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talk! talk! talk! イラストレーター・平尾香さん


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イラストレーター・平尾香さん

イラストレーター

平尾香さん

パウロコエーリョの世界的ベストセラー「アルケミスト」の愛蔵版のイラストを手掛け話題となったイラストレーターの平尾香さん。
女性らしい柔らかさと強さを合わせ持った作風が見る人の心を惹き付けている。
そんな平尾さんが趣味の写真を撮り始めたのは学生の頃。各地を旅しながら写真を撮り、旅から得たインスピレーションを絵に生かしているという。
今回は旅と写真と仕事をキーワードにたっぷりとお話をおうかがいした。

プロフィール

ひらお・かおり。1972年、兵庫県神戸市生まれ。嵯峨美術短期大学ビジュアルコミュニケーションデザイン科卒業。同校にて非常勤助手として勤めた後、現在は東京を拠点に、個展活動やイラストレ-ションの仕事で活躍中。
旅をするのが好きで、そこから受けた世界を表現したり、日常のあらゆることから受けたインスピレーションをもとに、やさしくも力強いタッチでイラストレーションを描き続けている。表現方法はコラージュからエッチングやシルクスクリーンを使ったもの、顔彩や水彩を使った淡いタッチのもの、オイルスティックを使った力強いラインへと発展。また、最近では、写真、エッセイ、平尾さん自身への取材も含め、あらゆる角度で表現の場を広げている。2001年には「AROUND THE WORLD IN 80 SLIDES」という、ハワイから地球をぐるっと一周して撮影した写真のスライド80枚を、ライトボックスに並べて展示するという写真展も開催している。
これまでに、CDジャケットやカレンダー、数多くのファッションブランドのメインビジュアル、パウロコエーリョ著「ベロニカは死ぬことにした」「愛蔵版アルケミスト」などの装丁・装画、オリジナルグッズの商品企画、その他「anan」「GINZA」「Domani」「MORE」「BRUTUS」など、多数の雑誌等へのイラストレーションを提供している。
2004年2月には平尾さんが装画を手がけたパウロコエーリョの話題の最新作「11分間」(角川書店)が発売された。平尾さんのオフィシャルウェブページはこちら(http://www.kao-hirao.com/イメージ:ポップアップウィンドウ)。

ひとり旅の必需品はカメラ「マニュアル機が旅のペースに合っているんです」

イラストレーター  平尾香さん

カメラを始めたのはいつ頃からですか?

大学の頃に写真の授業があって、その頃から写真を撮り始めるようになりました。そのときは友達に譲ってもらったカメラを使っていたんですよね。そのカメラもニコンだったような……確か、F-401だったと思います。
学校が京都だったので、京都の町をぶらぶら歩いて撮影していました。自分で現像もしましたし、よく撮っていたと思います。写真の授業、結構好きだったのかもしれない。

現在の愛用機はFM2ですね。

そうですね。このカメラを買ったのは4~5年前なんです。旅に行くときに買ったんです。前のよりも軽くて、そんなに難しくなくて私でもシンプルに撮れるのがいいなって思って。

マニュアル機を選んだのはなぜですか?

……マニュアル機以外を買おうとは全然思わなかったですね。なんでだろう?

(笑)旅に持っていくために選んだんですよね?

そうですね。旅へはひとりで行くことが多いんですが、そうすると時間がたっぷりあるんですよ。このカメラだと、物にじっくり寄って見てみたくなるんですよね。だから、暇つぶしにぴったりな遊び道具だなって思ったんです。ゆっくりピントを合わせたりするのもひとり旅のペースに合っているんでしょうね。

アルケミストの挿し絵を描く前に、空気感をつかむために訪れたというチュニジアで撮影。
アルケミストの挿し絵を描く前に、空気感をつかむために
訪れたというチュニジアで撮影。

旅にはよく行くのですか?

そんなに頻繁に行っているわけではないんですけど、旅は好きですね。アイルランド、メキシコとか、あと、アフリカのチュニジアやマリ共和国にも行きました。僻地が好きなんですよ。できるだけ日常と離れたいというのと、あとで誰かに話をしたり写真を見せたときに、行ったことのない人が多いので面白いし興味を持ってくれます。

初めて行った国はどこですか?

学生のときに、初めてカメラを持って行ったのがインドでした。最初は、撮りたい気持ちがあっても、怖くてほとんど撮れませんでした。帰国してからそれを参考にして絵を描こうと思ったときに、ほとんど使える写真がなくて愕然としましたんです。

怖かったというのは?

