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vol.6 プロの常識を変える・Nikon D3S

3.表現と仕事の幅を広げる、D3S。

イメージをダイレクトに反映させる、各種機能。

表現に関するモードで活用されている機能はありますか?

D3の時から私が常用しているのは、アクティブD-ライティング。
マルチパターン測光と組み合わせて、ハイライトの階調を生かした露出を決定してくれる機能です。これにより白のとびを抑え、黒のつぶれを防いでいます。

最初、使い方が解からず強めに入れて失敗したので、使い慣れない方はます「弱め」に入れる事をお勧めします。おそらくそれで十分目的を果たすのではないでしょうか。

Nikon D3S
AF-S NIKKOR 400mm F2.8G ED VR
ISO 3200 1/250秒 F2.8 アクティブD-ライティング:標準
Nikon D3S
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G(IF)
ISO 1600 1/400秒 F4 アクティブD-ライティング:標準
アクティブD-ライティング設定画面。

瀬戸 秀美氏

表現という事では、先日、瀬戸さんの多重露出を使った作品を拝見しました。D3Sでも多重撮影をされましたか?

私は以前から写真空間の中に時間軸を取り入れたいと思い、多重露出の作品も撮っているんです。D3Sは多重露出の機能も向上したので、よりイメージに近い表現を容易に出来るようになりました。
例えばこの写真。残像の面白さはもちろん、多重を美しく見せるためのポイントである背景の黒もきっちり出ています。このような写真が、露出などをカメラにまかせで撮れるというのが嬉しいですよね。
またここでは、連続撮影を使っています。連続撮影には低速連続撮影と高速連続撮影があるのですが、使い分けるとスピード感の違う表現が可能になります。

多重を頻繁に行うのであれば、BKTボタンに多重露出をセットしておくといいですよ。このボタンから多重露出と連続撮影枚数がセット出来ます。この写真は低速連続撮影で、枚数は5枚に設定しています。舞台の場合は、高速連写だと速すぎて残像が残らない時もあるので、低速連写がちょうど良いかも知れません。撮る前にダンサーの動きなどを想定しながら、どのような残像を表現するか、計算して撮影しています。
D3はシャッターを切るごとに多重設定がクリアされましたが、D3Sでは改善され続けて多重撮影を出来るようになりました。使いやすくなって、表現の幅も広がりましたね。

Nikon D3S
AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8G ED VR Ⅱ
ISO1600 1/250秒 F2.8
Nikon D3S
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G(IF)
ISO 3200 1/125秒 F4

瀬戸 秀美氏

ところで舞台上では幾人ものダンサーが交錯しますが、一人のダンサーを追う場合はまだしも、例えば二人のダンサーを追わなければならない場合はどうされていますか?

AF-Cを活用しています。
フォーカスモードをAF-C(コンテイニュアスAFサーボ)にすると、フォーカスはロックされず、シャッターを切るまでピントを合わせ続けます。
この機能を応用して、まずボディではフォーカスモードをAF-Cに設定します。さらにレンズ側ではピントの固定操作が出来る「フォーカスロックボタン」を使う事で、舞台のダンサー二人にそれぞれにピントを合わせる事が可能になります。
このような撮り方は、多くの人々がされているとは思いますが…。

大量撮影時に活きる、高画質なJPEG。

メモリーカードのダブルスロット。

なるほど。ところでひとつの舞台でも、ずいぶん写真の枚数が多くなるかと思います。データの記録はどのようにされていますか?

最近は紙だけでなくWEBの仕事もあるので、私はこのダブルスロットを活用しています。例えばメモリカードの記録を「同時記録」に設定して、片方をRAWで記録、もう片方をWEB用にJPEG(MやSサイズ)で記録しています。
紙の仕事の場合でも、スポンサーにはJPEGのカードを渡し、自分にはRAWを残す。そしてクライアントにサイズの小さなJPEG画像で確認してもらい、使用する写真が決まったらその写真だけRAWを渡す、などという事もできますよね。クライアント側でRAWの閲覧ソフトを持っていないケースも多いですし、重たい画像での確認は時間をロスしますでしょう。これなら手間無く速く仕事が進むので、大変便利です。

昔はメモリが不安定だったから、メモリエラー対策として両方のメモリに高画質のデータを記録していました。最近ではエラーもずいぶん減ってきたので、より効率的に仕事を進めるために、このような使い方をしています。

普段はやはりRAWでの記録が多いのですか?

