Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.2 D700のポテンシャル

ハイスペックと実戦機能を両立したD700の魅力。

発表と同時に、カメラ業界の話題を独占したニコンD700。コンパクトなボディにフルサイズ(FXフォーマット)CMOSセンサーを搭載し、最上位機種D3に匹敵するスペックを実現。しかも実売価格はD3の約1/2というこのカメラの登場に、驚きと賞賛の声があがりました。
今回インタビューでうかがったのは、長年のニコンユーザーであり、徹底したデジタル画像機器の検証で各メーカーからも信頼の厚いフォトグラファー・鹿野宏氏。早速D700を導入された鹿野氏に、D3との類似点と相違点、さらには活用事例にいたるまで、広く深くお話しをいただきました。

1.D3からチューンアップされたD700のポテンシャル

「単なる廉価版」には収まらない、D700の個性。

D700を実際に使用された印象はいかがでしょうか?

すでに多くのメディアでも語られているように、D3の機能を継承した、兄弟のような機種だと感じました。おそらくD3とD700で撮影した写真を同時に見せられても、すぐに判断ができないほど、その画質はD3に肉薄しています。実売価格は倍以上の開きがあるのに、これはすごいことです。

それでも、D3より機能面で及ばない点もあるのではないでしょうか?

それはもちろんあります。例えば高速連写機能は、D3の秒9コマに対し、D700では秒5コマ。しかし高速連写はスポーツ、報道のフォトグラファーには重要かもしれませんが、僕らのようにスタジオ内撮影が多いフォトグラファーには、さほど必要ではありません。
シャッターの耐久性も、30万回レリーズクリアなD3に対し、D700は15万回。でもこの数字はニコンF6と同等、つまり十分に実用的な数字であり、このような点を抑えることでコストパフォーマンスの高い機種を造り上げることに成功していると思います。
耐久性を求められる現場ではD3。そのほかのほとんどのシーンはD700でカバーできるはずです。少なくともスタジオで使うには、十分の性能です。

D3の廉価版といった感じでしょうか?

いえ、その表現は必ずしも正しいとは言えません。
実際、そのように思われている方も少なくないかもしれませんが、画質などに関してもD3の基本性能を受け継ぎながら、解像感、色分離などはむしろ改善をされているくらいです。発売時期が半年ほどしか違わないのに、その進化の速さは目を見張るものがあります。
最初テストで借りたものの、一度使ったら手放せなくなり、さっそく買ってしまいました。

Niokn D3とNiokn D700。
鹿野宏氏

D3と同等の、驚異のダイナミックレンジと高感度。

まずD3から継承している点で、特筆すべき性能とはなんでしょう?

なにより、ダイナミックレンジでしょうね。
D3を初めて使ったとき、そのダイナミックレンジの広さに、ロケには最高のカメラだと感じました。難点をいうと、少々大きくて重い。これがもう少し小さくて軽かったらと思っていたところ、D700が登場したのです。

D700
D3の撮影結果と比較する。
ダイナミックレンジ検証データ。

何か具体例を拝見できますか?

先日、適正な露出で撮影を行うため、露出プロファイルを作成するチャートでD700のダイナミックレンジを検証してみました。
チャート上には1/6EV間隔で白から黒まで25のコマが並んでいます。これを撮影することで、一度に中間のグレーを中心に±2EVの濃度を確認することができます。
今回はシャドウ部の階調を見てみましょう。通常、多くのカメラは-3か-4位でシャドウ部が飽和してしまいます。ですがD700の撮影結果では、-5でも潰れていません。この結果から見るに、おそらく-7以上でも階調を維持できると思われます。しかも画像処理ソフトでここからシャドウをかなり持ち上げても、ノイズが出てこないのです。
つまりハイライトさえ飽和させない撮り方をすれば、かなり暗い写真でも救うことができるというわけです。

しかもD3同様、高感度というわけですね。

D700の感度はISO100から25600相当まで設定が可能です。そのうちニコンではISO200からISO6400までを実用範囲としています。
ケースにもよりますが、確かにISO6400でも拡大しなければ使用に耐えうる品質を持っています。むしろノイズの少なさは、しばらく前のカメラのISO800以上かもしれません。例えばD300でも、ISO1600設定の撮影は少し厳しく、ISO800くらいが実用レベルではないでしょうか。同じ現行のミドルクラスでありながら、これほどまでに差があるのです。

鹿野宏氏
f/5.6 1/100秒 ISO6400で撮影。
f/8 1/1600秒 ISO320で撮影。
写真Bのヒストグラム。

気になるISO12800やISO25600といった設定での撮影はいかがでしょう?

