旅で覚えたカメラは 旅に出るときのみ使用!?
そもそも、カメラを始められたのはいつ頃からですか?
旅を始めてからです。初めて行った香港、シンガポールに持っていったレンズ付きフィルムでシャッターを押したのが、人生で初めてのカメラ体験ですよ。それまでは、友達に撮ってと言われても、「私はそういうの、わからへんから」ってかたくなに断っていたぐらい、まったくさわったことがありませんでした。
初めの旅では写真を撮るという意識は、まったくなかったんですか?
最初はなかったですね。カメラを持っていても、あまり撮ろうとは思いませんでしたね。でも次に行ったインドで人を撮ったんです。そうしたらみんないい顔してるんですよ。人がいいもんだから写真が絵になるんですよね。そう思って周りを見たら、大きなカメラを持ってバシャバシャ撮っている人がいるんです。それを見たら、私もああいうカメラで撮りたい、写真がうまくなりたいって思ったんですよ。

- 「オレは5分間目を開けていられる
ぞ!」と言って、実際にやってくれている
ところを撮影。(フィリピン)
それから旅にカメラは必需品になったんですね。
でも、上達しないんです。旅に出たとき、1年に1回ぐらいしか撮らないから(笑)。
普段は撮影されないのですか?
本当は会社に行く途中とか、いつもカメラを持ち歩いて撮りたいんですけど、そうすると会社にたどり着かないんですよ。街を歩いていると、「これも撮りたい、あれも撮りたい」って思うものがたくさんあるんですよね。でも、いちいち撮っている時間がないんですよ。「撮りたいのに時間がないし、でも撮りたいし、あぁ、もう!」ってなってしまうので、普段は撮らないようにしているんです。撮りたくなるからあんまり周りを見ないようにもしています。せつないですよ……。
では、普段撮れないうっぷんを旅に込めて?
ええ、もう爆発的に撮ってますね。でも、それだけでもどんどんうまくなってるかな、なんて。こんな私でも撮れるんだから、カメラはハードじゃなくて、ハートで撮るものだとつくづく思いましたね(笑)。
この世でいちばん楽しいのは レンズ越しに自分を見ている目を撮ること

- 子どもたちにとって、川は一番の
遊び場!(ラオス) 
- 日傘をさす女の子。日差しが強い
ラオスでは、女の子は日傘を
さすのが定番!(ラオス)
どれを見ても、見ていて元気が出るような本当に素晴らしい表情の写真ばかりですね。
本当ですか! ありがとうございます、うれしいです。私も自分の写真がすごく好きなんです(笑)。本の文章や、ドキュメンタリーの番組を褒められるよりも、写真を褒められるのが実はいちばんうれしいです。
何がこの世でいちばん楽しい瞬間かって写真を撮っているときだと思いますよ。旅先で写真を撮っていると、「楽しいー!」って気分で昇天しそうになりますよ(笑)。うわ! もう考えるだけで楽しい!!
(笑)どうしてそんなに楽しくなるのでしょうか?
私のようなどこの馬の骨ともわからないような人に、心を開いてくれて、いい笑顔を見せてくれる。それをバシャッと撮る瞬間に「ビビッ」ってくるんですよ。その笑顔のピュアさにも心打たれるんですよね。私、世界中の笑顔をお持ち帰りすることが夢なんです。
笑顔ですか?
みんないつも笑いたいと思っていると思うんですよね。楽しく過ごしたいというか。怒りながら過ごしたいという人はいないのではないでしょうか。
この“笑顔”を撮るためのコツはなんですか?
その人を笑わせることじゃないでしょうか。別に、写真を撮るために笑わせるのではなくて、いつも人を笑わせるのが好きなんです。まずは話しかけて笑わせて、仲良くなってから撮る。たとえばお土産を売りつけてくるおばちゃんがいたら、「あんまりしつこいと写真とっちゃうぞー」っていうジェスチャーをしたりして。
言葉はやはり通じないのですか?
そうですね、英語も得意ではないですし、少数民族の人もいますからね。でも言葉は通じなくても、カメラを見せて「あなたが、とっても素晴らしいから、だから写真撮ってもいい?」ってジェスチャーをしてから撮ります。それで問題なく、通じますよ。
たとえば撮ってくれと向こうから言ってくることもありますし、カメラを渡して「こうやって、ここをぎゅーっと押すんだよ」って教えてあげて撮ってもらったりすることもあります。カメラがひとつあると、すごくコミュニケーションがとりやすいんですよ。
カメラのおかげで仲良くなれる。
ええ。だから私は、望遠で遠くから人を撮ったりすることはありません。絶対に本人に断ってから撮ります。なによりも、レンズの向こうから私を見てくれる目が撮りたいんです。
その気持ちが伝わって、あのような笑顔の写真になるのでしょうね。
でも、私は日本でめったに撮らないんですけど、友だちを撮ったことがあるんです。ファインダーをのぞいたときって、片目をつぶるから自然と自分の口角が上に“にーっ”て持ちあがるじゃないですか。それが笑顔みたいでいいなぁと思っていたんですけど、友だちを撮ったときに「あんたのその顔笑うで!」って言われて。
自分ではわからなかったんですけど、私すごく大口を開けて“わひー” って(笑)すごい顔しているらしいんです。もしかしたら、みんなそれを見て笑っているのかもしれないですね(笑)。
訪れた国が身近に感じられることが 旅のいちばんの魅力

