Nikon Imaging
Japan
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vol.13 最新技術が凝縮された次世代プレミアムカメラ・Nikon 1。

3.あらゆるシーンでプロをサポートするニコン。

プロの目から見た、Nikon 1の評価。

中井精也氏

反対に、今後検討してもらいたい点などはありましたか?

気になったのが、電子ビューファインダーのアイセンサー。ファインダーをのぞくと自動的に液晶モニターが消え、ファインダーから顔を離すと液晶モニターが表示される仕組みなのですが、センサーが過敏なのか、ストラップなどがセンサーに掛かっただけで液晶モニターが消えることもあります。ファインダーの切り替えは、手動でも行えるといいですね。
無理な姿勢で撮らなければいけない時に、液晶モニターが消えて困ったことがありました。

コンパクトな分、自由なアングルで撮ることも多いでしょうからね。

そうですね。それから、普段D3Sを使用しているので、D3Sと同じようなイメージでレリーズ優先でも撮影できると良いですね。
とにかくピントよりもシャッターチャンス優先。これもスナップカメラには重要なポイントかと思います。一般の方にとってはさほど必要ないかもしれませんが、せめて上位機種のV1にはこの機能をつけて欲しいですね。

レンズについてはいかがでしたか?

コンパクトであることを考えると、非常に良いのではないでしょうか。開放で使うことが多いのですが、描写力もしっかりとしていて、今のところ特に気になる点はありません。もともとニコンは、D5100のような一般向けカメラのレンズもクオリティが高く、その点は期待通りでした。
ただ、今回V1と組み合わせた10-100mmレンズは、サイズがちょっと大きかったかな。せっかくボディが小さいのに、もったいない気がします。ズームレンズのコンパクト化にも、さらに取り組んでいただきたいですね。

それからこれは希望ですが、より広角のレンズもあるといいですね。CXフォーマットでは、10mmのレンズでも35mm換算すると27mm相当になるので、できれば18mm相当のレンズがあると、より撮影シーンが広がります。

110mm(270mm相当)で光る葉を前ボケさせれば、まるでイルミネーションのように。
ニッコールレンズのボケ味は秀逸。絞り開放で、紅葉をとろけるようにボカして。
10mmの単体薄型レンズでハマナスの実を立体的に再現。画面四隅までシャープな描写だ。
開放値がf/2.8の薄型レンズ10mmは、暗い車内撮影などの厳しい条件でも実力を発揮。

中井精也氏

いろいろお話を伺って来ましたが、プロの目から見た総合的な評価はいかがでしょうか?

基本的には、ニコンのハイエンド一眼レフカメラのように「仕事で使う」といったコンセプトのカメラではありません。メインターゲットは、プロではなくアマチュア。それも一眼レフカメラ初心者の女性をかなり意識した作りになっているように感じました。
しかし、その性能に妥協なし。一眼レフに迫る機能を持ちながら、いつも気軽に持ち歩けて、楽しい使い方もできる。ニコンが満を持して発売したカメラだけあり、総合的なバランスで僕は高く評価しています。そうでなければ2台も購入しませんよね(笑)。
現在、主に「1日1鉄!」など日常のスナップ用として使っていますが、プロユースにも耐えうるポテンシャルのあるカメラだと思います。

J1とV1、一台ずつお持ちなのですね。

そうです。J1が先に発売されたのですが、真っ先にピンクのボディを買いました。ややもすると安っぽく見えがちな色ですが、意外と質感やディテールに凝っていて、良い意味で注目されます。
パーティなどに持って行くとそれだけで人が話しかけてきますし、カメラ談義に花も咲きます。Nikon 1には、そんな効果もありますよ(笑)。

プロとして、ニコンを選んだ。

中井精也氏
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

中井さんは、最初からニコンをお使いだったのですか?

初めて一眼レフを使ったのは小学生の頃です。父親が使っていた他社のカメラをもらったのがきっかけで、それからずっとそのメーカーのカメラを使用していました。
ニコンを使い始めたのは比較的最近。D3とD300が出てからです。

ニコンへ切り替えたポイントはなんだったのでしょう?

他社を使用していた当時、気になっていたことがありました。それは16-35mmや70-200mmといったレンズで、中央のピントはあっていながら、レンズの端が流れるといった点。それが常にそうなるわけではなく、不定期にそのような現象が起こっていました。非常によく使うタイプのレンズだったため、しかたないので同じカメラとレンズを2セット用意して同時に撮影し、写りの良い方を採用するなど、対策に苦慮していました。
ところがある日、ニコンのカメラを借りて撮ったところ、一発でよく写るわけです。それで「今までやっていたことはなんだったんだ?」となって(笑)。それまで他のメーカーに乗り換えるなどということは、全く頭にありませんでした。でもニコンなら1台できっちりとした画が撮れるから、2台買うならもう1台で違う画が撮れるなと(笑)。
それにナノクリスタルレンズを使った14-24mmの描写力は、かなり衝撃でした。ナノクリスタルではありませんでしたが、200-400mmのズームもかなり気に入り、これはもう替えるしかないと。

それにしても、かなり思い切りのいる決断だったのでは?

