Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

二神 慎之介

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インタビュー

私が追いかけているのは、野生動物が時折見せてくれる優しい表情です。たとえばヒグマなら川辺で鮭を捕える荒々しい姿のイメージが強いですが、落ち葉に埋もれて昼寝をしていたり、木々の合間をゆっくりと歩いていたり。森の中で出会う彼等は、なんとも言えない愛らしい表情を見せてくれます。地味な画かも知れませんが、そういった「森のヒグマ」を追いかけて北海道の森を歩き続けてきました。

森を歩く中で、被写体に出会えない時間も私にとっては重要な意味を持っています。木の幹に残ったヒグマの爪痕や雪の上の足跡、彼等が食べ残していったカラフトマスの死骸など、ヒグマの存在を伝えるものは森の中にあふれています。姿は見えないが、この森にクマはいる。そういった気配も、同時に写しとっていきたいと私は考えています。 またここ数年の間にクマを追う中で出会った、自然と向き合って暮らす人々や美しい風景、小動物などにカメラを向けることも増えてきました。羅臼の海で鮭を獲る漁師や、小さな体をめいっぱい膨らませて寒さに耐えるスズメたちなど、ヒグマと同じように自然と関わり合って生きる生命に深い魅力を感じています。

撮影活動と表現について尋ねられることが多いですが、どうも私は写真で何かを表現したいというより、自分が出会った情景を素直に伝えていきたいという思いの方が強いようです。その相手として常に念頭にあるのは子どもたちです。野生動物の素顔は、なかなか間近に見ることができません。もし私の写真を見た子どもたちが山や森の景色を見たとき、あの写真のクマたちがこの景色の中を歩いているのだと想像してくれたなら、撮り手としてこれに勝る喜びはないでしょう。遠くなりつつある自然と人々との距離を少しでも近づけるきっかけとなる仕事をしていきたいと思います。

「森のヒグマの素顔を撮る」。このテーマで撮影活動を続けることは非常に非効率です。体力的にも楽ではありませんが、それでも続けてこられたのはひとえにクマが好きだから、と言えるでしょう。クマに会う期待感を胸に抱いていれば、道なき森を歩き続けることにも、震える寒さの中クマの出現を待つ長い時間にも幸せを感じます。ヒグマとその周りを取り巻く自然や人々、環境。広く目を向けながら、その素晴らしさを伝えていく仕事を続けていきたいと思っています。

プロフィール

二神 慎之介 (フタガミ シンノスケ)

1977年生まれ、愛媛県出身。雑誌・広告への写真素材の提供や映画の劇中写真集等を担当。道東を中心に野生動物を追い、森のヒグマをメインの被写体に撮影活動を続ける。現在は東京在住。北海道と行き来しながら、本州の野生動物撮影にも取り組んでいる。

Webサイト
http://sinh11.com

写真展

二神慎之介写真展 ~Northern Colors~ 北海道の動物たち