Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.21 Robert Beck ロバート・ベック

「トップリーグで競い合うこと」

Robert Beck (ロバート・ベック)
スポーツ(アメリカ)

サーファーの撮影からキャリアをスタートさせたロバート・ベックは、業界で最も尊敬を集めるスポーツフォトグラファーのひとり。『スポーツ・イラストレイテッド』誌の仕事を続けて30余年、彼は世界中の数多くのトップアスリートを撮影し、またマスターズ、スーパーボウル、MLBワールドシリーズ、NBAファイナル、NHLスタンレー・カップ決勝戦、オリンピックなど、有名なスポーツイベントを撮影してきた。現在は米カリフォルニア州カールスバッドを拠点としている。

フォトグラファーとしての私の原動力

私の職業は、ある意味スポーツだと思っています。誰が一番優れた写真を撮るか、所属する出版社に最高の写真を提供するかの競い合いです。被写体となる野球選手は試合で勝とうと努力しますが、私も同じです。『スポーツ・イラストレイテッド』用に素晴らしい写真を撮るという「試合」で勝つために、努力しています。競い合う他のフォトグラファーの作品より優れたものを撮らなければならないのです。写真はストーリーを語らなければならず、そこにいる他のフォトグラファーが捉えたどの写真よりも際立たなければならない。それが私の「勝利」なのです。

常に競い合う世界

フォトグラファーであることとアスリートであることはとても似ています。どちらも、良い結果を得たいと常に駆り立てられています。その点では、優れたフォトグラファーは、例えばマイケル・ジョーダン(NBA)やウェイン・グレツキー(NHL)とまったく同じです。彼らは彼らの競技で勝利を目指しており、他のアスリートがためらうポイントですかさず優位に立てる能力以上に、良い結果を追求する意志を持っています。私の場合は、担当編集者たちが賞讃し、読者が喜ぶようなより優れた写真を提供する、という意志です。私や『スポーツ・イラストレイテッド』誌のスタッフは皆、そのような思いを持ち続けています。私たちは常に、良い結果を出したい、最高の写真を提供したいと思っています。『スポーツ・イラストレイテッド』誌などの編集者たちは、私たちにそのような写真を撮ることを期待しており、読者たちは誌面やウェブサイトでそのような写真を目にすることを期待しているのです。

昔なら、フットボールの試合を撮りに来るフォトグラファーは10~20人だったでしょうか。今では40~50人、最大級のイベントなら70人に達することもあります。優れたAFとAEシステムのおかげで、技能を必要とすることも難なくこなせるようになり、そこにいる全員に良い写真を撮るチャンスがあります。そうなると、「私の写真を他のフォトグラファーの写真より優れたものにするには何が必要か?」そのことを考えなければなりません。私がいつでも競技場で最も優れたフォトグラファーであるとは限らないかもしれませんが、私よりハードに仕事をするフォトグラファーは、簡単には見つけられないでしょう。スポーツ撮影での長年の経験と愛用の機材があって、そして、ほんの少しの幸運が加わることで、毎週毎週試合の度に、クリエイティブで興味をそそる写真を発表することができているのです。

良い写真と素晴らしい写真と完璧な写真

アリーナやスタジアムに足を踏み入れたと同時に、私はストーリーを語る写真になる光景を探しています。他の誰もが撮っているものより、ほんの少しクリエイティブで、それでいて技術的にしっかりした、そんな写真を目指します。「良い」写真と判定する基準で最も重要なものは、ストーリー、クリエイティビティー、熟練した技術の3つです。「素晴らしい」写真はこれらを踏まえた上で、さらに普通とは違う点がひとつあり、それで区別されます。それは、個性的であること。文字通り、他の誰にも撮ることができない写真であることです。それはアングルや焦点距離がほんのちょっと違うということではありません。極めて独特なものであるからこそ、個性的なのです。

往年の有名な写真作品の中には、表現内容は素晴らしいものの、その作品を通して見て取れるカメラの性能は近年のものとは比較にならないものもあります。それはフォトグラファーが才能不足だったということではなく、昨今のカメラの性能があまりにも高くなったためです。写真の表現内容は長年にわたって賞賛され得るものですが、技術面は難しいでしょう。現在の映像作品は、優れた光学性能や描写性能の恩恵を受けているのです。

わずかでもより良い写真を

私はときどき、ナックル・ボールが得意な45歳のメジャーリーガーのような気分になります。長年試合を続けてきて身につけた経験から、何が役に立ち、何が役に立たないかがわかっています。そのおかげで仕事を容易にすることができ、技術面にはあまり時間をかけずに、クリエイティブ面に多くの時間を使えているのだと思います。
巨大なスポーツ会場には慣れています。もう数えたくないほどアリーナやスタジアムにも行きました。それらの会場はすべて非常に似通っています。私の機材の設定や撮影位置はほとんど変わりませんから、写真一枚一枚を、以前に撮ったものよりほんの少し良くすることに専念しなければなりません。その違いは時として非常に小さいもので、他の人は気付かないかもしれませんが、そのわずかな違いを出すために、毎回、懸命になるのです。

