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vol.1 無線LANの活用

無線LANで変わる、デジタルカメラの可能性と仕事のクオリティ。

最近急激に注目を集め始めた、無線LANによるデジタルカメラからパソコンへの写真転送。フォトグラファー・茂手木秀行氏は、この技術に早くから注目。無線LANを使った独自のワークフローを構築し、仕事の効率化と作品のクオリティ向上に成果をあげています。今回、ワイヤレストランスミッターWT-4の魅力と無線LANシステムを活かした仕事術について伺いました。

1.仕事における無線LANのメリット

写真の無線転送は仕事に使えると即座に確信。導入へ。

茂手木 秀行氏

ワイヤレストランスミッターを導入されたきっかけは、なんだったのでしょうか?

早くからデジタルカメラを活用していたのですが、不満の一つがパソコンへの画像転送でした。とにかくデータをメモリカードからいちいちパソコンにコピーするのは、大変効率が悪い。重いRAWデータを数十枚から数百枚移すだけで、何十分とかかるのです。ことレンタルスタジオを使う際には、その時間がスタジオ代として跳ね返ってきますし。その他、データの安全面からもデータ転送は問題でしたね。

実際導入されたのはいつ頃ですか?

2003年、ニコンからワイヤレストランスミッターの最初の機種WT-1が出た時、データを直接パソコンに転送できるという話を聞いて「これは使える」と確信。カメラ一体型のWT-2が出たところで即座に買いました。想像通り非常に便利で、おかげで現在も効率の良いワークフローを構築できています。

すぐに使いこなせましたか?

実用にはちょっと時間がかかりました。なにしろその当時は無線LANが一般化していなかったので設定がよくわからず、特に私が主に使っているMacintoshに関する情報はほとんどありませんでした。そのため自分で設定から勉強しなければならなかったので、その点は苦労しましたね。

日々のスタジオワークで発揮される、無線LANのメリット。

茂手木 秀行氏

導入の時、どのような利用方法を想定されていましたでしょう?

ニコンとしてはおそらく外部での報道用途をメインに考えていたのでしょうが、僕は絶対にスタジオワークの手助けになると思っていました。逆に、最近になって外部でも積極的に使うようになってきた、という感じでしょうか。スタジオを前提としたのは、まずアクセスポイントをきちんと作れるかどうかが未知数だったので。例えば、大きなイベントでの報道用途だと主催者側がアクセスポイントを作ってくれますが、僕らのような雑誌の仕事では、自分でアクセスポイントを確保しなければならないですからね。

野外よりスタジオ内での撮影を重視されていたとは、思いませんでした。

実は、無線LANは狭いスタジオほどメリットが出るんです。撮影の際、狭いスペースがケーブルだらけになると必ず誰かがケーブルを引っかけて、時に機器を壊すこともあります。その修理代を考えると、無線LANシステムは安いものです。

無線LANのメリットは「安全性の高さ」と考えられたわけですね。

そうです。撮影における安全の確保は、重要な問題です。そのための工夫は常に行っています。例えばデジタルカメラとパソコンを有線で繋ぐと、ケーブルを引っかけてしまった時にカメラのコネクタに力がかかり大変危険です。カメラのコネクタ部はカメラのマザーボードと直結しているので、コネクタを壊すとカメラ全体の修理が必要になる場合もあります。

有線のシステム。無数のケーブルが危険を呼び込む。
無線LANのシステム。床を這う何本ものケーブルに気を遣うことなく、快適に撮影を行える。

意外と深刻な問題なのですね。

そうなんです。ですからWT-4を使う場合も、付属のケーブルではなくリトラクタブルケーブルを使っています。まず収縮自在のリトラクタブルケーブルでケーブルの長さを調整し、さらにカメラとケーブルの間に可動式のコネクタを仲介させます。ケーブルを引っかけても、引っ張られるのは可動式コネクタ。さらに引っ張る力が加わってもケーブルは可動式コネクタから外れるだけなので、カメラ本体にはさほど負担はかからないのです。中間コネクタは無い方が通信速度的には良いようなのですが、実際にカメラを壊した経験のある者から言わせてもらうと、こういった安全対策は必要ですね。

可動式コネクタ。
ケーブル長を変えられるリトラクタブルケーブル。
可動式コネクタにリトラクタブルケーブルを接続して、安全性を高める。

自動のダブルバックアップが、作業の効率と安全性の向上を生む。

茂手木 秀行氏

他にはどのようなメリットがありますでしょう?

安全面においてさらに重要な点として、「データのバックアップが容易」ということが挙げられます。無線モードで撮影する際、FTPモードに設定しておくとカードにデータが書き込まれたままPCに転送、つまり自動的にダブルバックアップが録れるというわけです。以前から僕は撮影後、必ずパソコンにバックアップをとるようにしていました。でもカメラからCFカードを抜く際に、カード自体が壊れることが意外と多かった。だからできるだけカードは抜き差ししたくないのです。今ではメディアが安くなったので、大容量のメディアを入れっぱなしにし、無線LANでパソコンに送るようにしています。

アクティブなロケ以上に、日々の撮影にメリットがあるのですね。

僕は随分長くデジタルデータを扱ってきたので、デジタル機器は必ず壊れるということが身を持って体験してきました。だからダブルバックアップは必須。そこに気を遣わなくて良いというだけでも、無線LANのメリットは十分あるといえるでしょう。今は機器の性能が上がりバックアップ自体も早くなってきましたが、それでも忙しい現場では面倒な作業の一つですからね。もちろんパソコンに転送することによって、今撮った写真をリアルタイムに大きな画面で確認できるということも、重要なポイントの一つですよね。

オープンロケでは事前に電源対策を。

他に何か注意しなければならない点はありますか?

先ほどケーブルに関する注意点などをお話ししましたが、パソコンとネットワークしたデジタルカメラをスタジオ外で使う際に最も重要なのは、電源対策でしょう。どこででも電源を確保できるよう、準備をしておく必要があります。例えば僕は約30Aの電源を供給できる独立電源セットを自作しました。これだと1日8時間のロケもOK。さらに晴れていれば、ソーラーパネルを接続して補充電を行うこともできます。ただし少々大きいため、普段から持ち歩くのは大変なんです。そこで今注目しているのが燃料電池。燃料電池もアメリカではすでに市販されているものもあり、今導入を検討中です。

独立電源セット。

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