Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.17 Sutton Images サットン・イメージズ

Sutton Images

「F1の撮影:サーキットのドラマ」

モータースポーツ(イギリス)

サットン・イメージズは、設立以来モータースポーツを専門的に且つ幅広く手掛けてきた。独立系モータースポーツフォトエージェンシーとして世界最大手の同社は、10名の専属プロを擁し、英国モータースポーツ産業のメッカであるシルバーストーン・サーキット近郊に構える本社から幅広くサービスを提供している。

同社内には、最新技術を完備しており、撮影や画像加工から、世界各国のクライアントへの画像配信までをスピーディーに行うことができる。6名の受賞歴豊富なフォトグラファーに加え、世界規模のエージェントフォトグラファーと代理人のネットワークを使い、サットン・イメージズは年間開催数が何百にも上る国際大会をカバーしている。400万点を越すスライドフィルムアーカイブ、90万点を越す検索可能なデジタルアーカイブは1960年から現在に至るモータースポーツの歴史そのものと言っても過言ではない。

同社を設立したキース・サットンは、フリーのモータースポーツ・フォトグラファーとして働いていたが、彼のキャリアは若き日のアイルトン・セナとの出会いを通し大きく変わることとなった。1980年代初期に、当時イギリスモータースポーツ界の階段を一気に駆け上がる時期にあったセナはキースをフォトグラファーとして選んだ。キースは弟のマークと組み1985年にサットンフォトグラフィックを立ち上げ、全てのF1グランプリと世界各地の各種モータースポーツ撮影を手掛けることを目標に掲げた。

現在、サットンフォトグラフィックはサットン・イメージズに名称変更し、その力を更に伸ばしている。シルバーストーン近郊のタウセスターに最新鋭のオフィスを構え、キースとマークはスタッフ及び世界各地のエージェントチームと連携し、第一級のモータースポーツ写真の撮影を行っている。

サットン・イメージズは、現在もなお世界中の出版物に数かぎりない画像を提供している。チーム、スポンサーと綿密に連携し、若い才能あるドライバーの広報活動やメディアサポートにも積極的に関与し、その中から、F1の世界チャンピオン、キミ・ライコネンやジェンソン・バトンなども登場してきた。

サットン兄弟は、同世代のなかで最も有能なモータースポーツフォトグラファーと認められており、彼らの写真画像は、20万人の読者を抱え、現在も成長を続ける週刊オンラインモータースポーツマガジンGP Week.comなど世界中の出版物を飾っている。

キースとマーク兄弟がビジネスを始めてから多くのことが変わったが、モータースポーツを撮影する喜びだけは今も変わりない。

スピードへの挑戦

モータースポーツや写真に対するキース・サットンの情熱は父親譲りだ。父親は、息子のキースをレーサーピットに連れて行くほどの熱心なレースファンだった。キースは17歳の時、父親のNikkormat(ニッコールマット、日本国内ではNikomat:ニコマート)と24mmの単焦点レンズ、70-200mmのズームレンズを借りて車の撮影を始めた。キースはできるだけ多くのレースを撮影し、プリントしてレースドライバーたちに買ってもらった。そして2年後、彼は正式にモータースポーツ・フォトグラファーになった。

1981年、キースはイギリスのレースサーキットの一つ、ブランズ・ハッチのパドックを歩いていた。その時、あるドライバーが彼に近づき、「なぜ私の写真を撮っているのか?」と尋ねた。キースは、「ブラジルの雑誌に載せる写真を撮っている。ブラジル人ドライバーの写真が欲しいのだ」と答えた。ドライバーはこう言った。「私のドライバーとしてのキャリアは始まったばかりで、ブラジルの雑誌に載せてもらう自分の写真が必要だ。私の写真を撮ってくれないか?」。その日、アイルトン・セナ・ダ・シルバは初出場のレースで優れた走りをした。そしてキースは、後に「天才」の名をほしいままにしたアイルトン・セナのフォトグラファーとなった。

1991年、アイルトン・セナがベルギーグランプリで優勝した際、キースは表彰台に隣接した部屋に駆け込み、窓から身を乗り出した。セナの真横だ。キースは、セナに気付いてもらうために彼の名を叫んだ。すると、セナはシャンペンを持ってキースを見上げた(写真:シャンペンシャワーをキースに向けるセナ)。

