「フォト絵」の原形は 子どもの頃に観た"かっぱのカータン"
撮影には頻繁に出かけられるんですか?
基本的にわざわざ撮影に行くということはなくて、出かけるときには常にカメラを持ち歩いていて「いいな」と思ったものがあったら撮るという感じです。一緒に誰かいるときは「ちょっと撮っていいかな」と言える人だったら撮るし、言えない人だったら撮りません。
「いいな」と思っても撮らないのですか?
はい。「フォト絵」の場合はあまり気負わず気軽なスタンスで描ければいいと思っているんです。もしそのときにカメラを持っていなかったらしょうがないですし、後でまた撮りに行くというようなこともしないですし、さりげなく続けていければいいかなという感じなんです。
一応、自分の中で決めている小さなルールがあって、写真は一期一会でそのときに撮れたら撮る、撮るものを動かしたりしてはいけない、ものがちゃんと写っているということが大前提なので逆光の場合やバックが同色でわかりづらいときなどはよほどのことがなければ撮りません。
こうやって描こうというアイデアは写真を撮る前に浮かぶのですか?それともプリントしてからですか?
最初の頃は先に何でも適当に撮って、あとで考えて描く方が多かったんですが、だんだん慣れてくるとある程度こんな形で描こうと浮かんでから撮る方が多くなりました。本当は、撮るときに作為的になるよりは、適当に撮ったあとに何か思いつきがあって、完成してみたら自分でもこうなるとは!という驚きがあった方がいいんですけどね。だからあまり慣れてしまうのはよくないなぁと思います。
何枚かに1枚は自分でも「これはいい!」っていう作品ができるんですが、昔はそれの連続だったんですよね。今そういうことは少ないので……。
それでも私たちでは思いつきようのないイラストを重ねていたり、写真を見ただけでは完成イラストをまったく想像できない作品ばかりで、福田さんの想像力には驚かされてしまいます。

- こちらが「フォト絵」になる前の原形写真。
さて、どんなイラストが入るでしょうか?
……答えはページ下に
あの、今思い出したんですけど、昔カッパのカータンという着ぐるみキャラクターが出てくるテレビ番組があって……ピンポンパンだったと思うんですが、新兵ちゃんっていうおじさんが出て来る。
ああ、たぶんピンポンパンだと思います。子ども向けの番組ですよね。
そうです、そうです。その番組で、子どもが適当に描いた絵にカータンが絵を描き加えて全く違う絵に仕上げるというコーナーがあったんです。たとえば子どもが三角形を描いて、カータンがその三角形を使ってかっぱを描くみたいな感じで。子どもは毎回カータンを困らせようと変な形を描くんですが、それでもカータンは上手くその形を使って絵に仕上げるんです。子供心にもカータンはすごいなと思って観ていたんですが、1回、子どもがぐるぐるぐるって真っ黒に書きなぐった事があって、カータン悩んだんですけど結局うまくできなかったことがあるんですよ。
(笑)絵が仕上がらなかったんですか?
はい。それは今でもすごく覚えていて、カータンがその真っ黒いものをどう活かしていいのかわからずに、飛行機のジェット噴射の煙にしたんです。安易な絵で逃げたなぁと思っていたら、それを見た新兵ちゃんも「これはダメだね」って言って、カータンも「うん」って降参して(笑)、僕もそうやってカータンを負かしたいなぁといつも思って観ていました。
そのコーナーのことはずっと頭に残っていたんです。原形をまったく違うものに変える面白さみたいなものを知ったのはカータンの絵だったので、よく考えたらそれが「フォト絵」の元になっているのかもしれないですね。
各地を巡り 写真を撮り 写真を削って 絵を描く

- 今回特別に、愛用のニコンEMで
「フォト絵」を作っていただいた。
なんとも愛らしい「リトルニコン君」
/東京・吉祥寺
写真に描かれているこの白いラインは、立体感がありますね。修正液のような……あれ、これはもしかして削っているんですか?
そうです。写真を削って白いラインを描いています。カッターでコリコリコリと削って、紙の白い部分を出しています。その後、着色をしているんです。
筆やペンを使うと、普段使い慣れている道具なのでラインが綺麗に描けてしまって面白くないんです。それよりももっと稚拙な感じを出したくて、カッターで削っています。長く描いているので最近は少し削り方もこなれて来てしまって、やはり慣れはよくないなぁと思うんですけどね。
写真を削っているなんて想像もつきませんでした。ところで「フォト絵」には撮影地が必ず付けられていますが、全国いろいろな場所で撮られているんですね。
国内はわりと行っていますね。やり始めた当初、これをまとめて本にしたいという気持ちがあって、そのときに「日本中巡りました」みたいなものがあるといいかなと思って、都道府県を回ったことがあるんです。その頃のストックが今も結構残っているのでいろいろな土地の写真があるんです。
写真に地名を入れているのは、多少、その土地にちなんだ絵が描けると一番いいなと思っているんです。たとえば、徳島で撮った写真には阿波踊りの絵を描いてみたり。
この、禁煙の看板がタバコを吸っている作品も面白いですね。
ええ、ご当地ネタを入れるか、こういう感じで写真と関連付けてちょっと意味をもたせたりするか、ダジャレでもなんでもいいんですけど(笑)、何か入れていけるといいかなと思います。
なるほど。結構考えられている作品なんですね……。
やっぱり適当に描いているように見えますか(笑)?

- 禁煙の看板(右)がタバコを吸う人(左)に変身
あ、いえ、そういう意味ではないんです!さりげないスタンスで描かれているんですが、奥深い部分があるというのはさすがだなと!
いえ、ほんとに気楽に描いているものなので(笑)。ありがとうございます。
物を写真に撮り絵を描き込むことは 物に命を吹き込む作業

- 「そよぐ風」/京都・捨得
今回作品を拝見して、自分でも「フォト絵」を描いてみたいなと思いました。
ええもう、ぜひぜひ。これは誰でもできることだと思うんですよ。街を歩いていて「あれは顔に見えるな」と、ふと思ったことを実際に描いているというだけなので、特別な発想はいらないんですよ。みなさんやればできるのにたまたましていなかったというだけで、僕は何もたいそうなことはしてないので。
同じように「描いてみたい」と思った方にアドバイスをお願いします。
うーん……どうせやるのであれば、ただ描くだけではなく、さっきのタバコみたいに描くものに意味を持たせてみたり、描くことでその写真に意味が出てくるようなものにすることで作品として面白くなるんじゃないかと思います。
では最後に、福田さんにとっての写真とはなんですか?
僕にとってはやっぱり写真は道具だと思います。「フォト絵」に関して言うと、通常絵を描く前に、キャンバスにいろいろな色を塗ったり工夫をして下地を作っていくんです。それと一緒で、写真を撮ることは、まず下地を作るということだと思います。
写真はキャンバスなんですね。
「ほぼ日」の担当の方に「フォト絵」を見ると「物には全て命がある」ということを感じると言われて、なるほどなぁと思ったんです。すごく簡単な動機で始めたんですが、最近は描きながらそういうことを意識して作るようになってきたなと思うんです。だから、偉そうに言わせてもらうと、写真に絵を描くことで、その物に命を吹き込むという作業をしているような感じがします。
なるほど。物に命を。
あ、いや、でもそんなたいそうなものでは本当にないんです。基本的に気楽に、適当な感じでやっているなぁ思っていただいて結構ですので(笑)。僕も気楽に楽しんで描いていければいいなと思います。

