Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.14 フラッグシップにふさわしい新次元の完成度 - Nikon D4。

3.D4で変わるワークフロー。

快適な高速通信を可能にする、進化したWT-5。

ワイヤレストランスミッター WT-5とD4装着時
ワイヤレストランスミッター WT-5

今回、D4と同時発売となったWT-5にも注目されているとのことですが。

WT-5は、撮影した画像をパソコンに無線で転送するワイヤレストランスミッター WT-4の後続機なのですが、大幅に小型化されています。WT-4は電池も送信系の回路も本体に内蔵。さらに有線もサポートしていたので、ボディが大きくならざるを得なかったのです。またカメラとはケーブルで接続しなければいけないなど、使いにくい点もいくつかありました。
対してWT-5は無線に特化し、送信に必要な一部の機能をD4側に入れ、また電源もD4から供給されるようになっています。コンパクトになった分、カメラに直接接続できるので、撮影途中にケーブルが外れるといった心配もなくなりました。ただそのために、今のところD4専用なのですが…。

有線LAN接続端子。

他機種のユーザーで、これを使いたいと思う方は多いでしょうね。

構造上D4以外の現行のカメラでは対応が難しいので、これから出るカメラに期待ですね(笑)。
ところでWT-5はコンパクトなだけではありません。私が最も注目しているのは、「新しく搭載されたHTTPモードによって、最大で5台のパソコンやタブレット端末、スマートフォンから撮影画像を確認できるようになった」という点です。
画像の閲覧にも特別なソフトは必要ありません。無線LANの設定をするだけで、WEBブラウザ(サファリ)でリアルタイムに画像を確認できます。
また通信規格として従来のIEEE802.11a、b、gに加え、11nを新たに採用しているので、通信速度も高速化し、リアルタイムにRAW画像をパソコンへ転送(※)することも可能です。
(※転送はパソコンのみ)

有線でパソコンに送ることはできないのでしょうか?

それは、D4本体に内蔵している有線LAN接続端子を使って行います。
直接カメラをパソコンと繋げてられますし、転送スピードも安定性も有線の方が優れているでしょうから、スタジオ内であまり動きまわらず撮影する場合は有線が良いでしょう。ただ通信規格が100BASE-TXですよね。安定しているという点ではよいかもしれませんが、できれば1000BASEにしてもらいたかったという不満も少しあるのですが…。
とにかく、これらのネットワーク機能を使い、一度このようなワークフローを構築すると、仕事を遂行する仲間意識が高まりミスも少なくなります。

タブレット端末による情報共有で、撮影も効率化。

例えばどのようなワークフローが考えられますか?

普段から撮影画像をパソコンに飛ばし、編集者やデザイナー、クライアントに確認をしてもらいながら作業を進めているという方もいらっしゃるでしょう。でも一人がパソコンの前に座ってしまうと、他の方が見づらいですよね。また、スタイリストやヘアメイクの方は、撮影にも立ち会いますが次の撮影準備などにとりかからなくてはなりません。こうなるとモデルの状態や撮影の進捗状況がわかりにくい状況がうまれます。そんな場合は、状況を把握してもらいたい何名かに、タブレット端末やスマートフォンを渡しておくとよいでしょう。

HTTPサーバーモードを使った、スタジオでのシステム例
  • 撮影後すぐにPCでの作業が必要な場合は、PCから接続すると撮影した画像の中から選択した画像をPCにダウンロードすることができます。
  • スタジオ内の他の関係者も、スマートフォンやタブレット端末からWebブラウザ(Safari)でリアルタイムに写真が確認できます。(スマートフォンやタブレット端末等は閲覧のみ可能)
  • ※最大で同時に5台の端末からログインできます。撮影は1台の端末のみ可能です。
撮影した写真をその場ですぐに確認。

なるほど、現場に関わる人全員が、仕事の状況を確認・認識できるというわけですね。

現状として、フォトグラファー以外の関係者は、撮影現場にいても実際にどのようなカットが撮られているかわからないというケースがほとんどではないですか?またWT-4のようなワイヤレストランスミッターは以前からあるものの、「通信速度が遅い」「事前の設定や、現場でのセッティングが手間」などの理由から、使ったことがないというフォトグラファーも少なくないはず。
でも「D4」+「WT-5」+「パソコンやスマートフォンやタブレット端末」によるシステムによって、これらの問題はかなり解消されるのではないでしょうか。
デザイナーや編集者からすると、スマートフォンやタブレット端末で手軽かつリアルタイムに画像を確認できれば、「ここを、もっとこう撮って欲しい」というように、フォトグラファーに具体的な指示が出しやすいですよね。結果、編集者のイメージに近いカットが早く撮れ、無駄なカットが減る分、撮影時間も短縮できると思います。

