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talk! talk! talk! 作家・吉岡 平さん


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作家・吉岡 平さん

作家
吉岡 平さん

ファンタジー小説という分野で多くのファンを魅了する小説家、吉岡平さん。90年に発表された「無責任艦長タイラー」はアニメ化もされ、今なお連載されている人気シリーズだ。
そんな吉岡さんが小説を書き始めた頃に、趣味として始めたのが写真。興味の対象にはとことんこだわるという吉岡さんならではの視点から、写真やカメラへの愛情、そして小説への思いなど、たっぷりと語っていただいた。

プロフィール

よしおか・ひとし。1960年岡山県笠岡市生まれ。早稲田大学第二文学部中退。在学中より編集プロダクションに所属、アニメ・特撮雑誌を中心にフリーライターとして活躍するかたわら、趣味として写真を始める。1984年に講談社、X文庫より、小説版「コータローまかりとおる」(原作・蛭田達也)で作家デビュー。1990年に、富士見書房、富士見ファンタジア文庫より「無責任艦長タイラー」を発表。以来、少年向けジュブナイル小説(※注1)を中心に、約150冊の作品を刊行。8月27日には、エンターブレイン、ファミ通文庫より最新作、「無責任提督タイラー」を発売予定。

  • 注1 ジュブナイル小説=おもに少年あるいは少女、もしくはその両方に向けて書かれた小説

「なんだか書けるような予感がして」 漫画家志望から一転、小説家へ

小説家になられたきっかけはなんですか?

大学時代、編集関係の会社でアルバイトをしていたんですが、その会社の先輩から、ちょっと文章を書いてみないかって誘われたんです。それが小説を書き始めたきっかけです。それまでずっと漫画家を目指していたんですが、絵が思うように描けなかったので、夢を叶えるのは難しいかな、と落ち込んでいたんです。それで、小説に心が動いたんです。

その時はどのような小説を書かれたのですか?

吉岡平さん

「コータローまかりとおる」っていう漫画があるんですが、その漫画のノベライズ本を書いたんです。アルバイトで文章に触れていましたので、文章を書くということに対しては抵抗はなかったですね。むしろ、書けるような予感がしたといいますか……。実際にその仕事を引き受けて書いてみたら、そこそこの評価をいただいてしまったんです。そのままズルズルと書き続けて……もう四半世紀経ちます(笑)。

2000年に刊行された単行本「鉄の由来」の中で、「カーストアイアン」というカメラを中心に描いた小説を発表されていますよね。

はい、読んでくださったんですか。ありがとうございます。あれは短編集だったので、一本ぐらい自分の好きなものを自由に書いてやろうと思ったんです。F Photomicを持ったカメラマンの話ですが、ニコンカメラとニッコールレンズについてかなり詳しく書いてありますので、写真を撮ったことのない人には、読んでもまったくわからないと思います。

確かにそうかもしれません。でも逆に、写真が好きな人であれば、なるほどと頷ける内容ではないでしょうか。

そうなんですよ。あの話に関しては、「鉄の由来」の中で一番好きだと言ってくれる方もいますし、それだけ飛ばして読んだという方もいます。評価が見事に二つに分かれているんです。カメラを小説の題材にするのは難しいですね。カメラを脇役として登場させることは簡単にできても、主人公にするとなると、これはなかなか骨の折れる素材ですね。でも、素材として純粋な面白さはあるんですよ。

ニッコールレンズのシャープさに感動 「写りはもちろん、見た目にもこだわります」

カメラがご趣味だとはお伺いしていたのですが、「カーストアイアン」を拝読して、本当にカメラがお好きなんだなぁとあらためて感心してしまいました。ちなみに、現在カメラは何台ぐらいお持ちなんですか?

正式に数えたことはないんですが、50台ぐらいはあると思います。レンズは新しいカメラを買うたびについてきたりするものもありますから……おそらく100本じゃきかないですね。長くやっていると、レンズはどんどん増えてしまいます。

そもそも、カメラを始められたのはいつ頃なんでしょうか?

小さい頃からカメラに興味があったんです。小学生の時に、頼み込んで父親に買ってもらったハーフサイズカメラ(※注2)で撮っていたりしたんですけど、やっぱりどうしても一眼レフカメラが欲しくて。大学の時、自分でお金をためて買おうと思ったんですが、貧乏でしたから、ニコンのカメラは買えなかったんです。ニコンのカタログを眺めては、「やっぱり買えないよなぁ」って呟いていました(笑)。

ニコンのカメラを手に入れられたのはいつですか?

