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talk! talk! talk! 俳優・阿南健治さん


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俳優・阿南健治さん

俳優

阿南健治さん

三谷幸喜氏主宰の劇団「東京サンシャインボーイズ」の所属俳優として活躍し、現在、舞台を始めテレビ、映画へと活動の幅を広げる阿南健治さん。一癖も二癖もある個性的な役から「こういう人いる!」と思わせるような親しみ深い役まで、ありとあらゆる役柄を巧みに演じ分けながら、見る人に感動や笑いを届けている。俳優という仕事を含め、表現することが好きだという阿南さん。その表現道具のひとつがカメラである。今回は、撮ることはもちろん撮られることも好きだという阿南さんとカメラとの関係を、ユーモアたっぷりに語っていただいた。

プロフィール

あなん・けんじ。1962年、大分県生まれ。生まれてすぐ兵庫県に移り住む。高校卒業後上京し、映画の専門学校に入学、同時に俳優養成所に所属する。そこで俳優への道を決意し、渡辺音楽学院(スクールメイツ養成所)演技科、アメリカウィスコンシン州での牧場生活、ニューヨークのアルビンエイリーダンススクールを経て、1984年帰国後すぐ大衆演劇笑々座に入団。蜷川幸雄氏の舞台出演をきっかけに1986年、蜷川幸雄スタジオ入所。その後三谷幸喜氏と出会い、1989年東京サンシャインボーイズに所属する。解散までの5年間に「12人の優しい日本人」、「ラヂオの時間」、「ショウ・マスト・ゴー・オン」など多くの舞台に出演する。
その後、現在に至るまでテレビ、映画、舞台とジャンルにこだわらず、数多くの様々な役をこなしている。主な舞台作品にNODA.MAP贋作「罪と罰」(野田秀樹作・演出)、「彦馬がゆく」(三谷幸喜作・演出)「太鼓たたいて笛ふいて」(こまつ座)など。ドラマ作品に「新選組!」(NHK)、「マザー&ラヴァー」(関西テレビ系)、「ごくせん」(日本テレビ系)「愛と友情のブギウギ」(NHK)などがある。
夏には3人舞台「ダモイ~収容所(ラーゲリ)から来た遺書~」(作・演出、ふたくちつよし/出演、平田満、阿南健治、新納敏正)に出演する。第11回講談社ノンフィクション賞を受賞した辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を基に書かれた作品で、第2次大戦後シベリアに抑留された男を演じる。7月22日~8月15日まで、カメアリホール、四谷区民ホール、吉祥寺シアターにて上演する。

写真になって出来上がる喜び それが写真を好きになった原点

俳優・阿南健治さん

写真を撮り始めたのはいつ頃からですか?

写真歴は厳密にいうと長いんですよ。1番最初に触れたのは、小学生の低学年の頃じゃないかな。駄菓子屋で売っているような、ただシャッターボタンがついているだけっていうおもちゃみたいなカメラがたまたま家にあったんです。これで本当に写せるのか? というようなもので、でもちゃんと専用のフィルムが売っていたりしていて、それで撮ったのが最初ですね。

ちゃんと写りましたか?

子供がおもちゃのカメラを持って現像しに行きますから、カメラ屋のおじさんは「うちでできるかなぁ。一応やってみるけど」という反応ですよね。でも画質は粗いし薄暗いんですけどちゃんと写っていましたよ。予想通りのものなんて絶対に撮れないカメラですけど、意図は違ってもね、写真が撮れたということがうれしかったですね。
高学年になってからは、お小遣いを1年くらいためて安いカメラを買ったりしましたね。写真が撮りたい!カメラが欲しい!っていう思いはその頃強かったんでしょうね。

どんなものを撮っていたのですか?

子供にとってはフィルム代も現像代も相当かかりますからね、そう頻繁には撮れないですよ。だから遠足があったらもっていったり、路面電車がなくなるっていうイベントがあったら撮りにいったり、何か特別なことがあると活躍していましたね。
でも当時の写真を見てみると、普通の日になんでもない写真を撮っていたりもしていたみたいですね。多分暇なときに何か遊ぶものを探していて、フィルムが余っていたからちょっと撮ってみたりはしていたんでしょうね。そういえば夕焼けはよく撮っていましたね。今でも美しい夕焼けを見るとついつい反応してしまいます。

カメラへの興味はその頃から現在まで続いているのですね。

そうですね。それからカメラに凄くのめり込んでいったということでもないんですけどね。カメラを何台も買うということもありませんでしたし。ただ、写真を撮るということは変わらずずっと好きです。
いったい何がきっかけで写真を撮ってみようと思ったのか自分でもはっきりわからないんですよ。ただ、そのおもちゃのカメラを現像に出したとき、それが写真になって出来上がってくるという喜び、面白さを感じたのは確かですから、写真への思いはそこから始まっているんでしょうね。

土門拳氏に対抗心!? 「いい写真を見ると悔しくなるんです」

西新宿のビル群の中で咲く桜を撮影
西新宿のビル群の中で咲く桜を撮影
「引きよりも、どうしてもアップになってしまう」と阿南さん
「引きよりも、どうしても
アップになってしまう」と阿南さん

普段はどのようなものを撮っているのですか?

