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talk! talk! talk! 歌舞伎俳優・市川染五郎さん


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歌舞伎俳優・市川染五郎さん

歌舞伎俳優
市川染五郎さん

九代目・松本幸四郎の長男として生まれ、歌舞伎俳優としての道を歩み続けてきた市川染五郎さん。活躍の場は歌舞伎だけにとどまらず、それ以外の舞台やテレビドラマなどでも才能を発揮し、多くのファンを魅了している。
多忙な毎日を送る染五郎さんの清涼剤として活躍しているのが自身の写真集をきっかけに購入したというFM2だ。染五郎さんにとってカメラとは、そしてその面白さとは何か?今後のお仕事のことなども含め、幅広くお話をお伺いした。

プロフィール

いちかわ・そめごろう。1973年、東京都生まれ。1979年、歌舞伎座で初舞台を踏み、1981年、七代目市川染五郎を襲名。以降、数々の舞台に出演しているほか、復活狂言から新作歌舞伎まで歌舞伎創作に精力的に携わっている。また1986年、史上最年少の14歳で『ハムレット』を主演し、その後『アマデウス』『バイマイセルフ』『マトリョーシカ』などの歌舞伎以外の舞台やテレビドラマなどにも数多く出演し、多方面で活躍中だ。
今後は12月5日から舞台『新・夢の仲蔵』(日生劇場)に出演、父・松本幸四郎とともに「江戸歌舞伎」のライバルを演じる。そして2003年1月2日から山本周五郎原作の舞台『さぶ』(新橋演舞場)に出演予定だ。

写真に興味を持ったのはモノクロの写真集がきっかけ 「それまでとは全く違う世界だなと感じました」

染五郎さんが写真を始められたきっかけを教えていただけますか?

5年ほど前、初めての写真集を出したときに自分でも撮ってみたいなと思ったのがきっかけです。それまでは写真……、とくにスナップ写真なんですが、自分が写っていてもいなくても、なんだか生々しい感じがして見るのも嫌だったんです。ところが、その写真集は全てモノクロ写真だったものですから、それまで見ていたカラー写真とは全く違う世界だと感じて興味が湧いてきたんです。つまり、写真そのものにではなく、カラー写真に抵抗があったんですね。でも、モノクロ写真はすごく新鮮で、面白いと感じました。この世界観が好きなんだと思います。だから僕はずっとモノクロフィルムで撮影しているんです。

それまではまったくカメラに触れる機会がなかったのですか?

小学生の頃は、機械をいじるという感覚が好きだったので、簡単な、小さなカメラで撮っていたことがありました。旅行に行ったときに撮影した写真を旅行記風にまとめて、“これは京都の五重塔です”とか書いて、家族に強制的に見せたりしていましたね(笑)。でもやっぱり、あまり写真は好きではなかったように思います。

現在お使いのカメラはFM2だと伺ったのですが。

はい。そのときの写真集を撮影してくださったカメラマンの方に、カメラをはじめたいんですけど何がいいですかと聞いたらFM2を勧められて、それで購入しました。

使い心地はいかがですか?

カメラの重さやシャッター音がいいですね。でもマニュアルカメラは初めてだったので、やはり撮影は難しかったです。たとえば、撮りたいものがあっても、ピントを合わせたりしているとシャッターを押すまでに時間がかかってしまってシャッターチャンスを逃してしまうんです。でもカメラはその手間のかかるところが面白さでもありますよね。決してそれがうまくなくても、自分の感覚で露出やピントを合わせられるというのがいいんですよね。

写真の撮り方を勉強されたりしたのですか?

市川染五郎さん

いや、特にしていません。妹が先にカメラを始めていましたので、ちょっと聞いたりはしますけどね。とにかくピントを合わせよう合わせようとしているだけで……。ピントは今でもあまり合いませんし、いまだに難しいままですね。FM2もまだ使いこなせていないです。

ではいろいろとカメラで失敗されたこともあるのでは?