今はひとつの例としてRAWの話をしましたが、最近ではほとんどJPEGで記録しています。今はJPEGでも十分に良い画像が撮れますから。RAWは要らないと言う人もいるくらいです。カメラがそれだけ進歩したという事でしょう。そもそも1回の舞台に膨大な量を撮るわけですから、それをRAWで撮っていたら後々大変な事になります。

もちろんRAWの良さは十分解かっています。しかしこれは仕事ですから。状況と照らし合わせてフォーマットも考えるべきです。
「RAW神話」と言いますか?、いまだに「とにかくRAWで撮れば、多少悪条件で撮ってもなんとかなる」と思っている人が意外と多いようです。実際はそんな事はありません。やはりこれまでのように「きちんと撮影した上でのRAW」です。それに、そのような人はD3Sのような、最新のカメラで撮ったJPEGの画質をご存じないのではないでしょうか? 日進月歩のこの世界。少し前の常識はあっという間に変わってしまいます。

Nikon D3S
AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8G ED VR Ⅱ
ISO 800 1/250秒 F3.2
Nikon D3S
AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8G ED VR Ⅱ
ISO 800 1/100秒 F2.8
Nikon D3S
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G(IF)
ISO 1600 1/250秒 F5.6

良い仕事をするためには、良いカメラが必要。

Nikon D300S
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)
ISO 1000 1/250秒 F2.8
瀬戸 秀美氏

40年近く舞台をご覧になってきて、変わったと感じる事はありますか?

今や日本人のダンサーは世界レベルになりました。世界中見て回っていますが、大きなカンパニーで日本人のいないところは無いんじゃないでしょうか。昔に比べてずいぶん業界も変わりました。世界中のバレエが日本にいながら見られますから。これはすごい事です。以前はクラシックの演奏会などもよく撮っていましたが、最近では雑誌などのメディアも増え、バレエだけでも仕事が出来るようになってきました。
しかしそれに比べて、日本において我々の仕事はまだヨーロッパほどに理解されていないのが現状です。
例えば舞台を撮る場合、我々は大抵、非公認です。劇場が公式に許可を出さないのは、我々が撮っていると客が真似して撮り始めないかという危惧があるようです。そんな事は絶対無いだろうけれど。
良い写真を撮れば、それがバレエの普及に役立つと我々は思いますが、劇場には劇場の考え方や立場がありますから、それは尊重しないといけない。
我々としても、より仕事を理解してもらえるよう、舞台関係の「舞台写真家協会」を作り、撮影マナーの向上などに努めています。マナーが悪い写真家には我々から注意などし、舞台撮影をとりまく状況をさらに良くできればと思っています。

瀬戸 秀美氏

後進の写真家の方々にアドバイスを送るとしたら?

カメラの性能が上がるのは大歓迎ですが、若い人にはあまり良くない事かも知れません。さして技術が無くても、そこそこの写真が撮れてしまいますから…。そのため、あまり努力しようとしない。でも「そこそこの写真」から「良い写真」にするためには、それこそ目をつむっていてもパッと操作出来るくらいに、カメラを使い込む必要があると思います。
例えば初歩的な事ですが、カメラを買ってきてそのまま使うと、大抵液晶上ではオーバー目に映ります。それを全く調整しないで使うから、PCに取り込んだ時、かなりアンダー気味の写真で驚く、などという事が起こります。
カメラの特性を熟知し、自分にとって使いやすいようにセッティングするくらいはして欲しいですね。

