作曲家
船村徹さん
「王将」「矢切りの渡し」など、数々の名曲を世に送り出してきた作曲家・船村徹さん。歌で日本人を励まし、勇気づけてきた船村さんにとってのかけがえのない長年の趣味がカメラである。自他ともに認める大のカメラ好きで、所有するカメラは130台ほど。新製品のチェックもかかさないそうだ。「これを買うために仕事をしているようなもの」とカメラを手に目を輝かせながら語る船村さん。
今回は、ひと言ひと言にカメラへの愛情が滲む船村さんのカメラ談義をたっぷりとお伝えします。
プロフィール |
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初めて手にしたニコンカメラは 世界を共に歩いたFフォトミック
カメラを持ち始めたのはいつごろからですか?
高校生のころから本腰を入れてやってました。上京して大学に入ったのが昭和24年ですから、その前だとちょうど戦後ぐらいですね。そのころはまだ、日本のカメラ産業はよちよち歩きでしたし、カメラは貴重品でしたね。まずフィルムが手に入らない、そういう時代です。それでもカメラをやっていたんですよね。
当時、カメラを持っているということは、大変珍しかったんでしょうね。
あまりなかったでしょうね。家に、ドイツ製のスプリングカメラ(※注)がありまして、それを使っていたんです。当時から生意気でしたからね。食べるものもなくて痩せっぽちなのに、スイス製の時計をしてたり、そんなヤツだったんです(笑)。でもね、実際に撮るのが楽しかったんですよ。そのころはモノクロですから現像も自分でやっていましたし、そういうものも含めてカメラ全体が好きだったんですね。
撮影技術はどうやって身につけたのですか?
本をいろいろ買ったりして自分で勉強しましたね。それからね、これくらいまで(手にしたFを指して)のカメラだと、パシャっていうシャッター音でシャッタースピードが何秒かわかるんです。音を扱う仕事をしていますからね、これは職業柄なんでしょうね。だから夜でも撮っていましたよ。うんと練習していましたから、開放で10秒ぐらい、手持ちでもぶれないで撮れたんですよ。
ニコンのカメラも長く使っていただいているそうですね。
20代の終わりごろ、2年ほどヨーロッパで仕事をしていたんですが、その時に持っていたのがFフォトミックなんです。そのころからニコンを使っています。このFはね、僕と一緒に世界を歩いたカメラなんですよ。あの時代のヨーロッパの農村の風景というのは、青春の思い出と共に印象深く残っています。
現在のお気に入りの機種というと?
最近は、今日持ってきたD1X、F5も使っていますし、D100は軽いからちょこっと旅に出るときにいいので、それもよく使っています。でもね、不思議なんですが、このF5などは最近の他のカメラと比べると重いですよね。ところが写真を撮るときに構えると、きっちりと安定感のある重量になっているんですよ。軽ければいいというものでもないんだと思いますよ。弱い相撲取りみたいなものでね、下半身が決まらないんです。これぐらいの重量があるほうが僕は好きですね。
- ※注 スプリングカメラ=ボタンを押すと、前蓋の中に折り畳まれて収納されていた蛇腹とレンズ部分が表れスプリング(バネ)の力で自動起立するカメラのこと。
新製品は買わずにはいられない「カメラシンドローム!?」
カメラをたくさんお持ちだとおうかがいしたのですが。
今はどれくらいかな。たぶん、カメラ本体だけで130台ぐらいはあるんじゃないかな。カメラでいっぱいになってしまってね、それに付随してレンズなどもたまるでしょ。だからね、この前、家一軒建てましたよ。
え! 家を?
例えば、D1を買いましてね、そうしたらD1Xがすぐに出て、ああ、画素数がこんなに上がっているじゃないかって思って買うでしょ。そうしたら今度はD100が出ましたよね。これも一応おさえておかないとっていうことで買っちゃうんです。そうやってどんどん増えちゃうんですよ。新しいカメラが出るとやっぱり気になるんです。次のはどんなだろうって。出たらね、買わなきゃしょうがないんです。
「しょうがない」んですね(笑)。
きっとカメラ病、カメラシンドローム、そういうものにかかっているんですよ。新しいカメラやレンズが出ると、こう体がムガムガッと(笑)してくるんです。それからね、注文してから手もとに届くまでがものすごく緊張するというか、興奮するというか、まだ来ないかなぁ、まだ来ないかなぁって思って、それで仕事が手につかなくなったりするんです。
ところがね、物が届いてその箱を見るでしょ、その瞬間にガクーンと。その後はもう冷静になっているんですよ。そういう感覚は毎回非常に感じますね。
でも、手に入ってからも、何度も出しては眺めてしまうなんてことはありませんか?
ありますね。仕事などで疲れると眺めるんです。私はレンズが好きなものですから、レンズを手に取って眺めていると気持ちが落ち着くんですよ。今は機械で作るんでしょうけれど昔は手で磨いていたんですよ。特にそのころ生産されたレンズを見ているとね、ひとつひとつ丁寧に磨いている職人さんのクラフトマンシップみたいなものが伝わってきて、「俺もいいものつくらなきゃなぁ」と思うんですよ。それでまた仕事ができるんです。かなりオタクな世界ですかね(笑)。
同じ物を生み出す人として、何か人ごとではないように感じるんでしょうね。
そうそう。レンズはそういう対象になりましたね。でもレンズもそうだけれど、カメラもすごい技術だと思いますよ。このあいだ復刻したS3だって、来るまでにずいぶん時間がかかるなぁと思ったけれど、設計図を起こしてビス一本一本から作ったんでしょう。そう考えると時間がかかって当然だし、あの値段でも安いもんですよね。



