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talk! talk! talk! フォトグラファー、モデル・東野翠れんさん


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フォトグラファー、モデル・東野翠れんさん

フォトグラファー、モデル

東野翠れんさん

ただただ好きで撮り続けてきた写真が世の中の目に留まり、求められるようにフォトグラファーとして活動を始めた東野翠れんさん。その傍らでモデルとしても活躍、その他雑誌の連載などを持ち、肩書きにとらわれず自由に自己を表現している。今でも“自分はただの写真好き”だと語る翠れんさん。愛用のFMカメラの話、そして大好きな写真についての話をたっぷりとうかがった。

プロフィール

ひがしの・すいれん。1983年、東京都生まれ。
骨董商の父とイスラエル人の母、妹の4人家族。15歳から写真を撮り始める。その作品が友人のフォトグラファー、HIROMIXの目に留まり、18歳から「H」や「ロッキンオン」などの雑誌で写真を撮るようになる。スピッツ、High-Lowsら日本を代表するミュージシャンのポートレートを手掛ける。その傍ら、モデルとしてもボーダフォンやカゴメのCFに出演し話題を呼び、「ku:nel」「spoon.」「mini」などの雑誌や写真集で活躍、現在「PS」「Lingkaran」「Girls」「プリクル」で連載中。フォトグラファー、モデルというくくりにとらわれず、自らがやりたいと思ったことを表現の場として選び活動を続けている。
モデルとして参加した写真集「アムール翠れん」(ホンマタカシ撮影/プチグラパブリッシング)が現在発売中。また2月始めには自身初の写真集となる「Lumiere(ルミエール)」を発売。6年間撮り続けた写真をまとめ、書き下ろしの文章を添えて毎日の暮らしの光と影を描いている。

露出計の壊れたカメラで写真の楽しさを知った

写真を撮り始めたのはいつ頃からですか?

中学3年生のときに父が誕生日のプレゼントに一眼レフカメラを買ってくれて、それ以来撮り続けています。もともと写真に興味を持っていて、よく家に遊びに来ていた両親の知り合いの中に写真をやっている人が結構いたので聞いていみたら、「一眼レフがいいんじゃない?」って言われて。いいなぁと思っていたら、父が古いものを扱う仕事をしているので骨董品の市場に出ていたカメラを買っておいてくれたんです。

Nikon FM

それがこのNikon FMですか?

いえ、実はそのカメラはなくしてしまったんです。タクシーか何かに置き忘れてしまったみたいで……凄くショックでだいぶ探したんですが、なかなか見つからなくて新しいカメラを買ったんです。またマニュアルがいいなと思ってF3を買ったんですが、どうしても手に馴染まないというか、自分が撮った写真じゃないような感じがしてしまって。それで結局また同じFMを買ったんです。だからこのカメラは2台目のFMなんです。

買ってもらってからかなり使い込んでいたのですね。

買ってもらって本当に嬉しくてとにかくたくさん撮っていたんです。どうやって使うのかも分からないから“露出ってなに?”“ピントはこれで合っているの?”という感じだったんですけど、とりあえずたくさん撮ってみようと思って。これくらいの暗さで撮ったらどう写るのかって実験したりして、ゲームみたいな感覚でしたね。とにかく撮るのが楽しくて、学校で友達を撮ったり家でも妹や家族を撮ったり、いつでも持ち歩いて撮っていました……じゃなくて、撮っています! 今もかなり撮るんですよ、はい(笑)。

では、露出なども比較的スムーズに覚えられたのですか?

