Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.05 液晶モニタフード

「戸外では液晶モニタが利用しづらいので、よく見えるようにして欲しい」。そんなお客様のご要望から生まれた、“1.8型、2.0型対応液晶モニタフード”。開発担当を一手に引き受けたのは、ニコン技術工房の渡辺朔次。液晶モニタフード誕生にまつわる、知られざるエピソードを聞いた。

渡辺朔次(わたなべ・さくじ)

(株)ニコン技術工房 開発・知財センター開発部部長。70年に株式会社ニコンに入社。ニコマートELの電子シャッター制御IC化の商品開発を担当。それを機会に、ニコンFE、FM、EM、FGなどの露出関連機能のIC化を推進。89年の電子画像事業発足に伴い、デジタル機器のサポートを行っていた旧電子画像CS室の前身である、営業技術課のマネジャーとしてテクニカルサポートに従事しながら、秋葉原ショールーム所長を兼務。99年より、現部署にてデジタルカメラ周辺機器 の商品開発に従事。

お客様の強いご要望から生まれたカンタン装着可能の「液晶モニタフード」

モニタフードの構成品
モニタフードの構成品。(右上から反時計周りに)フード
本体、本体取付け枠、接眼ルーペ、ボタン機能表示ス
テッカー、シューおよび予備両面テープ、本体取付けひも

渡辺さんは、現在のニコンプラザ新宿の前身である、秋葉原ショールームの所長をつとめていたことがおありですよね。

「はい。ショールームは、いわばお客様からの“情報の波際”で、お客様からいろいろなご意見をうかがえる恰好の機会でした。4、5年前のことですが、初期の液晶モニタ付デジタルカメラであるCOOLPIX300のときから、“強い日差しの中では、液晶モニタがまったく見えなくなるので、見えるようにして欲しい”というご要望があったんです。当初は数多いご要望のうちのひとつだったんですが、近年は、デジタルカメラが非常に一般的なものになりましたよね。するとショールームだけでなく、テクニカルセンター、お客様相談室、サービス部門などから、お客様の強い要望が伝わってくるようになりました。そのニーズにお応えして開発したのが液晶モニタフードなんです」

開発当時には、いろんな試行錯誤があったとか…。

「ええ。過去に類似の商品がございませんので、いろいろなことを検討しました。小さな商品ですが、なかなか開発までにはロマンがありまして(笑)。まずは、液晶モニタフードの使い方からご紹介しましょうか」

液晶モニタの上下にシューを貼り付け、ワンタッチでフードが取り外し可能

「モニタフードの構造はいたって簡単です。まず、デジタルカメラ本体の液晶画面の上下に、“シュー”と呼ばれる、モニタフードの取付け口を、付属の両面接着テープを使って貼り付けます。このシューは、モニタフードを使わないときも付けっぱなしであることを想定しているので、ご覧の通りとても小さくできています。このシューにモニタフード本体をカチリとはめ込むだけで、装着完了です。外すときは、フードの上下をつまむようにすればツメが外れて、簡単に取り外しができます」

本体のルーペ部には、焦点距離80mm、倍率約3倍の平凸レンズを使っていますね。

「そう。ルーペ部は本体から簡単に取り外しができますよ」

お客様からは、“接眼ルーペなんてなくても、単にのぞき込むだけのフードでもいいのに”という声もあるそうですが……。

「そうなんですよね。でも、このモニタフードには、ぜひルーペが必要だという構造の秘密があるんですよ。試しに、モニタフードからルーペを外して、明るい場所で、ひざの上にデジタルカメラを置き、液晶を眺めてみてください。液晶画面が暗くなって見えないですよね?」

本当ですね。暗くてぼんやりしている。液晶モニタ自体が発光しているはずなのに……。

「というのも、人間の目は、周囲の明るさに応じて瞳孔を拡大・縮小させてものを見るんですね。カメラでいう“平均測光”的に光をとらえて瞳孔を絞ったり広げたりしているわけですから、周囲が明るいと、その光に合わせた瞳の絞りになってしまう。だから、周囲の明るさに比べて液晶画面が相対的に暗く見えてしまうので、フードを付けて液晶周囲の光をさえぎっても、モニタが見えないということになるんです」

なるほど。何となく、液晶の周囲だけ暗ければ見えるだろうと思ってしまいますが、そうじゃないんですね。

実用化に必須だった接眼レンズ 手、目元の3点でホールディングもできる

「そう。では、ルーペなしのまま、フードの開口部まで目を近付けてみてください。すると、周囲の光はフードで遮断されるわけですから、液晶モニタが明るく見えますね。でも、そこまでモニタに目を近付けると、近すぎて見えづらいでしょう。基本的に、肉眼でモニタを見るためには、やはり“明視の距離”がほしいんです」

明視の距離とは?

「ものがはっきり見えやすい、つまり対象に焦点を合わせやすい位置をいいます。具体的にいえば、約25センチくらいです。近視の方はもっとこの距離が狭くなると思いますが、視力1.0の場合、対象が目から25センチくらい離れているのが見やすいんです」

じゃあ液晶モニタも、目から25センチくらい離したほうが見やすいんですね。

「みなさん、撮影される時もモニタからそれくらいの距離をとっていらっしゃると思います。だから、モニタフードも、明視の距離の分だけフードが伸びているのがのぞましいということになります」」

長さ25センチのモニタフード!(笑) それは大きすぎてしまって、実用化は難しいですね。

「そうでしょう。だからルーペの登場となるんです。倍率は3倍、像位置(見たときに、画像がどのくらいの位置に見えるかという距離)は1メートル先と見やすくなるように、接眼レンズを搭載しました。これで、ルーペまで目を近付けることで周囲の光を遮断し、液晶モニタをはっきり見ることができるわけです

ルーペを目に近付けることで、ファインダーをのぞき込んでいる感覚にもなりますね。手、目元でしっかりホールディングできるのがうれしいというお客様の感想もありました。

「ええ。COOLPIXの場合、画像とファインダーではパララックス(ファインダーの視野と撮影画像の範囲のずれ)が生じますから、近いものを撮るときはモニタで画像を確認して撮影するのがベストですよね。液晶モニタフードを使うことで、周囲がいくら明るくても、モニタを使えるのでとても便利です」