いつもは……何を撮っていたんでしょう。実は、今回のために何か撮ってみようと思ってカメラを持ち歩いてみたんです。でもいざ撮ろうと思っても、何を撮っていたのか、何を撮っていいのか、考え出すとなかなか撮れないんですよ。ただカメラを持って街を歩いて手当りしだい撮ればいいかとも思ったんですけど、そうはいかないんですね。面白いものを撮りたいのか美しいものを撮りたいのか、日常なのか、何かしらテーマみたいなものがないとダメなんですよ。ただ撮るといのは難しいことです。

いつもテーマを持って撮っているのですか?

そんな大袈裟なものではないですよ。ただ、闇雲に撮るというよりは、何か撮る目的があったり、これを撮ったらこうなるかなと出来上がりをイメージして撮ったりはしていますね。

この景色をこう切り取ってみようとか。

そうですね。でも風景写真は難しいですね。思った通りのものにならないんです。少し前に満開の桜を撮ろうと思って行ったんですが、目で見て想像したものと実際に写真になったものの印象がかけ離れていたんです。全体を撮っても、どうしても豪華さが伝わらないというか。そうすると、逃げではないんですがどうしても寄りで撮ってしまうんですよね。だからあまり風景写真は撮らないんです。

見たままの迫力が写真では伝わりにくいのでしょうか。

以前松本に行ったとき、この雄大なアルプスの景色を写真に残さなければと思ってカメラを向けたんですよ。でもファインダーを覗いてみると途端にその気持ちが薄れてしまうんです。たとえばある山を写そうと思ったとき、周りの雄大な山並があってこの山があって、それが素晴らしいと思ってカメラを向けるのに、ファインダーではその山だけになってしまうんです。当たり前のことなんですけどね。でも「あ、これは撮ってもつまらないな」と思っちゃうんですよね。そうするとシャッターが切れないんです。だから僕の中では「風景は写真にするとつまらなくなってしまう」というものなんですよね。
でもそれも、プロの方のような腕や技術があれば意図するように撮れるんでしょうね。風景を撮った写真集を見るといいなと思うことはよくあるんですよ。でも自分で撮ってみても同じように撮れないですから。

そのためにちょっと腕を磨いてみようかな、という方向には行かなかったのですか?

いやぁ、できたらいいなとは思うんですが、無理だなと思いましたよ。
たとえば土門拳(※注)さんの写真なんか見ているとね、鉄道の写真だったり建物の写真だったり、どれをとっても素晴らしいんですよ。空気感、迫力、あれは僕には出せないですからね。それが悔しいというか……いや、なんで僕が土門拳さんと対抗できるんだっていう、悔しいと言う時点で間違っているんですけどね(笑)。そこで比べられる次元じゃないだろって怒られちゃいそうですけど、でも見ているとなんだか悔しくて、自分でも撮りたいと思っちゃうんですよ。

こんな写真が撮れたらなと思う気持ちはわかります(笑)。

そうですよね、写真集を見ると「いいな」と思っちゃうんですよね。僕は同時にすぐ「撮りたい!」と思っちゃうので撮るんですが、やっぱり全然撮れない。当たり前ですよね(笑)。
以前に土門拳さんのドキュメンタリーを見たんですよ。仏像を撮っていたんですが、シャッターを押すまでにじっと何か待っているんです。その時間というか流れる空気が恐ろしいんですよね。仏像ですよ?「いつ撮っても同じじゃん!」と言いたくなりますよね(笑)。でも土門さんには同じではなくて、「ここだ!」という時があるんですよ。そういう、写真がとらえる一瞬の空気感、美しさというものがあるんだろうというのは僕なりにも分かるんですが、同じようにやるのはね……(笑)できないですよ。ただ憧れはあるので、いつの日か撮ってみたいなと思いますけどね。

同じようには撮れないから同じような被写体で写真は撮らない、と。

そうなるんですよね。悔しくなるから撮らない。もう少し上手に撮れるようになったら面白さが分かるのかもしれないんですが、今は、今の僕でも面白いと思えるようなものを撮りたいんです。

※注 土門拳=世界的に知られる写真界の巨匠。リアリズム写真を確立させ、写真文化の流れを作ったといっても過言ではない。その土門氏の輝かしい業績をたたえて制定された「土門拳賞」の受賞作品展を、銀座、大阪ニコンサロンで開催中。詳しくは以下へ。土門拳受賞作品展→http://www.nikon-image.com/activity/salon/schedule/index.htmlイメージ:ポップアップウィンドウ