Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.18 Chris Burkard クリス・バーカード

「共感を呼ぶ写真」

サーフィン(アメリカ)

クリス・バーカードは、カリフォルニア州セントラルコーストを本拠地とするフォトグラファー/アーティスト。独学で写真を学び、サーフィン、アウトドア、ライフスタイル、旅行関連を専門とする。

サーフィンやアウトドアの業界において、インパクトのある作風で名声を確立。数々の雑誌やメディアのスタッフ・フォトグラファーとして活躍を続けており、その独創性に富んだ、クリエイティブな構図に定評がある。現在、雑誌「サーファー」のシニア・スタッフ・フォトグラファーを務めるほか、さまざまな国際的な出版物や、パタゴニアなどの有名ブランドなどへ写真を提供している。出版企画としては、友人エリック・ソダークイストとの共著「ザ・カリフォルニア・サーフ・プロジェクト」(2009年)、そしてパタゴニア製作のボディー・サーフィン映画「Come Hell or High Water(何が起ころうとも)」とともに発表された「プライト・オブ・ザ・トーピード・ピープル」(2012年)の2冊を手がけている。

サーフ・フォトグラフィーが教えてくれること

すべてが予測不可能であること。それがサーフ・フォトグラフィー(サーフィン撮影)の醍醐味です。風、潮、光、サーファー。コンディションは絶えず変化し、思い通りの環境や条件で撮影できることはまずありません。スタジオに波を持ち込むことはできないのです。しかし、こういった状況に挑戦することが、撮影をよりエキサイティングなものにしてくれます。スタジオでの撮影とは異なり、いつも必ず何かがうまくいかず、波が砕ける度に命は危険にさらされますが、だからこそ、素晴らしい一枚が撮れたときの喜びは非常に大きなものになります。サーフ・フォトグラフィーは、私に自然に対する深い敬意を抱かせてくれます。そして、地球という壮大なフィールドの中で、自分がどれほど小さく、取るに足らない存在であるかを自覚させてくれます。海に出ると、自分が環境に対してどれほどの影響を及ぼしているか、食物連鎖のどの位置にいるのかを考えるものです。良い瞬間を捉えることだけでなく、自分の身を守ることにも注意を払わなくてはならないのです。海での撮影は忍耐を要します。そして、忍耐について学ぶには海が一番です。

感情の高まりを捉える

他のフォトグラファー同様、私はいつも最適な光を探しています。それは、何を撮るか、どこで撮るか、どんな機材を使うか、そしてどんな瞬間を捉えるかということ以上に、極めて大切なことです。光は何よりも重要な要素であり、常に儚いものなのです。

アクションスポーツの場合、決定的瞬間を狙うことはもちろん大切ですが、私はむしろアスリートの感情の高まりを捉えたいと考えています。その写真によって、観る人は自身をアスリートに投影し、感情の高まりを感じることができます。心に残る写真とは、多くの場合、共感できる写真です。その人が感じている寒さや温もり、あるいは立ち向かう者としての恐怖、高揚感、そして達成感。そんなことが伝わる写真です。私は写真を観る人自身がどう感じるかを重視したい、そして彼らの感情に訴え、共感を呼ぶような瞬間を捉えたいと思っています。

そのためには、被写体と親密な関係になる必要があります。使用する機材が大きいほど、親密さを築くのは難しくなります。また感情を捉えようとすると被写体との対話に注意が向いて、光やその他の技術的な要素に気がまわらなくなります。だから、海では、被写体とのやりとりに集中しつつも容易に扱える小さくて軽いカメラが好きなのです。

自分の撮った写真は、いつまでも人々に観続けてもらいたい。そして、自分の写真をきっかけに、人々が旅に出る、サーフィンを始めるなど、快適な日常から一歩踏み出して欲しいと願っています。それだけの写真を撮るためには、私自身も快適な日常から踏み出さなければならないでしょう。

カメラから離れることの意味

フォトグラファーはいつもファインダー越しに世の中を見ていますが、ときにはカメラのことを忘れて物事を経験することも大切だと考えています。そこで何が起きているのか、自分の目で見て感じるほうが物事の本質を理解しやすいのです。フォトグラファーになりたての頃の私は、力尽きるまでひたすら撮り続けていました。しかし最近になって、撮り過ぎない方が良い結果につながることに気づきました。カメラから離れて過ごすことが多ければ多いほど、良い写真が撮れるようになってきたのです。前もって自分の目でよく観察することで、実際の撮影においてベストな瞬間に反応することが容易になります。今では以前ほどの枚数を撮らなくても、より効率的にイメージ通りの画を残せるようになりました。

