Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

talk! talk! talk! 女優・エッセイスト・黒田福美さん


バックナンバー
女優・エッセイスト・黒田福美さん

女優・エッセイスト
黒田福美さん

今年6月に行われた日韓共催のワールドカップを通じ、以前にも増して身近な存在になった韓国。しかし、韓国が多くのメディアで取り上げられるようになったのはごく最近の事だ。84年当時、日本から遠い国であった韓国をいち早く紹介しようと活動を始めたのが芸能界きっての韓国通としても知られる、女優・黒田福美さんだ。
そんな黒田さんが、韓国を紹介するための手段として選んだのが写真。「韓国との関係を抜きにしては語れない」という写真への思いなど様々なエピソードを交えながらたっぷりと語っていただいた。

プロフィール

くろだ・ふくみ。1956年 東京生まれ。桐朋学園大学、演劇科卒業。TBSドラマ「夫婦ようそろ」でデビュー。
 その後、映画、テレビドラマなどで中堅俳優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られるようになる。95年には、訪韓のつどに撮りためていた韓国の写真を「韓国 ソウル 私の10年物語」と題した写真展として発表。東京、大阪をはじめとする各主要都市にて開催。また、阪神・淡路大震災の後、神戸市長田区で写真展を開催した時には、被災地の方々に「わが町」の姿をレンズ付きフィルムで撮影してもらうというイベントを企画。それらの写真は東京で「さっき見てきた神戸展」として発表し、さらに『アプローチ』(三五館)という写真集にまとめられた。
 99年9月には、金大中大統領自身が自らCM出演し、世界に向けて観光国としての韓国をアピールした。「Welcome to Korea市民協議会」の日本側の公報委員に正式に任命され、文化観光部 朴智元長官より委嘱状を受ける。99年11月、「2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)」の理事に就任。
 著書には『ソウルマイハート』(草風館)、『ソウルマイハート2』(草風館)、『ソウルの達人』(こーりん社)、『ソウルの達人 完全版』(三五館)がある。2002年3月には『ソウルの達人』の集大成として、『ソウルの達人 最新版』(アミューズブックス)を刊行。また、10月15日には講談社より『ソウル マイデイズ』が発売される。

初めての訪韓がカメラを持つきっかけに。「韓国を記録するためのメモがわりでした」

黒田福美さん

黒田さんが写真を始められたきっかけから教えていただけますか?

ちゃんとカメラを手にしたのは、84年に初めて韓国へ行った時です。韓国をもっと知りたい、そして伝えたいという意図で行きましたから、ありとあらゆるものを記録するための道具としてカメラが必要になったのです。その時からすでに、私は韓国を取材しに行くんだという心持ちだったんですよ。誰に頼まれたわけでもないんですけどね(笑)。

最初の訪韓から、韓国に対して強い思い入れがあったんですね。

もともとは、韓国のバレーボール選手のファンになったことがきっかけで韓国に興味を持ったのですが、いざ韓国のことを調べようと思っても、周りにほとんど情報がなかったんです。今でこそ、本屋さんに行けばたくさんのガイドブックが並んでいますけどね。その当時の日本は、まだまだ韓国のことを報道しにくい状況にありました。ですから、これは直接行って見てみるしかない! と。

その訪韓をきっかけに、日本と韓国の掛け橋になられる活動を始められたのですね。

はい。韓国が日本のマスコミで扱われにくかったということが、日本人に偏見を与え、韓国を遠い存在にしてしまっているんだということを強く感じたんです。だったら自分が韓国を紹介することで理解の一助になれないだろうかと考えたんです。よく知らない国に対し偏見だけを持ってしまうという風潮を壊したかったんです。それから、日本と韓国を行ったり来たりして、様々な形で韓国を紹介するということをしてきたわけです。

写真への興味も、その時からずっと続いていらしゃるんですね。

そうなんです。写真は面白いもの、気に止まったものを記録するための私のメモがわりになりました。だから韓国へ行く時にカメラを持っていないことはまずありませんでしたね。私と写真との関わりというのは、私と韓国の関わりを抜きにしては語れないのではないかと思います。

「初めてだからこそ、撮りたいと思った瞬間に素直な気持ちでレンズを向けることができたんです」

Photo 撮影:黒田福美さん
ソウルにて撮影。「人と人が触れ合う瞬間の
暖かみを感じる」という一枚。
ガヤガヤとした市場の音まで聞こえてきそうだ。

韓国での初めての撮影はどうでしたか?

フィルムを出し入れするのも恐いぐらいだったことを今でも鮮明に覚えています(笑)。あとは、ひたすらにシャッターを押していました。その後、何度も韓国を訪れて撮影をしてきましたが、今になって改めて自分の写真を見てみると、初めて行った時に撮影したものの中に、良いと思える写真がたくさんあるんです。95年の写真展で大きく引き伸ばすために選んだ写真も、やはり最初に訪韓した際に撮った写真が多かったのです。

では、比較的すんなりとカメラになじむことができたのですね。

何もかもが初めてだから、なんだろう? 素敵! 面白い! と感じることが多くて、それだけ写真を撮りたいという思いも強かったんです。ですから撮りたいと思った瞬間に、素直な気持ちでレンズを向けることができましたし、それが写真にも大きく影響しているんだと思います。

初めてだからこそ、感じたままの好奇心を表現できたんでしょうか?

そうですね。その時は、わぁって感動した瞬間の目線やその時の心の動きをそのままに撮影していたので、今見ても新鮮な感じがするのだと思います。今では自分の中で当たり前の風景になってしまって、見えなくなってしまっているものもあるかもしれませんね。

Photo 撮影:黒田福美さん
「電車で向かいに座っていた女の子
が、私の持っていたカメラを不思議
そうに見ているところを撮りました。
何度も見るうちに、この表情の
不思議な魅力に気づいて。見れば
見るほど吸い込まれそうに
なるんです」

初めての地で、知らない人にカメラを向けることで緊張したりしませんでしたか?

ほとんどありませんでしたよ。私はたいてい「わー面白い!」って言いながら撮影をしていたんです。そう言ってレンズを向けると、まず私が観光客だということが相手にわかる。そして、撮ろうとしている被写体に純粋に興味を惹かれていて、なにより、私には敵意がない、他愛のない行動だということが伝わるんですね。だから相手の方も構えることなく撮影させてくださるし、気を許したときにふっと見せた素敵な笑顔が写りこんだりもしているんです。
 今でも、撮影のコツを聞かれることがあるんですが、「写真を撮らせてください」という現地語を覚えるより、「わー面白い!」という言葉を覚えておくといいですよって答えるんですよ。

なるほど。それでは、フレーミングなどの技術的な面での苦労はありませんでしたか?

私が初めて人に写真を見せた時に「もう画角(※注1)がきまっているね」って言われたんです。その時はなんの意味だかわからなかったんですけれど(笑)。
 結局、私は女優としてブラウン管に映る仕事をしていますから、本能的に、自分にとって重要なものは何か、フレームの中に何を

入れるべきかということを初めからある程度理解できていたのだと思います。今でもフレーミングを考えて撮影することはないですね。ハッと思った瞬間にシャッターを押している、そんな感じです。

  • 注1 画角=フィルムに写る撮影範囲を角度であらわしたもの。広角レンズを付けると画角(写る範囲)が広くなり、望遠レンズを付けると画角が狭くなる。