ひとりでしたし、異国から来た私をじっと見つめる視線が怖かったのかもしれません。けっこう臆病なんですよ。

インドは言葉もなじみがありませんし、余計に恐怖感があるかもしれませんね。次の旅行からは撮れるようになったんですか?

はい。また懲りずにあまり英語も通じないようなところに行ったんですが、逆にそれがよかったのかもしれません。いわゆる観光地ではない国でしたし、もうこの国に来ることはない、今しかないんだって思って勇気を出してシャッターを押すようになったんです。ここまで来たんだから撮らないともったいない!って開き直れたんでしょうね。思いきってみたら意外と撮れたじゃんって感じです(笑)。

旅をしたときの心地よさが 絵を描くインスピレーションになる

独特の風貌をした男たちが、暑そうに座り込んでいる。
独特の風貌をした男たちが、暑そうに座り込んでいる。
砂漠ではらくだにも乗ったそうだ。正面から愛嬌のある顔をアップでパチリ。
砂漠ではらくだにも乗ったそうだ。
正面から愛嬌のある顔をアップでパチリ。
車で砂漠を走行中、突然ドライバーが車を止めて走って行き、このトカゲを見つけて帰ってきたとか。「砂漠の中からどうやって見つけてくるのか……びっくりしました」
車で砂漠を走行中、
突然ドライバーが車を止めて走って行き、
このトカゲを見つけて帰ってきたとか。
「砂漠の中からどうやって見つけてくるのか……
びっくりしました」

旅先では主にどんなものを撮影するのですか?

あまり"何を撮りたい"というのはなくて、なんでも目に入ったものを撮ります。でも、同じ物を何回も撮るってことはあまりしない気がします。気にいったら何カットか撮ることもありますけど、それよりは色々見て撮りたいって思うんです。カメラを持っていると敏感になるので、たとえ普通の景色でも、カメラを持つとなぜか全て残したくなるんです。カメラに収めようって思うと、全然違う視点になれるっていうのは面白いですよね。

旅で写真を撮ることで、作品に生かそうという思いがあるのでしょうか?

撮っているときは作品のためにという意識はないです。それよりも"今しかない"という思いが強いですね。いつも、ここには二度と来れないだろうなって思うんです。だから見た物を目に焼きつけるだけじゃなくて、形に残して持って帰りたいと思うタイプなんだと思います。
でも、絵を描くときに撮った写真を見直すことで、良い感じのテンションになりますよ。

写真を見て絵を描くということですか?

うーん、実際に写真を見て、それを資料にして描くというのは得意じゃないんですよ。それよりも、旅をしたときの感じ、日常から離れた場所にいた心地よさ、気持ちよさを思い出して、描くきっかけにしているんです。
写真を見ていると、自分が歩いた場所をもう一度巡っているような感覚になれるんですよ。そうすると、そのときの感情が出てきて、すごく描きやすくなります。

それが良い感じのテンションになっている状態なんですね。

そうですね。自分がそこにポンって移動したような感じですね。でも、それはそんなに気張った感じではなくて、ぼんやりした状態なので……。

「写真から得たインスピレーションをひと筆ひと筆に込めて!」という感じではなくて。

いや、そういう熱い感じではないですね。実はあまり考えずに描いているのかもしれない(笑)。
以前、オイルスティックっていう、油絵の具をクレヨンみたいに固めたものなんですが、それをニューヨークでたまたま見つけて買って帰ったことがあったんです。試しに使ってみようかなって思ったときに、家の襖が日焼けしているのがふと目に入って、その場の雰囲気で襖に「えい!」って描いちゃったんです。あとできれいに剥がして展覧会で飾ったらけっこう評判が良くて、CDジャケットにも使われてしまって(笑)。

「えい!」って描いちゃったものなのに。

それが代表作のようになってしまって、こんなことでいいのか!って思いましたね。でも変に狙ったり気負ったりしない勢いというのも凄く重要なんだと思います。
そういう意味で、写真も慣れない方が面白いかもしれない。ちょっと慣れると、構図をきれいにまとめることなどを考えてしまって、出来過ぎていて逆に面白くないというか。普段から積極的に写真を撮るよりも、しばらく時間を空けて、旅に行くときに撮るっていうのが、私に合っているのかもしれないですね。