Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.7 デジタル時代の新たなスピードライト・ニコンクリエイティブライティングシステム(CLS)

機材も撮影時間もコンパクトに。新ワイヤレス・ライティング術。

照明は撮影における最も重要な要素の一つ。しかし、特にスタジオ外の撮影で「時間が極端に少ない」「スタンドを立てる場所がない」といった厳しい事態に遭遇し、ライティングに悩んだ経験のある方は少なくないはず。
フォトグラファー・丹羽諭氏は、そのような問題をニコンクリエイティブライティングシステム(以下、CLS)で解消しています。時間もスペースもない状況でも、高品質な作品を生み出すコツは何なのか。実際の撮影を交え、独創的なライティング方法についてレクチャーをいただきました。
併せて、新製品の超広角ズームレンズAF-S NIKKOR 16-35mm F4G ED VRの使用感についても、作例をもとにうかがっています。

1.CLSが実現する、簡単かつ高精度なライティング。

出張先でもスピーディなライティングが可能。

丹羽 諭氏

丹羽さんは、現在主に医療関係の撮影などをお仕事にされているとの事ですが。

医療分野に関しては、看護師向けの教科書を作っている会社で雑誌の撮影を行ったのがスタートでした。今は毎日コミュニケーションズに籍を置きながら医療関係以外のジャンルも手がけつつ、看護師からドクター、病院経営者向けの書籍関連の仕事など、幅広く行っています。

では一口に医療関係と言いましても、撮影する物は多岐に亘るのではないでしょうか?

人物の撮影も、若い看護学生向けの雑誌では青年たちを明るく今風な雰囲気で撮り、病院の院長・理事長さんを撮る時は落ち着いた雰囲気とその方らしさが表現されるように撮ります。もちろん病院の施設や医療機器などの撮影もありますから、本当に様々です。
在宅医療がテーマの時は山間の個人宅に出かけ介護の様子を撮影した事もありますし、医療に関するインタビューで議員会館にもよく行きました。

必ずしも撮影しやすい場所ばかりでは無かったわけですね。

特にライティングには、いつも苦労をしました。
白黒の頃はまだ良かったのです。十分に照明のセッティングが行えないような場所でも、とりあえず1灯だけバウンスさせて撮り、後で明るく焼けば良かったので。ポジになってからは明るさに加え、色かぶりの問題も出てきました。明るさと色味のバランスを取るために、始終神経を使っていましたね。そもそも白が多い医療の現場。スピードライトの位置や光量を間違うと、すぐハレーションを起こしますから。
間接光で撮れば良いというのはわかっていましたが、ライトスタンドを立てられない状況が多かったので、その場に合わせていろいろ工夫しました。
それに、仮にライトスタンドを立てられたとしても、他の問題もありましたし…。

それはどのような事ですか?

政治家や企業の代表の方を撮る場合、時間が無いケースが多いのです。つまり、じっくりとセッティングが出来ないわけです。さらに、撮影には被写体だけで無く関係者も同席するので、部屋に人がすし詰めになる事も少なくありません。そんな状況の中、離れて設置したスピードライトを調整するのは、とても大変です。ライトスタンドは立てたものの、結局セットしたスピードライトが使えずに、1灯でバウンス撮影した事もありました。
このように、私にとって「厳しい条件の中で、いかに素早く適正のライティングを行うか」は長年の問題でした。それだけにニコンのCLSは、大変重宝しています。

Nikon D700 1/40秒 F7.1
Nikon D700 1/60秒 F9
Nikon D3 1/60秒 F13
Nikon D3 1/60秒 F9

どのような点が気に入られていますか?

まずなんと言っても、ワイヤレスで調光を行えるという点です。ワイヤレスという事であれば、一般的に使われている「スレーブ機能」もワイヤレスですが、もちろん調光はスピードライトごとに行わなければなりません。それにスレーブだけだとうまくシンクロしない時がありますから、結局ケーブルも併用することになります。でも狭いスペースでのケーブルは、セットが面倒な上に足に引っかけるなどして危険なので、あまり使いたくありませんよね。
CLSのおかげでセッティングが素早く出来、さらに余計な事に気を遣わず撮影に集中出来るようになりました。

CLSの基本設定。

では実際に撮影していただきながら、セッティングについて教えて下さいますか?

仮に「この部屋(約10m×4m)で人物を撮る」としましょう。
この規模の撮影でしたら、通常このバッグに収まる程度の機材で撮っています。
バッグにはカメラ、レンズ、スピードライト、ブラケットなどが入っています。
スピードライトは、現行のSB-900を2灯とSB-800を1灯。さらに私はスピードライトを発光させるコマンダーのSU-800も入れています。

いつも使用しているカメラバッグと、今回撮影をした部屋。

コマンダーは離れたスピードライトにワイヤレスで信号を送り、発光させるための機器ですよね。

そうですね。
SU-800の制御範囲外にスピードライトを配置した場合は、(右図)ニコン自体が推奨している使い方では無いので、あくまで自己責任で使っています。しかし、一度使ったら手放せなくなります。周りの写真家にも、この便利なコマンダー・SU-800による撮影を勧めているんです。

SU-800の制御範囲図。
SU-800の使用例
スピードライト使用。
スピードライト未使用。
左写真撮影時のセッティング。
被写体の、向かって斜め左後ろに配置。
専用スタンド。

今回、傘は立てないのですか?

