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第六十五夜 AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)

静かなブーム到来、世界最小最軽量の高倍率ズームレンズ
AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)

第六十五夜は最近静かなブームとなっている、世界最小最軽量の高倍率常用ズームレンズAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)を取り上げます。少し前に「中古市場でED28-200Gが人気。ネットでも盛り上がっているぞ!」と友人知人から度々聞いておりました。また、このレンズについて是非教えてほしいと言うご要望もお聞きしております。実はこのレンズにも一夜では語りつくせぬ物語があったのです。このレンズは全ての限界に挑戦し、こだわりぬいた高倍率ズームレンズだったのです。今夜は、そんなブーム再燃中のAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)について、隠された秘密を探ります。

佐藤治夫

1、高倍率常用ズームレンズの始まり

第六十三夜でお話ししたとおり標準ズームの始まりが43~86ズームだとしたら、標準ズームはどのように高倍率化していったのでしょう。ズームレンズの発展は多種多様です。ワイドズームは凹先行型が優勢、テレズームは全長固定の凸先行が主流です。その狭間の標準ズームは混在型で、色々のレンズタイプが発明されました。王道は大きく分けて2本。そうです「大口径化への道」と「高倍率化への道」です。特に常用レンズとしての課題は2つありました。1つは最もスタンダードなレンズである50mm F1.4を念頭に、どれだけ明るくできるか、またもう一方は、広角から望遠まで一本で済ませたいという願いです。そんな使い手の自然な思いは、設計者の探究心と共鳴しました。高倍率への道は、35-70mmが35-105mm、28-85mmとなり35-135mm、35-200mmへと進化します。望遠側を伸ばすのであれば凸先行型が有利です。しかし広角化が難点でした。35mmを28mm、24mmにするにはどうしたらよいのか。無限遠だけなら設計できる。しかし、当時主流であった一群繰り出しの合焦では、前玉が巨大化する上に至近性能、周辺光量がもたない。巷の光学設計者は皆悩んでいました。そこに一筋の光が降り注いだのです。それがズームレンズの内焦方式(インナーフォーカス・IF)の発明だったのです。

御存じの方も多いと思いますが、基本的にズームレンズは変倍する群の前(物体側)で合焦をする必要がありました。さもないと合焦時に大きく焦点ずれを起こしてしまいます。この焦点ずれを許容したものがバリフォーカルレンズです。

そこに一筋の光。当時光学部第一光学課に在籍していた稲留清隆氏が、内焦カム方式という考え方を生み出しました。内焦カム方式を簡単に説明すると次のようになります。まず内焦の場合、各焦点距離で近距離合焦時の繰り出し量が異なります。たとえば、撮影距離2m時の合焦群の移動量が、28mm側では1mm、200mmでは8mmだとします。ズーミング中にピントずれを起こさせないためには、この差分、すなわち合焦群の移動量差をズーミングすると同時に補正すれば良いのです。そう考えた末にもう1本のカム、すなわち補正カムを鏡筒に刻むと言うアイディアを生み出します。稲留氏は第三十九夜でも登場したAF Nikkor 35-70mm F2.8の設計者です。良き兄貴分とでも言いましょうか、実に面倒見の良い先輩です。そんな時代の後押しもあり、高倍率ズームの広角端が28mm、のちに24mmに進化します。そしてAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)が開発されたのです。

2、開発履歴と設計者

AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)の光学系を設計したのは若かりし頃の私です。私はこの時期多くの広角・標準ズームの設計・開発を行いました。その中でもこのレンズは量産化に苦労したレンズでした。沢山の仲間、同志に支えられて製品化した思い出の1本なのです。カム設計は稲留氏にご教授頂き、試作では宇田川名人と何日も実験室にこもって量産方法を考えました。量産化のための調心装置も宇田川名人と共に開発。そのシステムは、後のニコンにおける生産システムの礎となったのです。