体の一部のように反応する機材

私が撮る写真は、いつもチャンスは一度だけ。二度目のチャンスはまず訪れません。だからこそ、私自身と一体になっているような、まるで体の一部のように反応してくれるカメラが必要なのです。このことは、写真撮影の多くのジャンルで言えることでしょうが、とりわけサーフ・フォトグラフィーでは重視されます。海の中では、ファインダーを覗きながらフレーミングすることはありません。事実、伸ばした片腕以外、体は全て水面下で、波間からハウジング入りのカメラだけを突き出しているということもよくあります。まさに自分の体の一部です。カメラを手にしたときの感触が金属であろうとプラスチックであろうと構いません。しかし水中で撮るときは、手に持っていることをほとんど感じないカメラがいい。私の体の一部のように動くカメラでなければならないのです。

カメラバッグの中身

移動の際には、できる限り軽量かつコンパクトに荷造りするようにしています。基本的には必要最低限の機材のみです。そしてより効率的に荷造りする方法を常に探しています。そうすることで機材のことは心配せず、撮影のチャンスに専念できます。以下に、私がいつも持ち運ぶ機材をまとめます。これだけあれば、私が見つけるストーリーをすべて伝えることができます。

Nikon D7100は、私が持っているNikon D300にとって新しいパートナーです。クロップモードのおかげでレンズ装備を軽量に抑えることができ、かつ必要な撮影領域も確保できます。小型なので軽いハウジングで済み、泳ぐ際にも楽です。水中からサーフィンを撮る人、あるいは撮ってみたいと思っている人には絶対にお薦めするボディーです。

AF-S DX Zoom-Nikkor 17-55mm f/2.8G IF-ED:広角域から標準域まで最も欲しいレンジをカバーしてくれます。非常にシャープなレンズで、常用レンズとしていつもボディーにつけています。開放F値2.8は、暗い場所でも撮影でき、風景やライフスタイル撮影に役立ちます。これを持たずに撮影に出かけることはあり得ません。

AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR:サーフ・フォトグラファーにとって夢のレンズです。幅広い望遠域をカバーしながら、機動性にも優れているのですから。このレンズでは三脚はめったに使いません。小型・軽量なので、ビーチでもどこでも手持ち撮影ができ、アングルを探して動き回わる際も苦になりません。同等の焦点距離でもっと大きいレンズでは、かなり困難でしょう。フォーカスの速度や精度も期待に応えてくれます。今後の撮影旅行には欠かせないレンズとなるでしょう。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ:もし撮影で一本しか使えないとしたら、絶対にこのレンズを選ぶでしょう。サーフィンのクローズアップ撮影から、引き気味のアクションショットまで、さまざまなシーンで活躍するレンズです。いつか人物撮影やライフスタイル撮影にも使ってみるつもりです。このレンズの最大の魅力は、高い描写性能です。どんな写真を撮っても美しく、その優れた画質にはいつも感心させられます。

AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G:かなり細かいディテールの撮影も、暗い場所での撮影も可能な、明るいF値が魅力です。人物撮影の仕事で持ち歩くことも多々あります。小型・軽量で、これがあれば何も考えなくて済みます。

AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED:水中からのサーフ・フォトグラフィーで、ハウジングに入れて使用します。このレンズのおかげで、私はサーファーの上を猛スピードで進む波全体を捉えることができるのです。水中で使用可能なレンズはたくさんあり、私のお気に入りといえば50mmもそのひとつなのですが、波がとてもよい状況なら、この魚眼レンズが威力を発揮します。

AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR Ⅱ:キットレンズながら、このレンズが作り出す写真にはいつも感動させられます。旅に出る際には大抵、セカンド・ボディー用か、AF-S DX Zoom-Nikkor 17-55mm f/2.8G IF-EDの予備として持っていきます。極めて広い焦点距離域をカバーし、サーフ・フォトグラフィーの合間に活躍するレンズです。