Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.17 フォトグラファーの可能性を拡げる Dムービー。

プロ仕様に進化した、ニコン一眼レフカメラの動画撮影機能。

ニコンが世界で初めてデジタル一眼レフカメラに動画撮影機能「Dムービー」を搭載して以来、今や動画は一眼レフカメラのスタンダードな機能の一つ。日々進化を続け、プロの映像関係者からも新たな撮影手段として認知され始めています。
今回のインタビューは、CM、映画、さらにAKB48などさまざまなミュージシャンのPV(プロモーション・ビデオ)を手がけるシネマトグラファー・フォトグラファーの村上拓氏。業界初・全編一眼レフカメラによるPV撮影を行ったという村上氏に、Dムービーのクオリティ、動画の撮影法や注意点、ナノクリスタルレンズの表現力など、実際にD800で制作した作品を交えながら幅広くお話をいただきました。

1. ムービーカメラとは違う、一眼レフカメラならではの映像。

写真と動画を始めたきっかけ。

Nikon F

もともと映像作家を志していたのですか?

入り口は写真でした。父親が趣味として写真をやっていたので、僕も小学2年生の頃から二眼レフで撮影をさせられていました(笑)。写っていないと、怒られたりしてね。

ニコンのカメラはいつ頃からお使いですか?

中学生の頃、最初に親に買ってもらった一眼レフは他社製でしたが、次に使ったカメラはニコマートでした。それから何台も使わせてもらっています。
これまで使ったニコンのカメラで特に好きだったのはNikon Fですね。いつも持ち歩いていました。Nikon Fはシャッター音がまろやかで、街場でいきなりシャッターを切っても人に優しい感じがするのです。今でもNikon Fは3台ほど持っているんですよ。

映像の方面に進まれたのはいつからでしょう?

子供の頃からずっと写真を続けていたものの、大学は日本大学芸術学部の映像学科に進みました。
その頃映像の世界は、撮影機材の重さや大きさに縛られた撮影手法が一般的。それゆえに、映像を写真のように自由に撮れないだろうかという思いがありました。それでチャレンジしてみようと。
ちなみに大学に入ってからも写真は続けていて、大学に通いながらすでに写真の仕事もしていました。子供の頃からの蓄積が、確実にプラスになっていましたね。

写真のように動画を撮りたかった。

最初からフリーで仕事を始めたのですか?

いえ、卒業後に東映CMという会社に入り、そこから本格的に仕事をスタートさせました。 でもその東映CMも、実は8ヶ月ほどで辞めてしまったのですが…。会社に所属すると仕事が学べる反面、思うようにステップアップ出来ない状況があり、それでフリーになったんですね。
もちろん個人でいきなりフォトグラファーとしての仕事が来るわけはなく、しばらくアシスタントを経験し、徐々にキャリアを重ねてきました。
現在は映像、特にCM関係が多いですね。ビデオクリップ、映画なども撮影しています。

大学で映像を専攻されていたので、写真からの切り替えで苦労をしたということはなかったのですね。

そうですね。むしろハイブリッド的といいますか、動画のフレーミングにしても写真の感覚を活かして撮っている気がします。
だから初期に撮ったCMも、あの当時としては斬新な撮り方をしていたんじゃないですかね。例えばあえて手持ちの雰囲気を出したり、カメラをバネで吊してみたり。ある有名なタレントの方が出演するCMを撮影した時も、カメラをバネで吊していたら広告代理店の方に怒られました。こんな撮り方をしては失礼だと。結果が良かったので、問題にはなりませんでしたが(笑)。

写真撮影のような柔軟さを映像にも活かそうと考えたのですね。

そうですね。プロ用ムービーカメラって大きくて重いので、安定して撮るためにクレーンや移動車などもよく使います。でもそうではなく、もっと人の目線に近い感じで撮れないかと、若い頃からトライしていました。
あの当時の僕の口癖は「カメラで秒24コマ撮れるモータードライブが欲しい」でしたから。200フィート巻のフィルムバックを使い、高速で連続撮影が出来ないかと思っていたのです。だから今、イメージしていた世界が30年越しにようやく実現したという思いです。

「個性的な」一眼レフカメラの映像。

Nikon D800 / D800E

デジタルカメラはいつ頃からお使いですか?

