Nikon Imaging
Japan

vol.15 衝撃の3630万画素。新たな表現領域へ。D800/D800E

2. 実践から感じたD800の真価。

D800Eを使用した印象。

ところで、あらためてD800Eの解像感についてうかがいたいのですが。

D800と同じものを撮って比較すると、やはりD800Eの画像の方がシャープであることはわかります。ただし微妙な差なので、解像感を追求したいという方でなければ、D800でもよいかもしれません。他機種に比べたら、十分な解像感がありますし…。
それよりもD800Eには、もうちょっと煮詰めができそうな点に惹かれます。ローパスフィルターの働きをなくした分、RAWデータに記録された高周波情報が多いはず。後処理をより最適化することでさらに写真として好ましい画質を引き出せるのではないかと…。私個人としては、バランスの良いD800も好きですが、よりチャレンジングなD800Eに、カメラの新たな可能性と魅力を感じています。

東福寺 方丈南庭。
Nikon D800
PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED ISO100 f/8 1/160秒
東福寺 方丈南庭。
Nikon D800E
PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED ISO100 f/8 1/160秒
Nikon D800で撮影したAの部分。
※クリックすると拡大率100%で画像が表示されます。
Nikon D800Eで撮影したBの部分。
※クリックすると拡大率100%で画像が表示されます。

Nikon D800で撮影。

Nikon D800Eで撮影。

Nikon D800で撮影したAの部分(拡大率100%)。

Nikon D800Eで撮影したBの部分(拡大率100%)。

佐藤 振一氏

佐藤さんは、普段から後処理にも時間をかけていらっしゃるようですね。

RAWで撮影したものを後処理で追い込んでいくのが、私の通常の仕事の流れです。もはやデジタルでの仕事に、このような作業は不可欠でしょう。
デジタルでの工程をフィルムに例えるなら、ピクチャーコントロールなどの設定をきっちり決めて撮影したものをそのままJPEGで出すのは、ポジの工程に近いように思います。対してRAWの工程は、カラーネガを自分で焼く感覚でしょうか。ピクチャーコントロールをもっと細かく設定できるようになれば、ポジのようなワークフローも実現するかもしれませんが、特に建築物の撮影というさまざまな制約がある被写体では、後処理は必須です。もちろん仕事の内容により、撮って出しをしなければならないケースも多いとは思いますけれど…。デジタル化によって、これまで分業化していたことを自分一人でもできるようになったわけですが、逆を言うと自分一人でやらなければいけなくなったということでもあります。後処理は確かに大変ですが、カラーネガを自分で焼くことを想像すれば、その大変さは納得せざるを得ないと思っています。

PCの作業について、画素数が上がった分、後処理にかなり時間がかかるのではないかという声もよく聞かれます。実感はありますか?

もともとスペックの高いPCは使っていましたが、「D800の画像が重いために、今までより仕事がスムーズに進まない」といったことは、私は特にありません。処理する内容にもよるかと思いますが…。昔と違い、最新のPCは低価格・高性能になっているので、現在市販されている中~上級クラスのPCなら、デフォルトのまま使っても十分対応できるのではないのではないでしょうか。

またD800Eというと、モアレを気にされているという方も多くいらっしゃるようです。建築物にも、一般的にモアレが発生しやすいと言われる細かなパターンが見受けられることがあるかと思いますが、実感としていかがでしょう。

布地などは撮影していないので、ファッション系の仕事だとまた違うかもしれませんが、実際に建築物を撮ってみた印象として、中判に比べたら圧倒的にモアレは出ません。
本来D800Eは、ローパスフィルターの働きをなくしているため、多少のモアレも覚悟していました。しかし私が撮った限りにおいては、よく見るとわずかに発生することもある、といった程度。おそらく画素ピッチが狭いことが、良い方向に働いているのでしょう。

東京タワー。
Nikon D800
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G ISO100 f/8 1/320秒
東京タワー。
Nikon D800E
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G ISO100 f/8 1/320秒
Nikon D800で撮影したCの部分。
※クリックすると拡大率100%で画像が表示されます。
Nikon D800Eで撮影したDの部分。
※クリックすると拡大率100%で画像が表示されます。