マーク・サットンは、キースと同様10代の時にキースのお下がりのNikkormatを使って撮影を始めた。マークが撮影した有名な写真の中の一枚は、1993年に撮影された。彼はフェンスの前で、カーブを駆け抜けていく車を撮影しようとしていた。シャッタースピードは1/125秒。ブレーキ音とタイヤが路面に擦れる音を聞いた次の瞬間、顔を上げシャッターボタンを押した。そして、宙に浮くミカ・ハッキネンの車をシャープに捉えた(写真:カーブで宙に浮くマクラーレン MP4/8)。

満足感の大きさ、要求の厳しさ

世界各地を旅し、グランプリで繰り広げられるレース、そこに現れる人物、魅力的な女性などを撮影して飽きることは決してない。スポーツはすべて予断を許さないものだが、なかでもF1はその要素が強く、ダイナミックなレースシーン、勝利への情熱、敗者の絶望感、舞台裏での絶え間ない駆け引きなど、次々とドラマが展開するフォトグラファーにとっては夢のような舞台である。ドラマチックな瞬間を自身で捉えた写真を、世界各国の出版物の中ですぐに見ることができるこの仕事は、フォトグラファーに大きな満足感を与える。

しかし、この仕事の最良の面は最も困難な面でもある。サーキットの重要な箇所にフォトグラファーのチームメンバーを配置し、レース中のあらゆる決定的な瞬間を捉えるためにサーキットで過ごす時間は、日に12時間以上と長い。全てが一瞬のうちに決してしまうために、撮り損なうこともある。更にデジタルの世界では、メディアに向けて出来るだけ速く写真画像を編集することにも挑まねばならない。

サーキットには多くのフォトグラファーがいる。趣味で撮影しているか、クライアントのために撮影しているかのどちらかだ。世界各地どこのグランプリに出向いても、皆顔なじみで仲が良い。

グランプリのある週末は様々なスタイルの撮影を試みる。パドックではセレブリティーフォトグラファーになり、ルイス・ハミルトンとその恋人で有名なニコル・シュレジンガーを撮影する。コースに移動し、F1のレースシーンを撮影する。ルーティーンが決まっている訳ではないが、週末のグランプリならではの雰囲気を最も良く伝えられるように、新聞が好む優勝者のポートレートからF1の芸術的なショットまで、あらゆるシーンをカバーした写真のなかから状況に応じて最適な判断のもとに選出していく。ファンの姿、旗、コンサート、レースクイーンなども撮影しイベントの雰囲気を伝えるのだ。

何を撮るべきか、という判断は時として非常に複雑なものにもなりうる。的確な判断をするには、モータースポーツが好きであり、かつ撮影したすべての写真画像がどのように使用されるかを理解する必要がある。ニュース、特集記事、その他写真の掲載先に向けて最良の画像を作るには、被写体となるその人物が誰であるか、レースのルール、習慣などを知っておくと役に立つ。

ワークフローとメディア環境の変化

マルチメディアを従来の静止画に取り入れるのは、ビジネスの大きな推進力になる。サットン・イメージズは、フェイスブックにも沢山写真を掲載しているし、セレブリティ、事故、レースの優勝者、表彰台のシーンなどのツイートも行っている。ドライバー自身が自分達の画像をリツイートすることもある。

この数年間は主な撮影画像をAnimotoビデオ※1にして、サットン・イメージズのウェブサイトやオンラインマガジンGP Week.comなどに掲載している。サーキットで撮影した百枚以上の画像を、音楽付きのスライドショー動画として楽しんでもらえる。

最近では、Animotoビデオから大きく踏み出し、「週末の静止画」というタイトルで30分のテレビ番組制作にも乗り出し、これはグランプリ翌週にイギリスのテレビ局スカイスポーツのF1チャンネルで放送されている。世界規模で視聴者に最良の作品を見せられるこの素晴らしい方法は、サットン・イメージズの知名度だけでなく収入をも押し上げている。