写真のデジタル化には、早い時期から対応していた方だと思います。まだデジタルカメラなどなかった1994年に、パソコンと画像処理ソフトを購入。さらにニコンのフィルムスキャナーLS-3510を使い、写真を取り込んでいました。このスキャナーは、回転式フィルムホルダーが使えたので、大変助かりました。
それからしばらくしてデジタルカメラが登場し、さらにコンパクトデジタルカメラでは動画機能を持つ機種も出始めました。当時僕もいろいろ試しましたが、もちろんまだ仕事で使えるようなレベルではありませんでした。
ようやく2008年にデジタル一眼レフカメラで初めて動画機能を持つニコンのD90が発売され、以降各社から同様の一眼レフが出てきます。
僕が初めて使った動画機能のある一眼レフは他社のカメラでしたが、問題はこれがフルオートだったこと。そこでアダプターを使い、ニコンのMFレンズをつけて撮影をしていましたね。

そのようにして撮られたのが、日本のメジャーのPVでは初めてデジタル一眼レフカメラを採用したというAKB48『10年桜』だと聞きました。実際に仕事で使ってみてデジタル一眼ムービーはいかがでしたか?

良かったですよ。
メーカーに限らず、デジタル一眼レフカメラで撮影した動画の印象は、一言でいうと「非常に個性的」です。
通常のムービーカメラは、フィルムで撮ってもデジタル化するとなんとなくビデオのような映像になり、今ひとつ手応えがなくなります。デジタルムービーカメラも、最近ではセンサーサイズが35mm相当の機種も発売され確かによく撮れはするものの、映像の面白みという点では少し物足りない感じがしていました。
それに対し、デジタル一眼レフカメラのムービーはポジで撮ったような雰囲気の映像で、非常に新鮮でしたね。写真用にチューニングされた画像処理エンジンの特性も影響しているのでしょう。またセンサーサイズが大きいので、多くのデジタルムービーカメラよりも立体感やボケ味、浅い被写界深度が表現出来るように思います。
AKB48の撮影の時も、コストを安く抑えられるからという感覚ではなくて、面白いから・個性的だからという理由で使いました。

実際に仕事で使う時、不安はありませんでしたか?

そうですね、少しはありました。でもこれまでさまざまな経験を積んで来ているので、今さら恐れるものはないと思い、使ってしまいました。それに僕のような立場の人間が使い始めないと、若手は腰が引けちゃうでしょ(笑)。

今フィルム撮影の話が出てきましたが、アナログとデジタルの現状についてどのように感じられていますか?

もちろん、いまだにフィルムには独自の味わいがあると思っています。
ただ近年、映像の世界も少しずつアナログとデジタルの境界が曖昧になっているのではないでしょうか。
よく「フィルム画質」などと言いますが、35mmの映画用フィルムにしても、結局はデジタル化するケースが多い。これはもう30年近く前から始まった傾向です。
ですからフィルム自体も、例えば多少の絞りのミスがあっても後からガンマカーブを調整すれば良い、といった意識で作られるため、フィルムが本来持っている特性が徐々に失われつつあるのです。そうなるとフィルムにこだわる必要がなくなってしまう。プロ用ムービーカメラでも、高品質のデジタル機が出て来ましたし。
写真の世界も今やほとんどデジタルですよね。かつて広告で使う写真の仕事は中判や大判カメラで撮っていましたが、D3Xが出た時点で「これからはこのカメラでいける」と思えました。さまざまな工程がデジタル対応になってきていますから、あえて大きなフィルムを使う必要は薄れています。ここ数年で本当に状況が変わっていますね。