設計開始は2001年の正月休みが明けたころでした。設計完了が偶然にも私の誕生日と同日、2001年2月21日。試作は2001年5月に開始され、量産試作が2001年11月開始されました。この量産試作が難航しました。十分な性能が確保できて、かつNTC(ニコンタイランド工場)にて大量生産化を実現し、安心してお客様の手に届けられることになったのが2003年。発売は2003年9月の事でした。タイ工場における大量生産を軌道に乗せる為、幾度もタイに出向きました。私の設計開発したレンズの中で最も難産だったレンズです。

3、真の高倍率常用ズームレンズとは

1996年から2000年にかけて沢山のメーカーから高倍率ズームが発売されてブームが到来しました。オールインワンの高倍率ズームは旅行や常用レンズとして最適でした。しかし私には3つの不満がありました。1つは画質。これは時代(とき)と共に改善されました。もう1つは至近距離が長いこと。マクロ、マイクロと言わないまでも、もっと近づいて撮りたいと思いました。これまでのレンズでは花や小動物はおろか、卓上の料理写真の撮影にも難儀しました。そして最も不満であったのが、全長の長さと鏡筒の太さでした。要は大柄だったのです。旅先で食卓を囲むとき、料理の写真を撮りたいと思うことは当たり前にあることです。しかも当時のカメラ小型。もちろんカメラ内蔵ストロボ(ポップアップストロボ)を多用したい。しかし、これまでの高倍率ズームは長く太かったため、レンズ先端で内蔵ストロボの光線がけられ、写真には内蔵ストロボによるレンズの影が写りこんでしまいました。これが何ともしがたいのです。まさに不満。当時は銀塩フィルムの時代です。常用フィルムの感度は精々ISO400~800。高倍率ズームは比較的暗いレンズです。このような条件下ではストロボなしでは撮影は困難。わざわざこのために、もう1つ大型ストロボを持ち歩かなければならなかったのです。これらの点で私には「真の高倍率常用ズームレンズ」は存在しなかったのです。

そんなことを常々思っていた矢先、私のところに高倍率ズームレンズの設計依頼が舞い込みました。これはチャンス。自ら「最小最軽量で且つ至近が最も短い」と言う設計条件を課したのです。目標値は決まっていました。当時もっとも小型であったニコンU、USのポップアップストロボの照射角からワイド端の全長の上限を決め、更にその時の至近距離は0.45m以下にする。当時としては無茶な目標でした。しかし、完成したレンズの最短撮影距離は全域0.44m(望遠端では1/3.2倍のマクロ域まで合焦)。全長は71mmまで小型化が達成できたのです。

しかし、その代償は生産性にありました。当時は非球面を3枚4面も使用した光学系は少なかったのです。非球面製作のコストはクリアーできました。しかし組み立てにはシビアな調整が必要だったのです。そのレベルは、これまでの調整方法や精度では達成できないシビアさでした。したがって、新たな調整調心方法の確立と装置開発が必要となったのです。ここで試作の宇田川名人の出番です。「救世主が現る」と言ったところでしょうか。私は宇田川名人と一緒に調心調整方法を考え、実験検証してさらに考察を繰り返しました。宇田川名人のおかげで、現在まで脈々と受け継がれる調心調整方法と装置の基礎が出来上がったのです。

4、レンズ構成と特徴

図1

AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)の断面図(図1)をご覧ください。少々難しいお話をしますがご容赦ください。このズームレンズは正負正正(凸凹凸凸)全群移動の4群タイプのズームレンズです。このレンズタイプこそが、最も広角側の小型化を達成できるタイプでした。このレンズの秘密はこのレンズ構成とレンズタイプにあります。

光学設計者の一般的な思考として、小型化への策と言えば、各レンズ群の屈折力(パワー)を強くして、かつ高倍率で使おうとします。この考え方は定性的には正しい。しかし、ここに落とし穴があるのです。各レンズの高屈折力化は当然収差の悪化を招きます。設計者は普通、その発生した収差を補正するために構成枚数を増加させます。その結果、光学系は厚肉化し、重量も増します。要は思うように小型化にはならない。所謂いたちごっこになってしまうのです。従来の考え方では設計労力とコストをかけても思ったほど小型化にならないのです。

それではAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)はどのようにして小型化を達成したのでしょうか。このレンズの設計法は一般的な設計者の思考、設計方法とは真逆の発想です。各レンズエレメントは特定の収差を補正します。しかし、特定の収差を補正すると同時に、他の収差を発生させてしまう宿命を持ち合わせています。本レンズは、まさに太った体をダイエットするように、各群の簡素化、すなわち構成枚数を必要最小限に抑えて収差補正をしたことが最大の特徴です。動物が進化の過程で尾が退化するごとく、無駄な部分をそぎ落とし精練されていく。少し大げさですが、そのようなイメージです。そのために貢献した技術が、非球面の積極的導入とEDガラスの活用でした。本レンズは3枚4面の非球面を効果的に使用し、特に2群と4群の薄肉化に成功しました。4群に至っては、通常4~6枚の構成枚数が必要なところ、色消しの最低枚数である凸凹2枚の非球面レンズのみで構成しています。この各群薄肉の効果は、なんと目標サイズ達成をあっさり超えて余裕すら生みだしたのです。そこで、一般の設計思考とは逆に各群のパワーを緩める(弱くする)ことが可能になりました。その設計自由度増加によってさらなる光学性能向上が達成出来たのです。そして、真の常用高倍率ズームレンズとして世界最小最軽量の28-200mmを実現できたのです。この世界最小最軽量の記録は2018年の現在でも破られていないのではないでしょうか。

5、光学特性

それではAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)の収差的な特徴を見ていきましょう。初めに広角端の28mm時です。球面収差は主に非球面により発生する高次の収差を利用して、若干アンダーコレクションになっています。当時としては残存量が少ない部類に入ると思われます。こだわったところは非点収差と像面湾曲の補正です。像高8.5割(全画面の85%程度)までサジタル像面とメリジオナル像面を極力合わせて、非点隔差を少なくしています。しかし像高の高いところは徐々に非点収差が増します。コマ収差も像高8.5割まではかなり小さく抑えられています。しかし、最大像高ではサジタルコマ収差もメリジオナルコマ収差も発生し画質を低下させます。歪曲は最大-2.4%の緩やかな陣笠形状で、ズームレンズの広角端としてはかなり小さい値です。全体的には十分な画質ですが、欠点は四隅に表れます。スポットダイアグラムで点像を確認してみましょう。全般的には四隅を除いて良好です。しかし、周辺はコマ収差の影響でフレアーが発生し、シャープネスが低下する様子が読み取れます。

それでは中間焦点距離35mmではどうでしょうか。28mmの収差補正状態に比較的近いですが、まるで35mmの画角でトリミングしたかのごとく、周辺四隅のコマ収差、非点収差、像面湾曲が改善します。歪曲もほぼ0%です。この焦点距離はかなり良いレベルの描写が期待できます。欠点は若干サジタルコマ収差が増加する点です。夜景撮影等は確認が必要です。

それでは50mm~135mmあたりの描写はどうでしょう。この範囲では収差変動が少なくほぼ同様の描写をします。球面収差は若干オーヴァーコレクションで、まさに脇本バランスになっています。絞り開放時のボケ味は、後ボケに二線ボケが出やすいかもしれません。しかし、0.5段も絞れば中心部~中間部のシャープネスはぐーっと上がります。非点収差と像面湾曲の傾向は他のポジションと同様の設計思想で像高7割(全画面の70%程度)までサジタル像面とメリジオナル像面を極力合わせて、非点隔差を少なくしています。歪曲は+3~5%と大きめで、糸巻の歪曲収差が目立ちます。歪曲は気になるレベルです。今なら画像処理で対応可能ですが、当時はこのレンズのウィークポイントでした。

望遠側200mm時はどうでしょう。球面収差は主に非球面により発生する高次の収差を利用して、若干複雑なフルコレクションになっています。残存量はかなり少ない部類に入ると思われます。コマ収差は外方コマ傾向で芯がありフレアーが取り巻く形状です。点像は外方コマのフレアーがありますが、光学的な三次元描写特性が良好になるよう考慮しました。また、このポジションでも絞り込みの効果が活きる収差補正を実施。0.5~1段絞ることでフレアーが消え、特に中心部分のシャープネスが大きく向上するように心がけました。歪曲は約5%と大きめでした。