- 水汲みのお手伝いをする少女。
うつむきながらはにかむ姿が
とても愛らしい。(モロッコ) 
旅のいちばんの魅力はどこですか?
旅をしているときももちろん楽しいですけど、1回その国に行くと帰ってきてからその国が身近に感じられるのです。前だったらニュースを見ていて事件や事故があっても、知らない国、よその国って思ってどこか他人ごとでしたけど、「え、モロッコで地震? ラオスで洪水? どうしたんだろう、大丈夫かな」って人ごとではなくなってしまう。それは日本に帰ってからも、すごくいいなって思うところですね。
全世界、人ごとではいられない気持ちになりたい。
そう、いつも心のなかで、「あぁ」って心配したい。それで、自分になにかできるわけではないんですけど、大丈夫かなって思える。そして、向こうも私という人間を知って、遠い空から「日本は大丈夫かな、てるこは元気かな」って心配してくれて、思ってくれる。そういう思い合う気持ちが広がれば、世界平和につながるんじゃないかな。お互いがいつまでも、よその国のことなんて知らないって言ってたら、分かり合える日は絶対に来ないと思います。
今でも旅で出会った方と交流はあるのですか?
ありますよ。見て、すごくいい写真だなって思ったものは送ってあげてますから。泊まったお家だと、かなりの枚数を撮りますから、アルバムにして送ります。それで、向こうからも手紙をもらって、やり取りしています。だから、焼き増し貧乏なんです。現地で使ったお金が3万円ぐらいなのに、焼き増しではその何倍もかかったりして(笑)。
今後もこのひとり旅を続けて行くのですか?
ええ、全世界を旅するのが夢ですからね。会社勤めをしていますし、この先どうなるのかわからないというのが正直なところですけど、ま、夢は夢ですから。
出せるのならいつか写真集は出したいですね。自分で、笑顔の写真を集めた『世界の笑顔に恋してる』っていう写真集を作ったんですけど、そういうのにちょっと自分の言葉を添えたりして、1000円ぐらいのもので。そんなたいそうなものじゃなくていいんですよ。
本当に、写真が好きなんですね。
ねぇ。まさかこんなに好きになるとは。でも、やっぱり写真はいいですねぇ。去年の10月に旅に出て以来カメラを持っていないですから、今日自分の写真を見ていたら、またすごく撮りたくなってきました。