まずはSB-900を2灯とコマンダーだけで撮影してみましょう。
それぞれのスピードライトに直接専用スタンドを取り着けます。
この部屋のように被写体の背後に本棚などがある場合は、1灯を取りあえずそのまま棚に置いてみます。
おそらくこのままで問題無いと思います。単に置くだけですから、後から位置を変えるのも楽です。スタンドなどを使用すると、簡単に位置を調整しにくい事は、皆さんもご存じの通りですよね。

アクセサリーシューにはコマンダーを取り付けていますね。

正面からは光を当てず、主にサイドから光を当てたい場合には、カメラには、スピードライトでは無くコマンダーを装着しています。
また、縦位置の撮影時にも、主にコマンダーを使っています。
SB-900では、スピードライトの角度の自由度が増しました。ですから縦に構えたカメラに合わせてスピードライトを回転させる事も出来るのですが、レンズの真上から発光していないので、わずかに余計な影が出る場合が有るのです。
かといってブラケットを使うと、かなり重くなってしまいますし…。自由に動きながら撮影するには、コマンダーを使用する方が良いのです。

コマンダーやスピードライトで、知っておくべき設定などはありますか?


2つほどあります。1つはグループ設定。複数のスピードライトを使用する場合、まずグループ分けを行います。これにより、そのグループごとに任意の調光が可能になります。グループはA、B、Cの3グループまで設定出来ます。

ここでは2灯を使用するので、棚のスピードライトをBグループ、手元に置くスピードライトをAグループに設定しました。
この時、設定したスピードライトのグループがA、B、Cいずれのグループに所属しているか、忘れないように注意して下さい。

SU-800のグループ設定例。
SB-800のグループ設定画面。
SB-900のグループ設定画面。
セットの状態。
コマンダーの設定画面。

もう1つの設定は何でしょうか?

もう1つは調光モードと補正量です。調光モードは、初期設定では「i-TTL」になっています。ご存じの通りTTL調光は、モニター発光による被写体からの反射光をカメラの調光センサーが受けて最適な発光量を自動設定するという調光方法ですが、「i-TTL」は従来のTTLよりもさらに精度が高いようです。
ですから基本的には、TTLが0(補正無し)の状態で使用しています。ですが光量が足りない時などには、この画面でグループごとに光量の補正を行います。

精度を損なわない、高速セッティング。

スピードライト2灯とコマンダーによる撮影状況

どの位置から撮影されますか?

今回、人物の正面から少し距離を取って撮影してみましょう。手元にはマスターのスピードライトになるSB-900(Aグループ)を置きます。配置の際は、スピードライトのセンサー窓が必ずコマンダー側に向くように置いて下さい。
ただし、必ずしも前面に配置しなければ、調光しない訳でも無い様です。どうしても前に置けず、ほとんど真横、あるいは若干後ろに置いてみた事もありましたが、その時はきちんと光りました。周囲の壁などに反射して、うまくコマンダーからの光を感知したのでしょうね。これはやってみないとわかりません。
セットしたら、とりあえず撮ってみます。1~2枚撮れば、光の状態などがわかりますから、それを見て調整を考えます。

SB-900受光部。
センサー窓を確認。
撮影状況。

露出計は使わないのですか?

特に使わなくても大丈夫。要するにイメージ通りの写真が撮れれば良いわけですから。

写真1:
1/60秒のF5.6で撮ったらかなりアンダー気味でした。

写真2:
F4にしてみました。
これなら光量的には最低限問題の無いレベルかと思います。

写真3:
これでもちょっと露出が足りないと感じたら、例えば感度を上げてみてもいいですね。ISO400で撮っていたところを、ISO800に変えました。これで試し撮りは3枚。

写真4:
逆にちょっとオーバー気味になったので、さらに微調整します。4枚試し撮りをして、これで露出は決定です。
光も、ちゃんと全体に回っていますよね。

写真1:ファーストショット。
Nikon D3S
ISO400 1/60秒 F5.6
写真2:2枚目20秒後。
Nikon D3S
ISO400 1/60秒 F4
写真3:3枚目50秒後。
Nikon D3S
ISO800 1/60秒 F4
写真4:70秒後 完成。
Nikon D3S
ISO800 1/60秒 F4.5
露出を確認。

スピードライトのセットからここまで5分弱でした。しかも解説をいただきながら。あまりのスピーディさに、ちょっと驚いています。

例えば被写体の人が部屋に来られるまでに、同行している編集者などに撮影位置に座ってもらってスピードライトの配置場所を決めておけば、さらに時間短縮出来ますよね。
取材撮影で、忙しい社長さんなどの場合、「撮影を5分で終わらせて欲しい」などと言う要望があります。多忙な方の撮影にこのシステムを活用すると、大変喜ばれます。