Pleasure 楽しみ
撮っている瞬間は無心 「自分のリズムを取り戻せるんです」
本格的に撮影するようになって、それまで撮影していた時と何か変わりましたか?
思い通りになかなか撮れないですね。露出を合わせるのも、うまくいかなくて「う~」ってなります。それに、ああやっておけば良かったな、とか思い返したりもします。でも逆に偶然が重なって、奇跡的に撮れる写真もあって。撮るもの全部をいい写真にしようと思っているわけじゃないので、30枚中2、3枚すごくいい写真が撮れたらそれだけで嬉しいですしね。以前はオートで任せていた絞りや露出といった設定も、今は自分で考えるから時間もかかるんですけど、そういうことも含めてすごく楽しめています。
普段どういったものに心惹かれて写真を撮るのですか?
ときどき、歩いていてすごくわくわくするときがあるんです。面白いとかきれいとか、心がときめくんですよね。それで、「あ、これ撮らなきゃ」と思ってすかさず撮る。どこに行ってもそういう瞬間があるんです。あと、この目の前に広がる景色に人が歩いてきたら、すごく面白くなるって思ったときは、誰かが歩いてくるまで5分、10分待ってみたりもします。想像したような絵が撮れるまで、好きなだけ待っていますね。そういう時間はすごく落ちつく。忙しくて生活に追われているときに、そうやって写真を撮ると自分のリズムに戻せるんです。撮っているときの空気感が自分の呼吸のリズムと合ってくるというか。無心でいられる時間ですね。
では、美波さんにとって写真はどんな存在ですか?
そのときの記憶というか、見た視点、見たもの、それをメモするみたいな感覚なんです。写真を見返すことで忘れていたものを思い出したりもしますし。たとえば、何年後かに写真を見たとき、その写真を撮った瞬間何を感じていたのか、どういう視点でいたのか、何に気づいていたのかなどが分かるんですよね。一瞬一瞬をこんなふうに見ていたんだなって思います。撮っている瞬間は自分の視点で世界が見えていて、そういった瞬間が1枚1枚作品になっていく。写真がどんどん増えていくのが楽しいし、すごく嬉しいです。それに、何より落ちつく存在なんですね。カメラをもっているだけですごく落ちつきます。
なるほど、その時々の自分の世界を大切に残していらっしゃるのですね。これまでにたくさん溜まった写真はどんな風に整理されてますか?
そうですね、高校生の頃はアルバムの両ページに1枚ずつ写真を貼って、それぞれを単写真として見る場合と、両ページの2枚の写真を組み写真としてみる場合と、見開きで2通り楽しめるようにまとめたりしていました。たとえば、誰かの誕生日会のにぎやかな写真の隣には、ぜんぜん関係のない外国で撮った男の子が一人きりで写っている写真を組み合わせたりとか。皮肉っぽく。
ストーリーができますよね。
そうなんです。2枚の写真を対比させたり、色彩で関連性をもたせたり。今は、フィルムごとにまとめて、その中から何枚か選んでアルバムに入れていますね。
お気に入りの写真をピックアップしているのですね。
でも、選ぶのは難しいですね。そのときは何でもなかった写真が、何年後かに見ると「いいじゃん!」って思ったりもしますし。好きな写真ってときと共に変わっていくんですよね。だから、今はピンとこなくてもこれはよくないって言いたくないし、あまり写真たちを差別したくないんです。