タブレット端末で一覧表示。
サムネイルをタッチすると拡大表示される。
スマートフォンで閲覧している状態。
三浦健司氏

指示する側にも、フォトグラファー側にも良いわけですね。

撮影の最中、周囲の人に撮った画像を確認したいと言われ、その都度カメラの液晶で見せる、といったことがよくあります。
でもフォトグラファーとしては、リズムよく撮っているのにたびたび中断されるのは、とてもストレスになるのです。特にキャリアの長い方ほど「きちんと撮っているのに、もっと信頼してまかせて欲しい」という気分になるのではないですか?こういったストレスを減らすためにも、このシステムは有効だと思います。撮影にはメンタルな部分も大きいですから。
それから危険な現場など、一度しか行けない場所で撮影するケース。しかもあまり時間がなかったりすると、どうしてもミスが起こりがちです。そんな時も編集者にスマートフォンやタブレット端末で確認してもらいながら撮影できれば、短時間で的確なカットが撮れ、撮影漏れもなども防止できるのではないでしょうか。

人物撮影の時も、良いのでは?

どのように写ったか、非常に気にする人もいますからね。その都度大きな画面で見せてあげれば安心します。
またオフィスなどに出向いて撮影をしたところ、人物の背景に写してはいけなかったものが写り込んでいた、などという経験をした方もいらっしゃることでしょう。その場で全員できちんと確認できれば、制作後に差し替えなどというトラブルは避けられるはずです。
特にフィルムの時代、フォトグラファーの技術はクローズされたものでした。それは個人の中にあってオープン化されず、現像されるまで外からは何も口出しできない。でも個人の作品作りでない以上、撮影結果はリアルタイムでオープンになったほうが、効率的に仕事が進み、良い結果も得られるように思います。とくに人物やブツ撮り撮影での効果が高いと思います。

今回、スマートフォンやタブレット端末が使えるようなったのがいいですね。

スタジオ内で限られたスタッフで作業するなら、デスクトップパソコンやノートパソコンでも良いでしょう。でも屋外の場合、撮影した画像を常に確認するのは、軽量なノートパソコンであっても結構大変です。その点スマートフォンやタブレット端末なら手軽に見られますよね。
仕事の道具として考えれば、「非常に高価」というほどのものではありません。例えばスマートフォンやタブレット端末を2~3台使用し、情報共有したい現場では関係者に渡して撮影を行うことで、仕事の運びもスムーズになると思います。

スマートフォンやタブレット端末は、閲覧できるだけですか?

閲覧に加えスマートフォンやタブレット端末からD4のシャッターを切る撮影も可能です。 これまでもパソコンから「Camera Control Pro」などを使って撮影することはできました。でもそのようなソフトがなくても、露出やホワイトバランスなどの選択から、ピントを合わせの指示、そしてシャッターを押すまでの一連の作業を行うことができるのです。
撮影&ビューアーでログインし、表示された画面でピントを合わせたい場所をタッチ。するとそこにピントが合います。後は画面のシャッターボタンを押すだけです。
例えばファインダーが覗けないような高い位置。あるいは少し危険な場所。このような状況でも、カメラを設置できれば離れたところからシャッターが切れます。
またスマートフォンやタブレット端末などでコントロールする時は、ライブビューモードになるため無音撮影も可能です。撮影画像は小さなサイズになってしまいますが、動物などの撮影にも使えるのではないでしょうか。

タブレット端末の撮影画面。露出やホワイトバランスなどの設定も行える。
ピントを合わせたい場所にタッチした後、シャッターボタンにタッチして撮影。
スマートフォンからも撮影可能。

D4でビジネスにも新展開を。

スマートフォンやタブレット端末での設定手順

実際に拝見すると、D3とWT-4の組み合わせに比べ、随分手軽になった印象です。

D4は、ネットワークで活用することをかなり意識しているように思います。ですから撮影画像の閲覧だけであれば、すぐに前述のようなシステムが構築できるわけです。若い方はもちろんデジタルはさほど得意ではないというフォトグラファーの方でも、スマートフォンやタブレット端末を使ったワークフローを作ることで、新たな顧客の開拓や仕事の幅を拡げることもできるのではないでしょうか。
仮に自分でスマートフォンやタブレット端末などを持っていなくても、アートディレクターやデザイナー、クライアントで持っている方は多いですよね。撮影現場に持ってきてもらい、その場で設定。すると、その方のスマートフォンやタブレット端末でもリアルタイムに画像を確認できるようになります。さらにその設定は記録しておけますので、次回からは細かな設定は必要ありません。
このシステムでスムーズに仕事が進めば、特にデザイナーなどは「別の仕事でも、このように速く簡単に仕事が進められるフォトグラファーと組みたい」と考えられる方もいるでしょう。実際に私がWT-4を使い、撮影画像をパソコンに送るシステムを組んだ時がそうでした。これはフォトグラファーにとって、大きなアドバンテージになるはずです。

