Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.12 しあわせな気持ちにさせる、名畑流・子ども撮影術。

可愛らしい子ども写真に込められた、作家としての想い。

近年、独自の子ども写真により、国内外で高い評価を受けているフォトグラファー・名畑文巨氏。長年の経験でつちかった、子どもから極上の笑顔を引き出すテクニックについてお聞きしました。
また、子ども写真に込めた想いや、ニコンを使い続けている理由など、写真家としてのこだわりについてもうかがっています。

1. 独学から子ども写真のオーソリティへ。

アメリカ人の心をつかんだ、日本の子ども写真。

受賞作「Battle of the Natsu-yasumi」。

まずは「The Art of Photography Show 2011」の奨励賞受賞、おめでとうございます!あらためてこの公募展についてうかがえますか?

これは広告としての写真ではなく、あくまで作品としての写真の公募展でした。もともとはサンディエゴの町おこしから始まったものらしいのですが、年々応募者が増えていって、今年は世界72カ国から15,000点以上の作品が集まったようです。今回初めて応募したところ、約100点の入選作の中に私の作品も入り、さらに上位入賞者を発表するパーティがあるというので、先日までアメリカに行っていました。
結果は奨励賞でしたが、でもこの展覧会のポスター、私の作品をメインに使っていたんですよ!賞が発表される前にこのポスターを見たので「もしやグランプリか?!」と思ってしまいました(笑)。
展示会場のあるホートンプラザを運営するウエストフィールドは、カリフォルニアの中では少しアッパーな人達を対象としたショッピングモールということもあって、暗くシリアスな写真より明るく健康的な作品をポスターにしたかったのかもしれませんね。

公募展では暗いトーンの作品が多くなりがちなので、名畑さんの作品の明るさはひときわ目を引くでしょうね。

特にこういったアート系コンペに出品される作品は、そのような傾向にある気がします。もちろん社会のシリアスな側面をとらえることも重要。それが人の心や国を動かすきっかけになることもあるでしょう。でも私としてはポジティブなエネルギーというか、人々が幸せを感じる作品で社会を変えていきたい。そんな想いで子どもたちの笑顔を撮っています。

「The Art of Photography Show 2011」の様子。展覧会のポスター。
ギャラリー内展示風景。
授賞式。

何気ないきっかけから、子ども写真の追求へ。

名畑文巨氏

名畑さんは30年ほど前から子どもをテーマに写真を撮られているとのことですが、きっかけはなんだったのでしょう?

初めて勤めたところが子どものポートレートを専門に撮影する外資系の会社だったのです。固定のスタジオではなく、スーパーや百貨店の一角を借りて専用のシステムを持ち込み、イベント形式でやっていました。
今でこそ子ども専門の写真館は多くありますが、当時そのようなサービスはほとんどありませんでした。その先駆けだったのかもしれません。

写真を仕事にするということであれば、他にも選択肢はあったと思います。あえて子ども写真の世界に入られたのはなぜでしょう?

実はその頃、写真にそれほど強いこだわりがあったわけではなくて…。たまたま友達がその会社に入ったことを聞き、面白そうだったから私も就職したという…(笑)。でも、きっかけなんてそんなものでしょう。
だから写真学校などにも通っていないんです。基礎は、市販されている写真のテクニック本などを参考にしながら、自分で学びました。
もちろん師匠といった方はおりません。そのため、いつも試行錯誤の連続。作品を撮り、見た人から評価される中で、自分で学んだことの成否を確認してきた。そんな感じです。

撮りながら次第に子ども写真に魅せられていったということですね。

子どもを撮影していると元気になるんですよ。子どもってポジティブでしょう?大人になるとそれが少しずつ薄れてきますが…。
勤めていた頃、忙しいときは一日に100人ほど撮っていました。もちろん疲れるのですが、精神的な疲労はないというか、むしろ充実感を感じていましたね。気持ちのエネルギーをもらっていたのでしょう。
ところがしばらくすると、勤めていた会社が日本から撤退。そこで仲間たちと写真の仕事を始めたり、大きな写真館に勤めたり、その後も写真は続けていました。
とはいってもあくまで会社員という立場ですから、自由に自分の撮りたいものを撮れるわけではありません。そこで休みの日には自分でモデルを手配し、自らの作品制作も平行して行っていたのです。
そういった活動から生まれた作品が徐々に周囲からも評価されていき、その後独立。現在に至るわけです。

ネットを活用した、今どきのモデル募集法。

名畑さんの公式ホームページ。
※最新のブラウザでご覧いただくことをお奨めいたします。
Photographer Fumio Nabata Website新しいウィンドウで開きます

ホームページを拝見しましたが、非常に多くの広告で作品が使われていますね。

広告に使っていただくことは多いのですが、依頼されて撮り下ろすより、普段から制作している作品を提供するケースが大半です。
いつも子どものポジティブなエネルギーを表現したいと考え撮影しているわけですが、それを突き詰めていくと、余計なものを写さないとか背景をぼかすとか、そのような画作りになっていきます。
それが広告デザイナーのイメージにも合致するのではないでしょうか。

モデルはどのように募集しているのですか?

友人の子どもや知人の紹介など、一般のお子さんにモデルになってもらうケースが多いですね。それから今は、mixiなどでも募集をしています。実はネットからの応募が、意外と多いのです。
今やmixiは、一般の主婦の方もかなり利用しているでしょう。mixiには「我が子を撮ってもらいたい」といったパパママのコミュニティーもあるくらいで。そのようなところにモデル募集を告知すると、選ぶのが大変なくらい応募がきますね。
だから今は、モデルに不自由することはありません。

mixiを通じ、モデルになってくれた子どもたち。
友達を呼んでもらい、ご自宅で撮影。
こちらもご本人のマンションで撮影。

一般の子をモデルにすると、表情が硬かったりしませんか?

子どもの場合、あまりプロ・アマは関係ないですね。大人の言うことをきちんと理解して聞いてくれるのは4~5歳ぐらいからですから、それ以下の子どもにプロ意識は求められないでしょう。むしろモデルとしての良し悪しは、その子の性格や年齢によります。
私は主に5歳以下の子どもをモデルにしていますが、それこそ1歳違うと大違い。特に0歳から1歳は、一番脳の発達が顕著な時期ですよね。5ヶ月児と1歳児、わずか半年ほどの違いでも撮り方は変わります。
3歳から5歳くらいまでは、だいたい同じ。6歳は歯が生え変わる時期で、幼児を卒業し少年少女になってきます。そこからは私の対象外です。
撮っていて感じるのですが、一番ポジティブなエネルギーが強いのは5歳ぐらいまでなんです。そのころまでの子どもと接していて感じる「幸せの気持ち」が私の作品のテーマになっています。

親子が写っている作品もありますが、本当の親子なんですか?

本物の親子ですよ。だからお母さんも、もちろんプロのモデルなどではありません。
ちなみに衣装なども全て自前。ただ、ある程度指定はします。例えば、緑をバックに撮るような場合は映えるピンクの服だとか、パパやママは写ってもあまり目立たないようにシンプルな色にしてもらうとか。