Nikon D800で撮影。

Nikon D800Eで撮影。

Nikon D800で撮影したCの部分(拡大率100%)。

Nikon D800Eで撮影したDの部分(拡大率100%)。

「機動性のある高画素機」としての可能性。

『SPA-DE(スペード) <vol.17> 』
世界の商業空間デザインを紹介する雑誌。
天井のスピーカー用孔からのぞく。D800+14-24、外付けモニターでアングルを確認しながら撮影。

他にD800の良さというと、高画素と機動性の両立も挙げられると思います。

建築物の撮影は、しっかりとカメラをセットできない場所では非常にやりにくい。でもD800であれば、撮影の自由度が大幅に増します。
時間的な制約があるケースでも、35mmならスピーディに撮れますよね。さらに14-24mmのレンズと組み合わせれば、より仕事は速くなるはず。
私が撮影する機会が多い大型の商業施設や空港のような公共性の高い建築物では撮影を許可される時間が限られています。建築写真というのは実は非常にスピードが要求されるんです。また貴重な古建築などでは三脚使用が許可されない場合もあります。「4x5や中判で撮っていたものをD800でも撮れました」というのでは面白くない。D800だから撮影できるシーンというのもあるはずで、そこにこのカメラの価値があると思います。

2012年5月17日にグランドオープンしたパレスホテル東京5Fのチャペル。天井レベルから見下ろす。 『SPA-DE <vol.17> 』より。
NikonD800
AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED f8 0.4sec ISO100 RAW
同左 夕景。
『SPA-DE <vol.17> 』より。
NikonD800
PC-E NIKKOR 24mm F3.5D ED f8 0.6sec ISO100 RAW
同左 窓側から見返す。
『SPA-DE <vol.17> 』より。
NikonD800
PC-E NIKKOR 24mm F3.5D ED f8 1.3sec ISO100 RAW

上:ミニ三脚。
左:「例えば手すりの上でもこのように二本の足で支えれば格段に安定します」と説明する佐藤さん。
佐藤 振一氏

でもスピーディに撮影するとなると、手ぶれが気になります。高画素になった分、これまで以上に気をつけねばならないのではないですか?

もちろんそうです。手ぶれをしてしまっては、超高画素である意味はありません。私は普段から手持ちで撮る機会はあまりありませんので特に問題はないのですが、三脚が立てにくいような状況では極力工夫は必要でしょうね。
例えば、このミニ三脚。結構しっかりしているんですよ。このサイズだと4×5を乗せるのは難しいかもしれませんが、D800ならば大丈夫。状況によって全ての脚を固定できないこともあるかもしれませんが、手持ちよりはるかに安定します。
これなら、大きな三脚が設置できない店内でも、テーブルやカウンターに置いて撮影が可能ですよね。カメラが小さいゆえのメリットです。
それから特に建築写真の場合、どの視点から撮るかも重要なポイント。だからいつも、さまざまな角度から撮影を試みたいと思っているわけですが、そういった点からもD800は自由がきいて良いですね。

建築写真家ならではの評価ポイント。

ライブビューを拡大表示しながら、マニュアルでピント合わせ。
佐藤 振一氏

操作性で気に入っている点などはありますか?

まず液晶が大きくなったのが、非常にありがたいです。D3Xの3.0型に対し、D800は3.2型。わずかな違いと思われるかもしれませんが、使ってみると大きさの差を実感します。さらに液晶モニターも、内面反射が少なくて見やすくなっています。
また、液晶の応答速度も向上しました。D800は撮影時に、プレビュー画面を最大約23倍まで拡大表示が可能です。この機能を使っていつもシビアにピントを合わせながら撮影しているのですが、仮に液晶の応答速度が遅いとフォーカスリングの動きと表示画面にずれが生じ、ピントがあっていてもそのままリングを回し続けてしまうのでピントが合わせづらい、ということが起こります。でもD800はD3Xに比べても明らかに液晶の応答速度が速くなっているため、マニュアルでのフォーカス合わせがとてもやりやすくなりました。光学ファインダーであればリアルタイムに被写体が見えるわけですから、そのようなことはありませんよね。でも我々のように、ライブビューで仕事をしているユーザーにとって、これは非常に大きなポイントです。
最近、中判のデジタルカメラでもライブビュー機能が付き始めました。でも、応答速度がかなり遅い。せっかくライブビューを付けても、現時点では少なくとも私の仕事には充分使えるとはいえないレベルです。ライブビューの技術は、やはり35mmが一番進んでいますよ。

撮影には、ファインダーよりライブビューを使われているんですか?