でもそれは仕事の道具ですから。良い仕事をするために、良い道具は必要です。設備投資として考えると、例えば工場ともなれば数千万円の機械を導入することもあるわけでしょう?
それに昔と違って、本体に数本のズームと300mm f/2.8くらいでほとんど済んでしまうので。

カメラの印象はいかがでしたか?

写りはもちろん素晴らしかったのですが、なんといってもD3の質感に惹かれました。持った時のホールド感というか…。こんなこと他のフォトグラファーの方やカメラ愛好家の方が聞いたら驚かれるかもしれませんが、正直それまで僕はカメラ自体に全く興味がありませんでした。カメラは良い写真を撮るための単なる道具でしかなかったのです。でもD3と出会い、初めて「これが欲しい」とカメラに愛着が持てたんです。同時に、メーカーによってカメラはずいぶん違うんだ、とも…。当たり前のことなんですが…(笑)。

人々の夢にフォーカスする旅。

最後に、あらためて「DREAM TRAIN」についてお聞かせください。実際に旅を始めてみて、いかがでした?

お父さんの夢を追い、運転士を目指す車掌さん。
夢は「自分の牧場を持ちたい」という高校生。

19日間鈍行列車を乗り継いで、でもそうそうドラマチックなシーンに出会うことなどないと思うじゃありませんか?ところが、初日からいろいろとサプライズがあって…。
北海道に行ったときは、「牧場をやりたいという人にでも出会えたらいいな~」と思っていたところ、本当に出会えてしまったんです(笑)。
若くして亡くなったお父さんの「運転士になりたかった」という夢を引き継いで、現在運転士を目指している女性の車掌さんとか。まるで作られたような話でしょ?(笑)
この旅に出なければ知り合えなかった、一見「普通の人々」。でも一人一人のバックにあるドラマが劇的で、毎日感動しながらシャッターを切っていましたよ。
撮り方としては、趣旨をお伝えしパシャパシャ撮るだけなのですが、そんなシンプルなコミュニケーションが逆に良いものを生み出してくれるのではないかと考えていました。

飯山線(長野県)の線路に架かる虹。

でも、皆さんが快く撮らせてくださるわけではなかったのでは?

東北では、10人声をかけて2~3人ほどしか撮影できませんでした。決して迷惑そうに冷たく断られるわけではないのですが、突然声をかけられて驚かれた方も多かったのでしょう。
学生さんたちは比較的快く撮らせてくれたものの、年配の方から夢をお聞きするのが難しかったですね。もちろんそういう時には、カメラを向けるようなことはしません。あるいは車内が混んでいて、撮らせてもらうことでその人が浮いてしまうような状況などでも、モデルをお願いすることはありませんでした。そんなわけで、ぜひ撮ってみたいという方がいても断念せざるをえないケースも多々あり…。
撮影を断られることが続いて、少し落ち込んだこともありました。そんな時、線路の上に鮮やかな虹が現れたりしてね。初めて10分間も泣きながら虹を撮りました。まるで誰かが僕のこの活動を、応援してくれているような気がして…。

中井精也氏

この活動の成果は、どちらかで拝見できるのでしょうか?

まず、毎日「1日1鉄!」のブログで旅の様子を公開しています。
旅を終えましたら、正式にまとめたものを出版する予定ですし、またどちらかのギャラリーでも作品を発表しようと考えています。
自分の中で100%明確な目的のもとに始めたわけではない、この旅。でもだからこそ最後の枕崎に行くまでに、自分が思ってもいなかったような何かが見えるのではないかと期待しています。
それが楽しみですし、皆さんにもぜひそれをお伝えしたいですね。

インタビューを終えて・・・

中井さんも語られていたように、描写の精度だけでも、コンパクトさだけでも写せないシーンがあります。その両立のために新たな「CXフォーマット」の開発、新画像処理エンジン「EXPEED3」の採用など、「Nikon 1」は新ブランドにかけるニコンの意気込みが凝縮した一台になっているのではないでしょうか。
ところでインタビューの前日、中井さんのもとに三陸鉄道よりモニュメントが送られてきたそうです。チャリティー写真展「忘れ得ぬ東北・ふるさとの鉄道風景」で集めた義援金に対するお礼とのこと。
この写真展は、何度も訪れた東北の地が震災で多大な被害を受けたことに心を痛めた中井さんが、日本鉄道写真作家協会の会員や東北を応援する写真家たちと一緒に行ったものでした。
撮影する土地や人に、寄り添う視線で向き合っている中井さん。その場の空気をそのままに、軽やかにフォーカスできる「Nikon 1」は、中井さんにとってまさに感性にフィットするカメラだったことでしょう。

プロフィール

中井精也氏

中井 精也 なかい せいや

鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを
被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、
「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。

2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を連載中。
広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。
ニコンカレッジ講師。
社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)事務局長。
甘党。

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