イラストと写真をセットにして保存 旅した気持ちを呼び出すきっかけに

- 旅で撮った写真はアルバムにまとめ、
さらに頭に残った記憶を辿って旅の
イラストを書いている。
旅から帰ったあとには、必ず写真をまとめるそうですね。
ええ、その作業も結構好きなんです。これはチュニジアをまとめたものなんですが、こうやって旅の絵日記のようなイラストも一緒にしてあるんです。
へぇ!これは面白いですね。
帰りの飛行機で描いたりしたものなんですけど、写真とは違う形で、自分の頭の中に残っている風景であったり、面白いなって思った言葉を残している感じでしょうか。
こうやってきれいにまとめ出したのは、アフリカに行ったあとに開いた展覧会がきっかけだったんです。絵を見ればアフリカの雰囲気は伝わるんでしょうけど、じゃあ実際そこはどんなところだったの?っていう説明はできないなっていうのがあって、それで、写真とイラストを一緒に置いておいたんです。
イラストで説明して写真で実物を見て。なるほど、色々口で説明されるよりもスマートに、楽しく伝わってきますね。
紀行文のように、何日にこういうことがあってどういう人と会いました、というような目線では描きたくないんです。これは私を介した絵なんですが、自己中心的にならないように、見た人が行きたくなる雰囲気を残したものをいつも描くようにしています。
人に見せることが前提にあるんですね。
そうですね、人に写真を見せるのは結構好きなんですよ(笑)。でも今回、改めて並べて見てみると、自分にとってもこういう形にまとめておいてよかったなって思いました。ずいぶん時間が経っているのに、見直すとよく思い出せる。何年か経ってもその時の気持ちを呼び出せることができるんですね。
それから、旅ごとに段々と自分も変化していってるんだなぁってことに気づいたり。その時の心情が写真に現れてしまっているのかな。だんだん写真が変わっていってますね。
たとえばどんなことですか?
始めの頃は結構人を撮ったり物に寄って撮っているんですが、一番最近行ったオーストラリアではほとんど風景が多いですね。情景的な写真というよりも、ちょっと一歩引いた、入り込んでない感じですね。少し日常に近い場所だったからかもしれませんね。そのときは気づかなくても、こうやってまとめておけばあとで気づいたり、人に言われて気づかされたり、色々発見がありますね。
そこに行って、撮ったという事実 それが作品のプラスになる

- 写真はカラー、モノクロ両方で撮影している。
モノクロ写真はカラー用の現像機でプリントしている。
イラストレーターになろうと思ったのはいつ頃からですか?
幼稚園とか、もう本当に小さなときからです。物心ついたときから絵を描くのが好きで、その延長で自然となっちゃったんです。今でも、自分がイラストレーターになりきれているのかわからないんですけど。
好きなことをずっと続けてこられたというのは素晴らしいですね。
私は覚えていないんですが、母が言うにはいつも鉛筆とメモ帳となぜか虫眼鏡を持ってお絵書きしている暗い子だったって(笑)。ちょっと変な子供ですよね。虫眼鏡でじーっと見て描いて。見たものをリアルに描くことが出来なかったから必死に目に焼きつけようとしていたんですかね。あ、今はその虫眼鏡がカメラのレンズになっているのかも。ずっと同じことしてますね(笑)。
虫眼鏡もカメラも、絵を描く上で手助けをしてくれたんですね。

- カラー用の現像機でプリントする
ことで、セピア調色やブルー
調色に似た色調になるのが
お気に入りだそうだ。
写真はらくだのおしり。
そう、手助けしてくれるかわいい道具なんです。
撮った写真を見てもそうですが、カメラっていうもの自体、作品のエッセンスになっているというか、なんらかの影響を与えてくれていると思います。さっきも言ったように、違う目線になれたり、あと知らない人に「撮らせて」って言ってコミュニケーションを取るという行為も、絵を描く上で何かしらプラスになっていると思います。そういう意味で、カメラはコミュニケーションツールなんだなって感じます。
表現するものであり、コミュニケーションを取るきっかけを作ってくれるもの。
そう考えると絵も一緒ですね。表現しつつ、コミュニケーションも取れるものだと思います。違うのは、絵は私を通して、ワンクッション置いて出てくる表現なんですよね。写真も私の目線を通したものなんですが、写真は直接的であるのに対して、絵の方が遠いというか、作為が入っているというか、自分の中身を出している感じがあるんです。写真はその一段階前の部分なんですよね。
出来上がった写真は自分の作品だ、という感覚はないんですか?
……それはないですね。写真の技術的なところも、「こういうのがいい写真だ」という見方もあまり解っていないところがあるので。「これいいね」って言われて、「そうなんだ」って思うぐらいです(笑)。
それよりも、この写真を写したとき自分がそこに居たっていう証拠みたいに残ればいいなと思います。写真を撮りに、その場に行ったっていうことがすごく重要なんです、きっと。
「心に余裕があって 心地よい空間を持てる人になりたい」
平尾さんが作品を通して表現していきたいものはありますか?
うーん……旅する気持ちよさだったり、心地よさみたいなことを大事に、描いているときはそのテンションを常に保っていきたいなとは思いますが、表現したいことですか……?
たとえば、見る人に対して訴えたいものや、感じてもらいたいことなどあれば。
そうですね、基本的には見る人それぞれ好きに思ってくれればという感じなんですが、見て嫌な気持ちにはなってほしくないなと思います。よく使われる「癒し系」とか、「フワっとしてる」とか、「イイ感じ」とか、そんな単純な言葉で言ってくれても全然OKです(笑)。
そういう言葉を意図して描こうとは思っていないですけど、日常生活の中のほんの一瞬かもしれませんが、絵を観るのはゆとりの時間だったりすると思うので、そこで嫌な思いはしてもらいたくないですね。

- 砂漠独特の文様が、モノクロ調の色みによって立体感
を増している。らくだの足跡だけが後ろに点々と続く。
旅についての目標はありますか?行ってみたい国だったり、50カ国目指したい!など。
目指せ50カ国!ですか(笑)。そうですね、そういうのもいいですけど、今はどちらかというと落ち着いてきた感じはありますね。昔はもっと上に上にってガツガツしていた感じがあったんですが、今はこのペースを保っていけたらいいなと思います。
今がすごくいい状態なんですね。
うーん、まぁ、理想を言えば色々ありますよ。
こういう絵を描いているからには、自分自身、もう少し心に余裕を持って、心地よいと感じる空間や時間をもっと持てる人になりたいですね。あとは作品を発表していくってことをもう少し積極的にできたらいいですね。それから、旅のイラストと写真を紀行エッセイのような形で本にまとめて、たくさんの人に旅の心地よさを伝えたいです。
また写真展なんていうのもいいかもしれませんね。
写真ですか?そうですね、以前にやった時もとても楽しかったですし、基本的に、見せびらかすの嫌いじゃないですからね(笑)。やっていいんだったらほんと、やりたいですね。よろしくお願いします(笑)。

