産されていたNT-
3000は約7キロ。「今となっては重い
と思いますが、1986年の発売時
はかなりコンパクトなサイズだった
んです。新聞社の女性もしょって
きて、ホテルで電話線つなげて使って
いましたね」
“COOLSCAN”photo
左から初代フィルムスキャナLS-
3500(1988年)、2代目LS3510-
AF(1991年)、3代目フィルムスキャ
ナCOOLSCAN(初代COOLSCAN・
1993年)、第2世代
COOLSCAN(LS-1000
、COOLSCANII・1995年)、
第3世代COOLSCAN(LS-2000
、COOLSCANIII・1998年)、
第4世代COOLSCAN三兄弟
(COOLSCAN IV ED
、SUPER COOLSCAN 4000 ED、
SUPER COOLSCAN 8000 ED
・2001年)

「ところで、COOLSCANはなぜ“COOL”の名がつくか、知っていますか?」

“COOL”は「冷たいや、かっこいい、すばらしい、冷静な」ってことですよね? そういえば、ニコンのデジタルカメラもCOOLPIXという名前ですが。

「ええ。はじめてニコン製品に“COOL”という名前がついたのは、このCOOLSCANなんですよ。  “COOL”の名の由来は、スキャン時に使うLED照明がほとんど熱を発生させないということにあるんです。  それまでのニコンのフィルムスキャナの照明には、ハロゲンランプを使っていたんです。しかし、長時間フィルムをスキャナに入れっぱなしにすると、フィルムに熱でダメージを与えてしまう危険性がありました。また、機械にとっても、熱がたまるのは非常によくないことですので、色々と工夫が必要でした。そこで、当時実用化され始めたばかりの青色LEDを含め、熱をほとんど発生させないLEDを採用し、それを製品名で表現するために、最初に“COOL”という言葉が使われたんです。20世紀中は開発が無理といわれていた超高輝度の青色LEDだって、いち早く採用したんですよ」

なるほど、そんな歴史があったんですね!  製品としてのスキャナは、どんなところから生まれたんですか?

「フィルムスキャナの前身は、フィルムダイレクト電送装置というものです。新聞社や通信社などで使われる装置なので、あんまりポピュラーではないと思いますが…」

フィルムダイレクト電送装置とは、どんな機器なんですか?

「フィルムをセットして電話線につなげば、その写真の絵柄を送れるというファックスのようなものです。この機器の誕生は、報道の世界において実に画期的なものだったんです。
 その装置が生まれる前は、新聞社や通信社はフィルムをプリントしてから電送していたので、当時、撮影から電送まで1時間位かかっていました。しかしフィルムダイレクト電送装置の誕生により、撮影から送信終了までわずか31分という快挙を成し遂げました。もちろん、大きくて重たい引き伸ばし機を持って行かなくていいんです。
 その実力が初めてテストされたのが共同通信加盟社の号外、あの“ロッキード事件判決”の写真で、その時使用されたのが、ニコンが開発した初のフィルムダイレクト電送装置“NT-1000”でした。
 そして翌1984年のサラエボオリンピックで実用テストを行い、その速報性が話題を呼びました。当初電送装置はモノクロ写真しか送ることができませんでしたが、その後カラー対応化、小型化が進んでゆきました」

当時の電送装置のカタログが、時代の雰囲気を物語っていますね。

「パソコンが普及するようになって登場したのが、フィルムスキャナです。今まで電送装置で送っていた写真をスキャナで読み取って、ノートパソコンを使って送信するようになったんです。  さらに現在、報道の世界ではデジタルカメラ化が進んでおり、デジタルカメラで撮影したデータをそのままパソコンで送信するということも多くなってきました」

報道における写真電送は、電送装置から、フィルムスキャナ&パソコン、デジタルカメラと変遷しているんですね。

「ええ。だから、フィルムスキャナは不思議なことに、時代とともに大型化しているんです(笑)。  それこそ携帯性を考えるなら、デジタルカメラとノートパソコンで事足りるわけでしょう。そこであえてフィルムスキャナを使うのですから、デジタルカメラよりも高度な何かが求められているわけです。  デジタルカメラが携帯性でフィルムスキャナを上回るなら、フィルムスキャナが有利な点は、速報性が劣っても時間をかけてデジタルデータの色作りができることです。パソコンの処理速度も日進月歩で進化していますから、それをフルに使ってデジタルデータを得ることができるようになったんです」

傷を消せる! 汚れもとれる! COOLSCANならではの便利機能

なるほど。では、「COOLSCAN」の優れている点はどんなところでしょう?

「写真の持つ色を、忠実にデジタルデータに再現する点はもちろん、COOLSCANならではの優れた機能が、大きく三つあります。
 一つめは、“フィルムの傷、汚れを取る”ことです。
 フィルムに引っ掻き傷やホコリなどの汚れがついていたら、プリントしたときにその傷や汚れがそのまま写ってしまいますよね。しかし、COOLSCANでフィルムを読み取れば、その傷や汚れを取ることができるんです。だから、“もうこのフィルムはダメかな?”というものも、COOLSCANを使えば思いがけずきれいなデータを入手することができますよ」

【作例】
COOLSCAN処理前
【作例】
COOLSCAN処理後
フィルムスキャナのレンズ比較。
左上からLS-1000、 LS-2000、
COOLSCAN 4000 ED、下はSUPER
COOLSCAN 8000 ED。SUPER
COOLSCAN 8000 EDに搭載された
レンズはなんと6群14枚構成!

なるほど。作例を比べてみると、一目瞭然ですね。

「二つめは、“退色した写真を蘇らせる”という機能です。紙焼きの写真は色あせてもフィルムは劣化しないと思われがちですが、実はフィルムも経年変化するんです。通常、劣化したそういうフィルムからプリントしても、色あせた写真しか得られませんが、 COOLSCANを使えば、鮮やかな色を再現することが可能です」

三つめの機能は?

「フィルムのもつ粒状性を低減するという効果です。
 簡単にいえば、高感度フィルムや、増感したフィルムは粒子が粗くて、人の肌などがざらついた感じになってしまいますよね。そのざらつきをおさえて、プリントした写真よりも美しいデジタルデータを作ることができます」

やはりレンズにも特長があるのですか?

「はい、特に現在の第四世代・COOLSCANには、製品名にもある通り、内部にニッコールEDレンズが使われています。特に解像度が4000dpiに大幅にアップしましたので(前世代は2700dpi)、やはりレンズ性能はより高いものが求められます。
 EDレンズは、ニコンが開発したExtra-low Dispersion(特殊低分散)ガラスを採用した、とても性能のすぐれたレンズです。COOLSCANは、いわば内部でフィルムの撮影をし、そこからデジタルデータを作るわけですから、やはりレンズが要になります。
 ここにニコンのレンズ作りの技術も生かされているんです」

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