同じく大学生の時、父親がF2をもらってきてくれたんです。嬉しかったですね。その後、多くのニコンのカメラを手に入れましたが、やはりF2には思い入れが深いです。一度手放した時期があったんですが、どうしても手に入れたくなってまた買いましたから。

実際にニコンのカメラを使ってみてどうでしたか?

まず驚いたのが、レンズのシャープさです。最初はF2に付いていたAuto 50mm F1.4cと、Auto 28mm F3.5cを使っていました。まだAi方式(※注3)になっていない、多層膜コーティングを意味するCのマークが付いているレンズです。その頃はモノクロを自分で焼いていたのですが、焼き上がった写真を初めて見た時は、なんてシャープなんだろうって感動しました。その後、135mmのF3.5のレンズも買ったんですが、それがまた切り込むようにシャープで……。

Photo(撮影・吉岡平氏)
スピード感溢れる一枚。走ってくる自転車を待って、撮影するタイミングを測り、狙って撮影したそうだ。
Photo(撮影・吉岡平氏)
ドイツの麦畑を撮影。プリントしてみて、あらためて麦の一本一本のシャープさに驚いた写真。
Photo(撮影・吉岡平氏)
ドイツの町並みを切り取った一枚。何気ない感じが気に入っているそうだ。

なるほど。その後、数多くのニッコールレンズをご愛用いただいたということですが、特にお気に入りのものはありますか?

105mmのレンズは好きです。35mmの3倍ですよね、きっちり。他社は100mmがあると思うんですけど、この5mmにこだわった感じがいいですよね。
 一番好きなレンズは35mm F2の明るさのもので、とにかくシャープなんです。35mmF2レンズは歴代全て持っているんですよ(笑)。そのなかでも特に、Ai方式になる前のものが好きなんです。その頃のレンズは前枠の部分いっぱいにレンズがある。あれがいいんです。今のレンズも相変わらずシャープだし、さすがだと思いますけど、35mm F2に関しては、デザイン的に初期のものが好きですね。

レンズのデザインにもこだわるほうなんですね。

わりとそうですね。いやー、見た目も大事ですよ(笑)。デザインがいいと、それだけで欲しくなってしまいます。あと、このカメラにはこのレンズを組み合わせたいとか、このカメラと組み合わせてみたらどうだろうかとも考えちゃいますね。人のカメラを見て、このレンズじゃカメラがもったいないよ! などとひとりで勝手に思ったりもします(笑)。

今日はご愛用のカメラとレンズを何点かお持ちいただいているんですが、その50mm F1.8Dのレンズは、最近発売されたレンズですよね?

レンズ
右が50mmF1.8Dのレンズ。左の50mmレンズと比べてもレンズのふちが奥まっているのがわかる。このデザインがお気に入りだそうだ。
香港で購入したF55と50mmF1.8Dのレンズ
香港で購入したF55と50mmF1.8Dのレンズ。カメラの性能はもちろん、小ささ、軽さにも満足しているとか。

そうです。僕は50mmが出ると必ず買っちゃうんですよね。これは本当に最近買ったんです。早速使っていますが、すごくいいですよ。あと、レンズのふちが奥まっていますよね。このデザインも好きなんですよ。

こちらのNikon Usは海外で購入されたんですか? 名前が、海外販売を意味するF55ですよね。

はい。香港に旅行中、Usだと知らずに、現地で一目惚れして買ってしまったんです。このカメラはいいカメラですよ。首にさげておいても邪魔じゃないですし、操作が簡単。説明書を見る必要がないぐらいです(笑)。しっかり撮影もできるし、デザイン的にも傑作だと思います。実によくできたカメラです。僕としては、Usにブラックボディが出たらうれしいですね。思いきって、10色ぐらいバリエーションを作っても面白い。そうしたら僕、絶対買いますね。10種類全部集めますよ。
あ、さっきの50mm F1.8Dレンズ。Usにつけるといいんですよ。ただ色がね、Usのボディだと合わないかな。あのレンズにシルバーがあったらいいのになぁとすごく思います。

(笑)カメラとレンズの組み合わせにはとてもこだわりをお持ちなんですね。

  • 注2 ハーフサイズ(シネサイズ)カメラ=画面サイズフォーマットを通常の24×36mmではなく17×24mm前後にすることで、より多い枚数の写真を撮影できるカメラ。画質や規格の違いから今ではあまり使用されなくなったが、一部愛好家には根強い人気がある。
  • 注3 Ai方式=レンズの露出計連動ガイドとボディの露出計連動レバーを利用して、開放F値の補正を自動的に行う方式を持つレンズ。