「おしょう油差し」
「おしょう油差し」

そうですね。でも1台目のFMを使っているとき露出計が壊れたんです。いきなり、真っ白な写真が出てくるようになってびっくりしたんですが、逆にそれが面白いと思ったんです。固定観念みたいなものが取れて、「そうか、写真ってなんでもいいんだ」と思った。そこからちょっと調節して真っ白の中にちょっと写るようにしてみようとか、偶然ピンクになって写ってたりとか、こんな偶然も撮れるんだな、この感じがいいな、楽しいなと思ったんです。

壊れたカメラで写真の面白さに気づいたのですね。

はい。そのカメラでいろいろ遊びました。だからF3を買ったときに急にピシっとかっこいい写真が撮れてしまって“なんだろう? 何か違うな?”って違和感が出てきてしまったんです。
だいぶ前ですけど、白っぽく写ってかわいいなと思った写真を引き伸ばそうと思って写真屋さんに持っていったら、写真屋のおじさんに「おまえさん、この写真は露出が間違ってる。これは写真じゃないから焼けないよ」って怒って焼いてくれなかったことがあったんですよ。おじさんはプロだから、ちゃんと写っているものを焼きたいんだと思って諦めたんですが、これが好きなんですって言ってもちっとも伝わらなかった(笑)。お客さんなのにひどいなぁと思いながら。

たとえば学校や本などで教えている“カメラの撮り方”からすれば、露出オーバーは失敗写真ということになるのかもしれないですね。

そうですよね。それはわかるんですけど、でもその失敗も面白くて好きなんですよね。“なんでこんなのが出てくるの!?”って。だから思った通りにちゃんと撮れたときより意外な写真に“よし!”みたいなところがあるかもしれないです(笑)。

「フォトグラファーではなく“ただの写真好き”です」

フォトグラファーとして活躍されるようになったのはいつ頃からですか?

高校3年生のときに初めて仕事をしたんです。もともとひろみちゃん……HIROMIXとよく遊んでいたんです。私が写真が好きで撮っていることを知っていたので「ちょっと見せて」って言われて。見せるなんてほどの写真じゃないなと思っていたんですが、何となく好きな写真をアルバムにして持っていたので見せたら「いいね、いいね!」って言ってくれて。編集の人に見せてみようって言われたのですが、まだ学生だし、写真の仕事をしたいとも思わなかったので断っていたんです。
でもある日ひろみちゃんに「今日写真持って来て」って言われて持って行ったらそれが仕事の打ち合わせの現場で、編集の人に見ていただくことになって。それがきっかけで電話が掛かって来て、最初は音楽雑誌の「ロッキングオンジャパン」で写真を撮ることになったんです。

フォトグラファー、モデル 東野翠れんさん

撮影してみていかがでしたか?

不思議でしたね。いわゆるプロではないし、“私でいいのかな?”と思って。自分がモデルとして出ているものを見ても何とも思わないんですが、フォトグラファーとして名前が載っていると変な責任みたいなものを感じたりして、“あれ?”って、変な感じでした。

ライティングなどは勉強したのですか?

いえ、そういうスタジオでの撮影ではなく公園かどこかで、普段撮っているのと近い感覚で撮影するものでした。専門的な撮影の技術は今も分からないですし、そういう写真だったら私には頼んでこないと思います。
なんというか、今でも自分がフォトグラファーという意識がまるでないんですよ。もちろん仕事としてやっているわけで、責任から逃げたいというわけではないんです。ただ、そう言われることにしっくりこないというか……。

「私はフォトグラファーです」とは言えない?

はい。仕事として写真を撮ることで今までとは違う視点でモノを見ることができたし、誰かと一緒に仕事をする楽しさも分かってそれは凄くよかったなと思うんです。
でも、写真を撮るのが好きという気持ちは仕事をしていなかった頃も今も全く変わっていないんです。本当のことを言うと、別に写真の仕事をしたくて撮ってきたわけではないから、写真の仕事をしていなくても、それはそれでいつでも変わらず写真を撮り続けていたと思います。もちろん仕事として撮るのも好きなんですけど、フォトグラファーというものに固執したり、これ一本でやって行くぞっていうことではないんです。だから私は、フォトグラファーではなくただの写真好きなんだと思います(笑)。