秩父山塊に抱かれた草原は花と虫の楽園乙女高原の夏の植生を記録しよう

行って観て楽しく撮る! ガーデニングテクニック

短い夏の自然の営みを散策で満喫!

前日まで続いていた雨や曇天にかわって太陽が顔をのぞかせた8月初旬、山梨県山梨市の乙女高原に夏の花々を撮りにでかけました。登山の装備に身を固めて降り立ったのは、東京から中央本線の特急で1時間半ほどの塩山駅。ここから車で35分ほど入った秩父山塊のふところに位置する乙女高原には、真夏とは思えない涼しい風が吹き渡っていました。
標高約1,700mの乙女高原は、鷲見先生が植生を学ぶために年に数回は訪れる、とっておきの場所です。よく整備されたなだらかなスロープの遊歩道から、草原に咲き乱れる可憐な花々が見渡せます。少し歩くだけで多くの種類の山野草と出会える、すばらしい自然が息づくエリアです。
では鷲見先生に、乙女高原特有の植生について教えていただきましょう。

乙女高原おさんぽマップ

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乙女高原に広がる美しい草原の成り立ち


土壌の流出を防ぐため、遊歩道には刈った草が敷きつめられている

土壌の流出を防ぐため、遊歩道には刈った草が敷きつめられている
乙女高原(760ha)は亜高山帯にある「高茎草原」と呼ばれる場所です。茎の長い草が多いのでこう呼ばれます。人が入って踏みつけると倒れてしまう大変デリケートな草が生息する草原を守るため、ボランティアの方たちが遊歩道を造るなどの活動を続けています。
この草原の周囲はミズナラやブナ、カラマツの森です。この一帯に貴重な草原が残ったのは、意外ですが1952年から2000年までスキー場だったから。雪が来る前にゲレンデ整備のために枯れ草を刈り、若木の伐採を行ってきたために、周囲の森にのみ込まれることなく保全できたのです。スキー場閉鎖後は毎年秋に、市民ボランティアの皆さんが草刈りをしています。この草原は、人の手が入っているからこその「自然」なのです。

乙女高原グリーンロッジ

乙女高原グリーンロッジ
乙女高原は花と虫の楽園

乙女高原は花と虫の楽園
コオニユリ

コオニユリ





愛称は「カバノキ三兄弟」

草原の中にぽつりと育った先駆樹種

草原の中にぽつりと育った先駆樹種
草原の中には、スキー場時代に手が入りきれずに木が育って若い森を形成している部分もあります。そして、所々に大きな木が育って枝を伸ばしています。
写真はボランティアの皆さんが「カバノキ3兄弟」と呼んでいる木々です。草原にはシラカバ(シラカンバ)、ダケカンバ、ヤエガワカンバなどがぽつりぽつりと立っています。これらは日向で育つ陽樹です。小さな翼が付いた種を遠くに飛ばして、日当たりのよい草原を真っ先に森に変えてしまう「先駆樹種(パイオニアプランツ)」なのです。
乙女高原も草刈りや伐採をしないと、「3兄弟」が飛ばした種で陽樹の林に変化します。その後、日陰でも生長する陰樹のミズナラやブナの森へと遷移してしまいます。貴重な環境をこのまま保全する活動は、やはり大切ですね。




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乙女高原の夏の花 お花畑ギャラリー


タチフウロ

タチフウロ
クガイソウ

クガイソウ
ヤナギラン

ヤナギラン
乙女高原に遅い春が訪れるのは5月中旬。さあ、色彩の目覚めの時です。日本一大きなサクラスミレや薄紫のフデリンドウの花が開きます。6月には赤いレンゲツツジ、梅雨に入るとアヤメやキンポウゲ、7月には黄色いキンバイソウが草原を彩ります。
そして8月、乙女高原が最も華やぐ季節の到来です。一斉に夏の花が咲き始め、黄色やピンク、紫、白の山野草の花が涼やかな風に揺れます。撮影の1週間前にも植生調査に入りましたが、前回の調査時とは咲いている花の種類が違っています。やはり山野草は花期が短いですから、写真を撮りたい時には何回か足を運ぶといいですね。
私の好きなクガイソウやヤマオダマキなど、今回の撮影で見つけた花のアルバムをご覧ください。
キンバイソウ

キンバイソウ
ヨツバヒヨドリ

ヨツバヒヨドリ
ヤマオダマキ

ヤマオダマキ

オオバギボウシ

オオバギボウシ
ウスユキソウ

ウスユキソウ
マルバダケブキ

マルバダケブキ
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日向の山野草から庭のデザインを学ぶ


今回は日当たりの良い草原ですから、日向の山野草を参考にした植栽を考えてみましょう。
私は日の射す庭に野趣を出す際には、山で見たクガイソウとヒメトラノオなどの植生を参考にします。しかし、これらは東京の気候では根付きません。そこで、園芸種で姿や色が似た植物を探します。このような思考を様々巡らせながら、そのお宅の条件に合った庭の配植を構想していくのです。
では、乙女高原の日向の植生を紹介しましょう。