カメラの技術はこれからもずっと向上していくでしょうが、ここ10年で最も顕著に、意義深い前進を遂げたのはAFシステムだと思います。AFの進化は、私を含むすべてのフォトグラファーを助けてきました。AFでの撮影は非常に便利です。そのスピードは驚異的で、捕捉性能は実に素晴らしい。シャープな写真が撮れる確率は、数年で格段に上昇しました。

デジタル画像のファイルシステムもまた、デジタル一眼レフカメラの世代ごとに向上してきました。ISO 100~200のフィルムでは、主に昼のイベントやハイパワーなフラッシュを使ってアリーナで撮影していました。今はどんな光の状況でも、写真が台無しになることを心配せずに、ISO 4000までの高感度で撮影できます。デジタルファイルはフィルムより大幅に優れているのです。暗いシーンでもノイズが抑えられ、極めてはっきり、クリアーな写真に仕上がります。この種の技術によって、以前は撮影できなかったような写真が撮影できるようになりました。さらに、自然光での撮影もでき、昔のリバーサルフィルムの写真よりシャープで、色もコントラストもずっと良好です。暗ければ暗いほどその差は大きく、さらに太陽光の下でもずっと良い性能を発揮するのは、素晴しいことです。

ニコンD4S

D4Sは、第一にAFの捕捉性能に感動しました。例えばこんなことがありました。将来オリンピックに出場すると思われる若いスキーヤーたちを撮影したとき、私たちは、スキーヤーが私たちには見えないところから突如現れこちらに向かってジャンプする、という写真を撮ろうとしていました。私たちは斜面をじっと見つめました。実はそのとき、まだD4Sを試したことがなく、「そんなシチュエーションを撮ることができるなんて、まさか」と思っていました。私の目に見えないところから現れるスキーヤーを瞬時に見つけ、その1000分の1秒後に狙いを定め、彼が宙に舞い着地するまで捕捉し続けるAFがこの世にあるなんて、考えもしなかったのです。

朝、私たちは斜面を上っていき、彼らに競技用の旗門を滑り抜けてもらいました。宙を舞い、シュプールを描き、疾走するスキーヤーたち。私は「実際には彼らを捉えられていないな」と思っていました。彼らは見えないところからあまりにも速く滑走してきていたのです。彼らに狙いを定める時間はありませんでした。私たちは滑走シーンを2、3回撮ってから、いくつかの画像をパソコンに入れてチェックしました。そのときにわかったのです。このカメラが彼らを捉えていたことを。斜面から舞い上がるスキーヤーを捉え続け、ピントがシャープに合っていました。あれは実際にはどのくらい短い時間内のことだったのだろうと、私は考えました。カメラはほんの1000分の1秒で、どこからともなくやってくる彼らを捉え、狙いを定め、正確にピントを合わせたのです。

このような優れたテクノロジーが、「写真撮影」を新たなステージへと押し上げました。このときのショットは偶然ではありませんでした。このことは、それからさらに同様のジャンプを2時間撮影し続け、その間継続して、D4Sがジャンプをきちんと捉えたという事実が証明しています。同じことができるカメラが他にもあるか、それはわかりませんが、これまであのようなことができるカメラを持ったことはありませんでした。あのような写真を撮ったのは初めてですし、不可能だと思っていました。それが、今や可能なのです。

ニコン効果

初期のころから、私はニコンを選び続けてきています。なにより、レンズがその理由です。NIKKORレンズは非常に優れています。私を担当した編集者の中には、一枚の写真を手にしただけでも、明瞭さ、コントラスト、そして色から、それがニコンで撮った写真だとわかる人たちがいます。ニコン独自の優れた点として、レンズの次に、ボディー、AFの先進性、そしてデータファイルも挙げられます。それらは一歩先を行っています。そして、撮影しているとき、私は他の人たちより有利だと感じられるのです。

私はニコンを信頼しています。それは確かなことです。どのような競技場、プール、あるいはコートに行くときにも、ニコンの機材には何ひとつ不安を感じることなく、ベストな機材を手にしていると感じられます。誰かが私の機材以上のものを持っているかもしれないなどとは思いません。

それは、どんな職業においても同じです。誰でも道具を選び、そして選ぶのは最も良い結果を出せる道具でしょう。配管工でも、テレビの修理工でも、あるいは整備工でも、一番良い道具を選びます。私はフォトグラファーとして同じことをしてきており、道具のことで心配しないためにニコンを選びました。ニコンは私の仕事にとってベストな道具をつくっているのです。

カメラバッグの中身

● D4S 3台
● D4 2台
● AF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VR
● AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR
● AF-S NIKKOR 200-400mm f/4G ED VR II
● AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
● AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
● AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
● AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D