6、実写性能と作例

次に実写結果を見ていきましょう。各絞り別に箇条書きに致します。評価については個人的な主観によるものです。参考意見としてご覧ください。

広角端28mm時

F3.5開放

センターは若干フレアーがあるものの解像感があり好印象。中心から周辺まで安定した解像力を有している。しかし、最周辺では若干像が乱れてフレアーも増す。色にじみはほとんど感じない。

F4~5.6

F4に絞り込むことによってセンターから周辺に至るまでフレアーが減少。コントラスト、解像力ともに上昇。ごく周辺部分のみシャープネスの低下が若干あるが、F5.6まで絞り込むことで改善する。

F8~11

さらに画面全体が均一な描写になる。特にコントラストが向上し、好ましい画質となる。F8~11が全絞り中最も良い画質。風景写真にはF11が好ましい。

F16~22

絞れば絞るほど解像感低下。特にF22では回折の影響で解像感を損ねる。

中間焦点距離35mm時

F3.8開放~4

センターのフレアーは28mm時より少ない。シャープネスがより良い状態。良像範囲が28mm時より広く、ちょうどトリミングをした感じに近い。しかし、ごく周辺部分でフレアーが発生する。色にじみはほとんど感じない。

F5.6~8

F5.6に絞り込むことによって、センターから周辺に至るまでフレアーが減少。コントラスト、解像力ともに上昇。ごく周辺部分でシャープネスが若干低下するが、F8まで絞り込むことで改善する。

F8~11

さらに画面全体が均一な描写になる。ごく周辺部分以外はフレアーも消失し、シャープに結像する。

F16~25

絞れば絞るほど解像感低下。特にF22~25では回折の影響で解像感を損ねる。

中間焦点距離50mm時

F4.5開放

センターはシャープでフレアーも少なく良好。周辺はフレアーが発生するが解像力はある。実用的なシャープネスは維持している。やはりこのポジションでも色にじみは少ない。

F5.6~8

F5.6に絞り込むことによって、フレアーが消失し、コントラストが上昇。ごく周辺部分のみ像の乱れがある。しかし、F8でほぼ改善する。周辺までコントラストが良い。F8が全絞り中最も良い画質。

F11~16

画面全体が均一な描写になる。特にコントラストが大幅に向上。F16では若干回折の影響で解像感を若干損ねる。

F22~25

均一な描写だが解像感低下。回折の影響で解像感を損ねる。

中間焦点距離85mm時

F5.3開放

センターから周辺まで解像感はあるものの、フレアーが取り巻いている。ほぼ全面均一な描写は好印象。ポートレートに適しているかもしれない。やはりこのポジションでも色にじみは少ない。

F8~11

F8に絞り込むことによって、フレアーが消失し、コントラストが上昇。周辺までコントラストが良い。F11が全絞り中最も良い画質。

F16~32

均一な描写だが、絞れば絞るほど解像感徐々に低下。回折の影響で解像感を損ねる。

中間焦点距離135mm時

F5.6開放

85mmよりもフレアーは少ないが、解像感が落ちた感じ。ほぼ全面均一な描写は好印象。やはりこのポジションでも色にじみは少ない。

F8~11

F8に絞り込むことによってシャープネスが向上。F11ではさらに向上し周辺までコントラストが良好。しかし、ごく周辺部分で若干の流れが発生する。流れはF16に絞り込むことで消失する。

F16~32

均一な描写だが、絞れば絞るほど解像感徐々に低下。回折の影響で解像感を損ねる。

望遠端200mm時

F5.6開放

センター付近はシャープで解像力がある。フレアーも少ない。周辺に向うにつれて解像感が低下。ごく周辺部分は若干解像感に欠く。やはりこのポジションでも色にじみは少ない。