「植生が私の先生です」

「植生が私の先生です」

(1) シモツケ (2)ワレモコウ (3)ツリガネニンジン (4)クガイソウ (5)ヤマホタルブクロ
この植生を庭で活用する鷲見流テクニック

東京都内の庭にこの植生を取り入れる場合、シモツケとワレモコウ、ツリガネニンジンはそのまま使えます。しかし、気温も湿度も高い区部(23区)ではクガイソウとヤマホタルブクロはほぼ育ちません(多摩地域では一部、育つ場所はあります)。そこで、育たない/育ちにくい地域で庭を設計する際にはクガイソウは園芸種の(4')ベロニカ'ブルーリーゼン'に、ヤマホタルブクロは(5')ホタルブクロに代えます。
東京都区部での組み合わせ(シモツケ ベロニカ'ブルーリーゼン' ワレモコウ ツリガネニンジン ホタルブクロ)なら、下図のように夏中、とぎれることなく花が楽しめます。ベロニカ'ブルーリーゼン'は守備範囲が広く大変重宝ですから、皆さんの庭にも取り入れてみてはいかがでしょうか。




ホタルブクロの植え付け位置は混植部分の外寄りに

ホタルブクロの植え付け位置は混植部分の外寄りに
ベロニカ'ブルーリーゼン'とワレモコウ、ツリガネニンジンはそれぞれひとかたまりにして植えると、ただの「花壇」になってしまいます。庭に野山の雰囲気をかもすコツは混植することです。ベロニカ'ブルーリーゼン'が10ポットあったら、ワレモコウ2ポット程度、ツリガネニンジン3ポット程度を混ぜて植えましょう。こうすると、より自然に近い姿で鑑賞できます。

シモツケはアイストップに活用

シモツケはアイストップに活用
余談ですが、1mほどと背の高いシモツケは庭に植えるとアイストップの役割を果たします。秋には紅葉が楽しめますし、葉を落とす冬は残った枝が庭に高さを残してくれます。そして春、美しい芽吹きの色が庭に生気をもたらします。シモツケは四季を通じて楽しめる植物なのです。
ここで紹介した配植と同様に、山の様々な植生を生かせば四季折々に変化する美しい庭ができますよ。


山野草は過酷な自然の中で生きるために、短期間で一斉に花を咲かせます。乙女高原では5月中旬から8月いっぱいが花の季節です。しかし、乙女高原の植生を参考にして庭に植える場合は、気温が高いので花期にズレが生じることを理解しておきましょう。

「葉にも注目してくださいね」

「葉にも注目してくださいね」
乙女高原は森に囲まれています。日向の草原の周囲には日陰や半日陰ができますから、光と影が織りなす興味深い植生も見られます。私にとっては非常に勉強になる場所です。
野山の植生から学んでこそ、より自然で植物にも負担のないナチュラルガーデンができあがるのです。自然の組み合わせを教えてくれる山は、私の最高の先生です。






対生と輪生

植物には葉の付き方(葉序)が何種類かあります。例えばヒメトラノオやヒヨドリバナは「対生葉序」といい、茎の同じ高さから向かい合いように2枚の葉が出ます。一方、ヨツバヒヨドリやクガイソウのように茎の同じ高さから3枚以上の葉が出るのは「輪生葉序」といいます。
葉序は植物分類の重要な要素の1つです。山では色の美しい花に目が行きがちですが、葉にも注目してくださいね。
5輪生葉序

5輪生葉序




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夏空と雲のコントラストをより美しく


日頃から交換レンズで撮影を楽しんでいる鷲見先生

日頃から交換レンズで撮影を楽しんでいる鷲見先生
夏は山や海など自然と親しむ機会が多くなります。カメラの出番も増えますね。心を捉える景色に出会ったら、超広角ズームレンズと円偏光フィルターを使ってより美しく記録してみてはいかがでしょうか。
草原や空の広がりを感じさせる写真を撮りたい時に活躍するのは、超広角ズームレンズです。このレンズを使えば風景の遠近感が強調され、ユニークな作品に仕上がります。
円偏光フィルターは空や水の中の魚などを撮る際、反射を弱めたり除いたりするので質感がうまく表現できます。空を撮れば、青を適度に濃くして雲の白とのコントラストを引き立てます。くっきりとした夏らしい空が描写できます。
目的に応じて交換レンズやフィルターを活用すると、撮影が一層楽しくなるでしょう。

VR 18-200mm F/3.5-5.6Gの18mmで撮影

VR 18-200mm F/3.5-5.6Gの18mmで撮影
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超広角ズームレンズDX 10-24mm F3.5-4.5G ED 焦点距離10mmで撮影

超広角ズームレンズDX 10-24mm F3.5-4.5G ED 焦点距離10mmで撮影
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そのまま撮影

そのまま撮影
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円偏光フィルターを使用

円偏光フィルターを使用
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コウリンカ

コウリンカ

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シシウド

シシウド

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ノアザミの蜜を吸うチョウ

ノアザミの蜜を吸うチョウ

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これでもクガイソウ

これでもクガイソウ

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ヨツバヒヨドリとアサギマダラ

ヨツバヒヨドリとアサギマダラ

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シモツケソウ

シモツケソウ

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マルバダケブキの花と甲虫

マルバダケブキの花と甲虫

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イチヤクソウ

イチヤクソウ

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♪頭を雲の上に出し

♪頭を雲の上に出し

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