常用には難しいでしょうが、それでも「これまで写らなかったものが写る」という点で画期的といえます。
ロケでは必ずしも理想的な光量を確保できるとは限りません。それがどんなに光の弱い状態でも、撮れてしまう。しかもそれが「しかたなしに撮った」というレベルの絵にならないというのがD700の素晴らしさです。

f/2.8 4.0秒 ISO200
f/2.8 2.5秒 ISO400
f/2.8 1.3秒 ISO800
f/2.8 0.6秒 ISO1600
f/2.8 0.3秒 ISO3200
f/2.8 1/6秒 ISO6400
f/2.8 1/13秒 HI 1(ISO12800相当)
f/2.8 1/25秒 HI 2(ISO25600相当)

f/2.8 4.0秒 ISO200

f/2.8 2.5秒 ISO400

f/2.8 1.3秒 ISO800

f/2.8 0.6秒 ISO1600

f/2.8 0.3秒 ISO3200

f/2.8 1/6秒 ISO6400

f/2.8 1/13秒 HI 1(ISO12800相当)

f/2.8 1/25秒 HI 2(ISO25600相当)

  • [感度を変更して撮影した画像の比較]
    ISO200からHI 2(25600相当)までの画像。全てF値は2.8、手持ちで撮影。
    ISO800まではほぼ問題ない。ISO1600から6400までは、ノイズは増えはじめるものの偽色などもほとんどない良性ノイズ。HI 1(ISO12800相当)やHI 2(ISO25600相当)の設定では、さすがにノイズは目立ってくるが、フラッシュが使用できない、ごく微量の光しかない状況下でも撮影を可能にする。

フォトグラファーの負担を減らす、アクティブD-ライティングの活用法。

鹿野宏氏

アクティブD-ライティングについて、教えてくださいますか?

これは撮影した画像を解析し、ハイライト部の階調を生かしながら黒く潰れがちなシャドウ部を明るく再現して、見た目の印象に近づけるという機能です。D3はもちろんそれ以前からニコンのカメラに導入されていた機能なのですが、高感度かつダイナミックレンジの広いカメラでないと、かえって絵を壊しかねないのです。
その点D3やD700は、アクティブD-ライティングと非常にマッチしています。
とにかくこのカメラは、極端な話、ハイライトのセットアップさえして撮るならば、シャドウ部はいくらでもあげても構わないという性格を持っています。そのようなカメラはD3と700だけです。

この機能、D700になって変わった点はありますか?

従来は手動でレベル設定していたアクティブD-ライティングに、D700からは「オート」設定がつきました。
ロケなどの最中、シーンや被写体によってアクティブD-ライティングの強弱を変えて撮影するのは面倒です。そのため設定を「弱」から変えずに使い続け、結果「あまり効果がない」と思い込んでいる人も多いようです。しかし適正な設定が行われるなら、特にD3、D700においては非常に有効な機能なのです。
今回「オート」設定がついたことで、アクティブD-ライティングの機能を活かすことができるようになりました。

f/2.8 1/500秒 ISO320で撮影。カメラ任せでも『そこそこ』を自動で作ってくれるアクティブD-ライティングはありがたい。

どのようなケースで有効なのでしょう?

特に撮影数をこなさねばならない場合や、細かい後処理を行う余裕のない場合など、アクティブD-ライティングの恩恵にあずかれるのではないでしょうか。
もちろん現場で、都度きっちりと露出の設定ができるに越したことはありません。
しかし露出を適正に調整した後でも、ファインダーの中に白い服を着た人や白い雲が入ってきてしまうと、結局後からの修正が必要になります。でもアクティブD-ライティングの設定をすることで、ほとんど直さずに使えるレベルの画が撮れてしまいます。これにより僕の仕事量も大幅に抑えられました。

実際にお仕事で活用されているのですね。

先日行った撮影では、アクティブD-ライティングをオートに設定し、古い街の風景を大量に撮りました。その際、RAWモードとJPEGモードの両方で撮影。もちろんJPEG画像は確認用だったのですが、クライアントにそのデータを見てもらったところ、そのままOKがでました。特に条件が変わる外での撮影、自分でライティングをコントロールできない条件下では大変ありがたい機能です。後処理の手間も省けたことはいうまでもありません。
このようなことが可能なのも、基本性能がしっかりとしているD700ならではといえます。