フィルムが入っていなかったことがありましたね。枚数表示が42枚! あれ?ってところで気がついて。42枚撮れるフィルムは入れていないはずだけどなぁ、と思いながらそろそろとあけてみたら……っていう感じです(笑)。

「自分のために買ったカメラですから 自分が写っていないのはどうだろうと思って……」

本日は染五郎さんが撮影された写真を何枚かお持ちいただきました。

Photo(撮影・市川染五郎氏)
3匹のなかで一番のお気に入りだという愛犬“トト”。染五郎さんを見つめる愛くるしい目が印象的だ。
Photo(撮影・市川染五郎氏)
いつも遅れがちな“ロク”。「あえて後ろ姿のものを持ってきました」。背中に哀愁を感じさせる一枚。

はい。僕はよく実家にいる犬を撮影するんです。3匹いる犬のなかでもこの写真の“トト”はリーダー気取りなヤツで。要領が良くて、怒られそうになるといつのまにか消えていたり、僕が実家から自宅に帰るときには、いつもこの犬だけが玄関まで来て見送りをしてくれたり……。まあ、かなりしたたかな性格の犬ですよ。3匹の中では一番の僕のお気に入りですね。

したたかでもお気に入りなんですね(笑)。

そうです、そういうところがいいんです。したたかっていうのも大事ですからね(笑)。後ろ姿の“ロク”は、3匹の中で何をするにもいつも遅いんですよ。さっきの犬とは逆に、逃げ遅れて怒られてしまう、そういうタイプですね。3匹ともそれぞれまったく違う性格なので面白いですよ。こんなにも犬って性格が違うんだなと見ていて思います。

でも、犬などの動きのある被写体は、それこそピント合わせなどが難しいのでは?

いや、うちの犬は役者ですからね。いつも嫌っていうほど撮っているので、ちゃんと止まってくれるんですよ。

犬のほかには普段どういったものを撮影されていますか?

人ですね。家族が居れば家族を撮ります。でも、そのうち僕のカメラにもいい加減つき合ってくれなくなるので、そうすると犬が居るので犬たちを……。

嫌というほど撮る、と(笑)。風景や物などは撮影されないのですか?

風景写真などは、自分で撮ってみて面白さを感じないんですね。うーん……、撮るときに計算が見えてしまいそうで難しいですよね。人物は、「こっち向いて」と言ってその人を撮るというのではなく、フレームの中にその人を入れ込んで撮影するというのが面白く感じるんです。自然な感じに撮りたいんですよね、きっと僕は。でも、家族の場合でも、カメラを向けるとやっぱり意識してしまうじゃないですか。それが少しもどかしく感じますね。

染五郎さんはご家族だけでなく、ご自身もよく撮影されるそうですね。

はい。カメラを買ってからいろいろな人を撮影してみたんですが、人のためにではなくて自分のためにカメラを買ったわけですから、自分が写っていないのはどうだろう、それはなんだかしゃくだなと思いまして、それで時々自分を写すようになりました。どうやったら撮れるかなーと鏡越しに撮影してみたり、わざわざ寝ている顔をしてシャッターを押してみたり、いろいろやってみています。

Photo(撮影・市川染五郎氏)
タイマーをセットし、急いでベットに横になってポーズを取った。「ちょっと自然に見えますね。狙い通りです(笑)」
Photo(撮影・市川染五郎氏)
2000年京都・南座の楽屋で、幕間に撮影。鏡を通して楽屋の空気が伝わってくる。

これらの写真はそのようにして撮られたんですね。

そうです。この横になっている写真は京都のホテルで、何か書いている感じにポーズをとってセルフタイマーで撮影してみました。もう一枚も京都です。一昨年の秋に南座で「男鏡山」という出し物をやったのですが、その幕間に、ちょっと時間があいたので楽屋で鏡越しに撮りました。

これは染五郎さんならではのショットですね。舞台の時にもこうしてカメラをお持ちになって撮影されているんですね。

時間的に余裕のあるお芝居の時には、楽屋にカメラを持っていって撮影しています。そういう時には自分を必ず撮ります。あとはそのお芝居に子役さんがいるときには、楽屋に乱入してきたりするので、そういう子を撮ったりもしますよ。