最後に、D3Sや最近のデジタルカメラについて一言お願いします。

先日、あるアマチュア写真家と話をしました。その人はD700で天の川などの天体を撮っているとの事。そこで、「D700もいいが、絶対にD3Sにした方がいい」と勧めました。1回このカメラで星やオーロラを撮ってみなさい。高感度でさらにノイズも極端に少ない写真が撮れるから、と。このようなカメラの登場で、撮影のスタイルはこれまでと大きく変わると思います。これまでは三脚を立てねばならない状況でも、平気で手持ちで撮れるんですから。機材も少なくて済みますし!
我々プロフェッショナルの立場から言うと、特にプロとしてステップアップしたいという人には、できる限り良い物を使って欲しい。若い人たちを見ていると、あまりこだわりが無いように見えます。持つカメラやレンズからも、それがうかがえます。腕はもちろん、明らかにカメラの性能は仕事に影響します。極端な話、カメラで仕事が決まる事だってあると思いますよ。良いカメラを持って、良い写真を撮らないとクライアントだって離れてしまう。写真家にとって、今はカメラの性能のウエイトが大きな時代なのではないでしょうか。

Nikon D3S
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 200-400mm F4G(IF)
ISO 1600 1/125秒 F4
Nikon D3S
AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8G ED VR Ⅱ
ISO 640 1/80秒 F3.5
瀬戸 秀美氏

インタビューを終えて・・・

プロとして仕事をしていれば、難しい状況で撮影しなければならないケースも少なくないはず。しかし、悪条件の中でも質の高い作品を撮る事ができれば、写真家としての信用は上がり、仕事の幅も広がります。
その点、40年近い舞台撮影のキャリアを持つ瀬戸氏をサポートしているD3Sは、厳しい環境下でも高画質を実現。さまざまな状況に対応出来る本機は、本当の意味でプロユースのカメラと言えるのではないでしょうか。

プロフィール

瀬戸 秀美氏

瀬戸 秀美 せと ひでみ

1948年 福岡県に生まれる。

西日本新聞で報道写真に携わり、1972年から『週間オン・ステージ新聞』で舞台撮影(舞踊・音楽)を始める。
月刊『ダンスマガジン』、季刊『バレエの本』の創刊に関わる。
月刊『ダンスマガジン』にて表紙・グラビアを担当。
以来、朝日・読売・毎日新聞等や様々な雑誌で、バレエを中心に舞台写真を専門に活躍している。

1994年~1996年3月、朝日新聞に『ダンスの現場~魅惑のとき~』写真コラムを掲載。

写真展も数多く、『ジョルジュ・ドン「ボレロ」』展では「咽(むせ)かえる様なダンサーの臭いが立ち込めている」と絶賛された。

1997年から新国立劇場専属フォトグラファーをつとめている。
現在、日本写真家協会会員、日本舞台写真家協会会員

Photo Books

1993年「ファルフ・ルジマートフ」 写真:瀬戸秀美 (グッドホーププロダクション)
1996年「DANCERS」 瀬戸秀美写真集 (新書館)
1996年とんぼの本「これだけは見ておきたいバレエ」 写真:瀬戸秀美 (新潮社)
1997年「孤高の肉体 ファルフ・ルジマートフ写真集」 写真:瀬戸秀美 (ヒット出版社)
2000年「魅惑のとき BALLET DANCERS」 写真:瀬戸秀美 (あんず堂)
2006年ほたるの本「バレエの鑑賞入門」 写真:瀬戸秀美 (世界文化社)
2009年「バレエ名作ガイド」 写真:瀬戸秀美 (新書館)

Exhibitions

1994年「THE DANCER:瀬戸秀美バレエ写真展」 六本木 麻布美術工芸館
1996年「瀬戸秀美写真展 ジョルジュ・ドン「ボレロ」」 京橋 INAXギャラリー
1996年「ダンサー図鑑」 銀座 キャノンサロン
1998年「DANCERS」 銀座 富士フォトサロン

Group Exhibitions

1989年9月日本舞台写真家協会 第1回写真展より参加

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