スマートフォンやタブレット端末での設定手順

スマートフォンやタブレット端末の「設定」の「WiFi」をオン。「WT-5」が認識されたら選択。
ブラウザ(Safari)を起動し、指定のURLを入力。さらにIDとパスワードも入力し、ログイン。
撮影か閲覧かを選択。
D4の画が表示される。
三浦健司氏

ただ、「すでにD3を持っているので、D4の導入はどうしようか」と考えている方も少なくないのではないでしょうか?

D3は良いカメラですから、こだわって使い続けるのも悪くはないと思います。でもカメラはすでに、単に写真を撮るためだけの道具ではなくなっています。
紙媒体もWEBも過当競争が年々激しくなっており、以前にもまして現場には、クオリティに加え効率性が求められています。このような状況に、いかに対応していくか。これこそ今のフォトグラファーに突きつけられている命題ではないでしょうか。
D4は、このような問題に対する一つの解答を出してきた、まさにデジタル時代のプロのためのカメラといえます。そしてそのようなカメラを徹底的に使い込んでこそ、プロとして高く評価されるのではないかと思います。おおいに活用してほしいですね。
繰り返しになりますが、一つの制作物に対し撮影現場で主要メンバーが随時情報を共有し、状況を確認し合いながら仕事を進める。仕事のクオリティもスピードも上がると思うのですが、いかがでしょうか?

意識の切り替えが必要になってきているということですね。

写真の質が同等であれば、そのようなワークフローが組める人と組めない人とでは、仕事をする上で評価が異なってくることは容易に想像できることと思います。
また、優れた撮影テクニックを持っていても、このような新しい技術を敬遠しているために、その「腕」を活かす機会を失うかもしれません。
今、最新テクノロジーに関しては、クライアントの方が詳しいなどというケースがよくあります。とにかく、さまざまなケースに対応できる新たな知識とノウハウを持つことも、今のフォトグラファーには必要なのではないでしょうか。

インタビューを終えて・・・

「デジタルカメラは、また新しい時代に入ったのでは」。そんなことを考えながらお話をうかがっていた今回のインタビュー。機能ごとの数値でアピールする時期は終わり、シビアに撮影結果が問われる、そんな高い次元に踏み込んだ気がします。
さらにニコンの提案する、ネットワーク時代の撮影ワークフロー。かつてパソコンが単体使用からネットワーク対応になったことで劇的にビジネスが加速したように、同様のことが今デジタルカメラにも起ころうとしているのかもしれません。「本来商業写真の仕事とは、チームで行うもの。一人で作品制作を行うアーティストでない以上、フォトグラファーも積極的に仕事に関わる人たちと画像共有することでコミュニケーションをとるべき」と語る三浦さんに、あらためてプロの視点を感じました。

プロフィール

三浦健司氏

三浦 健司 みうら けんじ

1999年より本格的なデジタル撮影を始める。撮影や画像レタッチに関する著書や共著多数。日本や韓国などで多くのセミナー講師を務める。得意分野は「食」「手仕事」「桜」「いけばな」。現在(2012年1月号より)コマーシャルフォトにて「早ワザ・ライティング」連載中。

近著

京都吉兆

「京都吉兆」講談社インターナショナル 英語版 日本語版 
著者: 徳岡邦夫
写真: 三浦健司

この本は、撮影時に画像転送を行うことで撮影ミスの軽減とシューティング期間の大幅な短縮を可能にした一冊です。表紙及び本文中の写真は、すべてCapture NX 2にて調整。
協賛:ニコン

閲覧に際してのご注意

当コンテンツでは、作者の制作意図を尊重し、作品に対して一切の修正を加えずに掲載しております。そのため、一部に不快な印象を与える表現が含まれている場合があります。これらの表現が弊社の意図によるものではないことをご理解の上、特にお子様の閲覧に際しましては、充分なご注意をいただきますようお願いいたします。