フェイスブックやツイッターは世界のどこにいようと最新の出来事を伝えることができるツールだが、それに加えここ数年の間にデジタル雑誌も登場した。サットン・イメージズが出版するオンラインマガジンGP Week.comは、日曜に一晩のうちにオーストラリアで制作し、月曜の朝には出版する。印刷物であれば書店に並ぶのにレース後4日かかるところを、こうしたプラットフォームであれば即座に提供できる。これは同社に大成功をもたらした。

※1 写真を選択するだけで、スライドショー動画が自動でできるアプリ

退屈する暇はない

F1の撮影は実際には華やかな世界ではない。苛酷な気候につき合い、幾日も幾晩も家を留守にするほどのハードワークが求められる。空港の出発・到着ラウンジを際限なく通過し、飛行機で長時間移動する。長距離飛行に付き物の時差ボケに対応しながら、到着したらすぐに仕事に取りかかる。安定した家庭生活は望めないので、理解のあるパートナーが是非とも必要となる。

サーキットでの生活は忙しく、レースが進むにつれて忙しさは更に増す。パドックでは常に何かが起きており、サポートレースの撮影があるかも知れない。それに加えイギリスに送る写真の編集作業もある。タイムマネージメントも大切になる。

ある週末はマレーシアの湿度の高さに苦しみ、その翌週にはバーレーンの乾燥した空気と熱に炙られる。このような状況下では、機材の信頼性は決定的で、ニコンはこの点が特に素晴らしい。

容易な決断

ニコンにスイッチすることを決める前にサットン・イメージズは徹底的にD4とNIKKORレンズをテストした。結果は良好で、決断は簡単だった。ちょうどオーストラリア、メルボルンで開催された2013年のF1チャンピオンシップのシーズン初戦にすべての機材を間に合わせることができた。

コースを疾走するF1の速度を考えると、高速オートフォーカスや連写性能は決定的に重要。高感度域での画質も、光量の少ないピットでの撮影時には欠くことのできない要素だ。D4はそれらの期待に全て応えてくれる。

カメラバッグの中身

サットン・イメージズの機材はD4のみ。グランプリ毎に携行する機材は異なるが、原則的にD4ボディを2台と、広角から超望遠までの様々なレンズ、それにテレコンバーターとスピードライトを使う。

安全のためフォトグラファーはレースが行われるコースから離れた場所で撮影しなければならない。マシンのレースシーンをクローズアップで捉える為にAF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II、AF-S NIKKOR 500mm f/4G ED VR、AF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VRの望遠レンズは欠かせない。サイズが大きいため、撮る物によっては実用的でないので、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR IIにテレコンバーターを装着することも選択肢として活用している。

パドック周辺やレース場全体の雰囲気などを撮影する場合には、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、もしくはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDを使う。パドックからレースに出ていくマシンを至近距離で撮影する場合は、AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G EDでも素晴らしい成果が期待できる。

2013年のサットン・イメージズのフル機材:
Nikon D4 body 4台
AF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VR 1本
AF-S NIKKOR 500mm f/4G ED VR 1本
AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II 1本
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II 2本
AF Zoom-Nikkor 35-70mm f/2.8D (2.0x)  2本
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED 2本
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 2本
AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED 1本
Ai AF-S TELECONVERTER TC-14E II 1本
Ai AF-S TELECONVERTER TC-17E II 1本
AF-S Teleconverter TC-20E III 1本
スピードライトSB-910 4台

常にサポートの姿勢にあるNPS

NPSスタッフは撮影で起こりうるあらゆることに対応する準備が常にできており、撮影が継続できるようしてくれる。サットン・イメージズは、イギリスのNPSスタッフだけでなく、グランプリでサポートしてくれる各開催地のローカルスタッフとも良好な関係を保っている。センサークリーニング、機材の修理、貸し出し、ソフトウエアのアップデートなど必要に応じて対応してくれる。

現在、サットン・イメージズはモータースポーツとF1の分野でD4を紹介するプロジェクトに取組んでいる。長年のスポーツ撮影を通じて得た豊富な経験をもとに、ニコンカメラの特徴を紹介し、かつニコンの開発チームとも連動し、今後の製品に役立つフィードバックを心がけたいと考えている。