建築物の撮影は、ほぼライブビューのみです。実際に撮影するセンサー面と同じ画が写るのですから、ライブビューの方が正確だと思います。カメラの背面に画が映るというのは4x5のピントグラスみたいな感じですよね。ファインダーを覗きこむより、枠に入った画を少し離れて確認できたほうが、建築写真としてはわかりやすい気がします。常に三脚で固定し撮影するわけですから、余計にそうですよね。

それから、先ほどオートブラケティングで撮影されていましたね。

このお部屋に付いているような行灯タイプの照明は、光っている部分に明るさのグラデーションが感じられないと立体感がなく安っぽい印象になってしまいます。部屋の明るさが適正になるように露光すると発光部分は真っ白に飛んでしまうので、大きくアンダー側にふって照明のトーンが残ったカットを撮影しておいて後処理で合成するんです。
オートブラケティングによって段階的に明るさを変えたカットを撮っておけば照明のトーンが適当なものを容易に判断できますし、合成だと分からないように自然に表現するには明るさの違う数枚を段階的に塗り重ねる必要があるので、そのためにも重宝します。
ですからオートブラケティング機能が進化して露出0.3~1の間隔で前後合わせて最大9段の撮影が「連続して」行えるようになったのがとてもありがたい。室内といっても窓外の自然光は常に変化していますから、一気に撮れてコマごとのタイムラグが小さいことに非常に大きな意味があります。
まずはブラケティングボタンで補正ステップと撮影枚数を設定。次に、レリーズモードダイヤルでCLやCHの連続撮影モードにし、リモコンを押したままにすると、設定した枚数が連続して撮影されます。
ただこのときリモコンのケーブルが邪魔なのです。引っかけたりしてトラブルの原因にもなりかねないので、撮影の詳細設定ができるワイヤレスリモコンも出して欲しいですね。

 
多彩なオートブラケティング機能。
明るさ(露出)、フラッシュの発光量、ホワイトバランス、アクティブD-ライティング(ADL)の設定をカメラが自動的に変えながら撮影します。
 
照明の発光部は輝度が高いため白く飛んでしまう。オートブラケティング機能を使って段階露光を行いアンダー側の画像から発光部のトーンが適当なものを選んで後処理で合成する。自然に仕上げるには明るさの違う数枚を丹念に合成する必要がある。
 
リモートケーブル。

元画像。

合成後。

ピクチャーコントロール設定画面。
ノイズリダクション設定画面。

独自に行なっているカメラの設定などはありますか?

ピクチャーコントロールの設定では、人物以外の被写体にも「ポートレート」モードをよく使います。「スタンダード」よりもシャドー部の階調が豊かに表現されるためです。この設定で少し締まりがなく感じる時は、若干コントラストを上げています。開発側で意図した使い方ではないかもしれませんが、モードの名称にこだわらずいろいろ試してみると自分にあった設定が見つかるかもしれません。
また、デフォルトから変更しているのは、「高感度ノイズ低減」の設定。この初期設定は「標準」です。D3Xでは、ISO100の状態ではノイズリダクションはかからず、感度を上げるごとにノイズリダクションが強く働く仕組みになっています。でもD800は設定が「標準」のままだと、ISO100でもノイズリダクションが若干かかってしまうのです。ノイズリダクションが働くと画像の鮮鋭さが僅かに失われてしまうので、せっかくの高画素も意味が薄れてしまいます。ですから高精細な画像を求める方は、ノイズリダクションの設定は「しない」に変えたほうが良いのではないでしょうか。

逆に「微妙なノイズも気になる」という方は、「標準」のままでも良いかもしれませんね。

そうですね。ところで今ノイズの話をしましたが、「とにかくノイズが気になる」という方って意外と多いですよね。私個人としてはノイズを「悪」としてしまうことに、少し違和感を感じています。写真を完全なノイズレスにしてしまうと、とても不自然な印象になってしまうからです。本来ありえないカラーノイズなどは問題外ですが、ノイズが若干加わることによって、立体感が強調されたりするのです。
逆にノイズを加えたりするデジタル処理もあるくらいなので、良質のノイズであれば消さずに残し、解像感や空気感を活かした方が良いのではないかと私は考えます。