最上位機種の撮像素子として、あらゆる施策を盛りこんだ贅沢な設計
今回の撮像素子は自社開発ということが大きなポイントになっていると思うのですが、設計面での利点、または苦労などありましたか?

- カメラボディ設計担当、レンズ設
計担当と共に検討を繰り返した末
にD3が完成
武石 「これまで、自社開発センサーとしてLBCASTがありましたが、CMOSセンサー開発は今回初挑戦であり、目標性能が出せるまで試行錯誤を繰り返した事が苦労した点でした。しかし、自社開発のメリットを生かし、CMOSセンサーとニッコールレンズの性能マッチングを十分検討して、撮影レンズ性能を十分引き出すことが出来ました。これによって高い画質を得る事に成功したのです。さらに、今回は最上位機種へ搭載されるセンサーということで、高画質化に効果のある機能や技術を妥協することなく盛りこんでいます。とにかく高性能・高感度特性ありきの開発だったため、性能アップのための施策はコストを気にせずに全て盛りこみました。」
断念した施策、逆に途中から入ってきたものはありますか?
武石 「削ったものはありませんでした。実際に試作をしていく段階で追加した施策はあります。特に、高感度性能向上のための改善が多かったです。感度を高めるためには電気信号を大きく増幅する必要がありますが、不要なノイズも一緒に増幅されてしまいます。そのようなノイズを抑えるために、性能向上のための試作を繰り返し行いました。」
具体的にどのような技術が高感度性能に起因しているのでしょうか。
武石 「主に集光、蓄積、低ノイズ化の3つです。1つめの集光は先にも述べましたが、画素サイズを大きくし、マイクロレンズなどを工夫したこと。光を無駄なく集められます。2つめは、フォトダイオードを大きくし、多くの光を電気信号として蓄えます。ダイナミックレンジを広げる効果を発揮し、滑らかな階調を得られます。そして3つめの低ノイズ化。ノイズ成分は画質に大きく影響しますので重要です。信号発生源で増幅することはS/N向上の王道ですが、センサー内部にアンプを入れて実現しています。」
増幅した電気信号を読み出す際にも、ニコン独自の方式を開発しているそうですが。
武石 「はい。高速化と低ノイズ化の目的で、12チャンネル読み出しを採用しています。これは、12人が並列で仕事をしているようなイメージです。1人1人はゆっくりでも全体としては速く仕事が進みます。高速で動く電気回路はノイズ発生が多くなる傾向があるため、低ノイズ化には1人がゆっくり動くことが効果的なのです。その後の信号伝送も手を抜いていません。伝送途中での混入ノイズを取り除けるように一つの信号を2本に分けて伝送しています。さらに、信号伝送には同軸ケーブルを使っています。同軸ケーブルは、信号を通す線の周りを導体で構成して、外からのノイズの混入を防いでくれる役割を果たします。これも贅沢な採用ですね。」
これまでよりどれくらい性能的な向上があるのでしょうか。
武石 「最高ISO感度は、当社比で2段分良くなっています。このCMOSセンサーの集光性アップやノイズ低減に加え、新しい画像処理技術により、総合的な性能アップを果たしました。」
ユーザーの要望を知ることが、センサーの飛躍への第一歩に
D3が出た当初の、FXフォーマットに関する市場の声はどうでしたか?

- D3を手にしたユーザーからの反応を励みに、今後へ
の意気込みを見せる武石さん
武石 「発売前は、ニコンはおそらくフルサイズが出来ないであろう、という噂が流れていました。その中でのFXフォーマット機の発表でしたので、市場からの反応としては驚きというか、いい意味で想像をうらぎったと思います。そして、今までなかったISO6400という高い感度を達成できましたので、その部分の反応も強くありました。さらにアクティブD-ライティングや倍率色収差補正など、画質を良くするための新機能もたくさん搭載しましたので、ハイエンドのユーザーにとって満足の行く1台だったようです。」
高感度の部分での具体的なユーザーのメリットや、実際のユーザーからの声はいかがでしょうか?
武石 「スポーツや報道では、望遠レンズを高頻度で使用することもあり、早いシャッタースピードを切りたいという要望が多く、それに応えることが出来ました。街中でも、夜景でも、三脚やストロボを使用しなくても大丈夫な場面も増えたため、自然な写真が撮れるようになった、という意見はたくさんいただきました。」
CMOSセンサーはD3、D700ともに同じものですか? ユーザーとしては気になる所だと思うのですが。
武石 「センサーは全く同じです。D700はボディがD3より小さいので、周辺回路を小型化しため設計的な違いはありますが、画質は同等です。」
意外な反応などもあったのでしょうか。
武石 「感度設定のHI 2は、あくまでも増感という位置付けであり、これまでは画質を議論されること少なかったのですが、ISO25600相当という扱いで雑誌にも取り上げられ、評価までしていただいた事が予想外でした。」
今後はどういった方向でセンサーを開発していきたいですか?
武石 「今回の仕事では、出来ることはすべてやったという気持ちもありますが、世の中の技術は留まることなく進歩していきます。それに伴い、多様化していくお客様のニーズに応えながら、さらに一歩先いく製品開発を目指していきたいです。これからも、さらなる高性能技術の模索・検討に取り組みたいと思います。」
今回は、ありがとうございました。