F8~16

F8で解像力もさらに高くなり好印象。F11でさらに画面全体が均一な描写になる。F11~16が全絞り中最も良い画質。風景写真にはF11が好ましい。

F22~32

画面全体がさらに均一な描写になるが、絞れば絞るほど解像感低下。特にF22~32では回折の影響で解像感を損ねる。
どのポジションにおいても、シャープネスを期待するならF11近傍の絞りで使用すると良好な結果を得られるでしょう。このレンズはズーミングによる画質の変化が少ないレンズだと言うことがお分かり頂けたと思います。

それでは、作例写真で描写特性を確認してみましょう。 今回の作例もレンズの素性を判断していただくために、あえて特別なシャープネス・輪郭強調の設定はしておりません。

作例1

ニコンDf AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)(28mm相当)
絞り:F3.5
シャッタースピード:1/4000sec
ISO:220
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日:2017年9月

作例1は広角端の28mm、絞り開放F3.5で撮影しました。中心から周辺まで充分な解像感があります。最周辺まで破綻が無く実用に耐えそうです。若干フレアーがあり軟調になる傾向があります。

作例2

ニコンDf AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)(50mm相当)
絞り:F4.5
シャッタースピード:1/2000sec
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日:2017年9月

作例2は中間焦点距離50mm、絞り開放F4.5で撮影しました。中心から周辺まで、広角端同様に破綻が無く実用に耐えます。作例は若干前ピン傾向にあるため顔の解像感が少し弱いです。

作例3

ニコンDf AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)(85mm相当)
絞り:F5.3
シャッタースピード:1/2500sec
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日:2017年9月

作例3は中間焦点距離85mm、絞り開放F5.3で撮影しました。中心から周辺まで、広角端同様に破綻が無く実用に耐えます。やはり作例3も若干前ピン傾向にあるため顔の解像感が少し弱いです。フレアーは少なめです。ボケ味は可もなく不可もない印象です。

作例4

ニコンDf AF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)(200mm相当)
絞り:F5.6
シャッタースピード:1/1600sec
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:オート
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日:2017年9月

作例4は望遠端200mm、絞り開放F5.6で撮影しました。中心から周辺まで、シャープ感があり十分な解像力を有しています。最周辺でも破綻が無く実用に耐えます。フレアーは少なめです。ボケ味は可もなく不可もない印象ですが、シーンによっては若干固くなるかもしれません。

7、オールドレンズブーム

ここ数年、相次いでオールドレンズのブームが到来しています。そのきっかけは、ミラーレスカメラの「マウントアダプター遊び」と称され、多種多様なレンズで写真を写すことが流行っているからだと思います。古いレンズが見直され、死蔵されていたレンズに魂を宿らせる。これは素晴らしいことです。特にF用Nikkorは廃棄されず延命しているものが多く、それらの描写の違いを楽しむことができます。

また、もう1つベースにあるのがネット社会の広がりです。SNSやホームページの閲覧が、世界中どこでも瞬時に可能です。オンタイムで情報共有が可能なのです。「あのレンズは良い!」とか「このレンズは試したが…。」とか。レンズの描写、ボケ味、三次元特性の話題が毎日どこかで議論されています。第六十三夜で取り上げたAF Zoom Nikkor 28-80mm F3.3-5.6Gも、今回取り上げたAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)も、海外の有名な写真家兼評論家のNikkor Best10に取り上げられた事や、別の有名評論家が小型で高性能だ、と絶賛したとことが火種になり評判になったようです。

私もここ数年、32年間設計してきた約25本のニッコール達を思い出して、当時買いそびれたレンズ達を購入しています。なかでもこのAF Zoom Nikkor ED 28-200mm F3.5-5.6G(IF)は最近やっと購入できました。しかしすでに中古市場では高騰し始めていました。このレンズは予想以上に、量産化に手間がかかりました。その結果、発売時期が想定より遅延しました。運悪く発売時期のタイミングで他社から28-300mmが発売されたこともあって、想定よりも販売台数が伸びませんでした。そのおかげで、中古の現存台数が比較的少ないのです。そんなことも高値になっている理由の一つの様です。

オールドレンズのブームや人気は当分続くのではないでしょうか。日本だけではなく世界中がブームになり、写真文化が活性化し、業界と愛好家たちが更なる発展を遂げる様に願っています。

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