talk! talk! talk! 作家・C.W.ニコルさん


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生物の多様性は未来の可能性 「一緒に未来を考えて欲しい」

森の再生活動というのは、具体的にどのようなことをされているんですか?

まず、我々の森は原生林ではなく2次林です。昭和30年頃に1本も残らず伐採され、その後、杉やカラ松を植えて手入れもされずやぶになっているような所でした。ちなみに日本に原生林はどれくらいあると思いますか? 日本の森全体の約2%しかないと言われています。

たった2%!

それぐらい減ってしまったんですよ。それ以外の森は全て人の手が加わっているんです。そういう荒れ地に立派な木を育てるんです。木には2種類あって、切り株から新しい芽を出すものとそうでないものがある。栗、ナラ、やなぎなど、切り株から芽を出すものは切り株が残っていれば芽を出すんです。ところが一本の切り株から何本もの芽が出てしまうんです。そのままでは木にストレスがかかってしまい、100年おいておくとどれかは負けてしまう、生き残っても貧弱で大木ができないんです。僕らはどの芽を残すか考えながら、他の芽を間引くんです。ほおっておくと300年かかるものも、100年くらいで大木になることができるんです。
 他にも、日本の森は手入れをしないとかならず笹が生えてきます。その笹を刈ってやることで何十年もその下に眠っていた木の芽を発芽させてやったり、木を絞め殺してしまうつるや雪の重みで折れてしまった木を取り除いたりもします。もちろん、笹やつるを全て刈るわけではありません。need everything! 森には多様性が必要です。多くの種類があれば、それぞれの植物につく虫が増えます。その虫が新たな植物を運んでくる。森に多様性があれば様々な可能性が広がって、それが未来につながっていく。だから笹が必要な場所には笹を、つるを残さなければいけない場所にはつるを残します。

どちらを残すか、その判断をつけていくことが難しさなのでしょうね。

Photo(撮影・C.W.ニコル氏)
ニコルさんと一緒に再生活動を行っている松木さん。
ニコルさんの自宅にて撮影。

一緒に森を整備している松木さんと一緒にけんかしながらやっていますよ(笑)。でもね、困るのはそれを見た知ったかぶりの人たちが、木を伐っている、森林破壊だと言ってくるんですよ。ちゃんと林業を勉強していない人たちが多すぎるんです。林業とは言わなくても、今の人達は自然を知らなさ過ぎるんです。自然の多い田舎に住んでいる人だって知らないんですからびっくりしてしまいます。僕が最初に日本に来た頃は、日本人はどんな西洋人たちよりも自然をよく知っていたと記憶しています。子供に、あれは何の鳥? 何の花? と訪ねると、だいたい教えてくれました。今はまったく知らないでしょ。

自然を教えられる機会も、自然に触れる機会もなくなってきているということなんでしょうか?

それ以前に興味がなくなってきているんでしょう。テレビを見て育っているから脳が遠くのものを見ようとしなくなっている。目がよくてもダメなんです。子供たちと森を歩いて100m先に鳥がいるよと教えても、どこどこ? って言うばかりです。ナラの木の所で動いているでしょって言っても通じない。

まずはもっと多くの人に自然に興味を持ってほしいということですね。

日本には多くの森林があります。長野県は県土の約78%が森林です。それなのに長野県民で森を歩く人は少ないんです。せいぜい山菜を採りに来る人ぐらいで、普通の人が休みの日に森林浴に行こうとはしないんです。子供が森で遊ぶということもない。長野県だけじゃない、東京にいたって近くの公園や神社に木を見に行く人が少なすぎるんです。アファンの森にはいろいろな人が来ます。ですがここまで来なくても、日頃から身近にある自然を大事にしてほしい。そして、一緒に未来を考えて欲しいんです。

野草や動物など森での出来事はカメラマンに

本日はニコルさんが撮影された写真を数枚お持ちいただきました。

Photo(撮影・C.W.ニコル氏)
船内の様子を撮影。この時は『裸のダルシン』(2002年)を執筆中だったそうだ。
Photo(撮影・C.W.ニコル氏)
船室から見えたアラスカの景色。

はい、これはアラスカですね。客船の“飛鳥”に乗って世界を旅しながら本を書いていたんです。僕は執筆するときには船に乗ったり、旅館に泊まったりして書くんですよ。船はどこを回ってもいい、そうやって集中して書くんです。これらは執筆の合間にちょこっと撮った写真です。

こちらの写真はなにを写されたものですか?

Photo(撮影・C.W.ニコル氏)
墓石の裏にはマルタ島で命を落とした69人の名前が刻まれている。
Photo(撮影・C.W.ニコル氏)
旧日本海軍戦没者が眠る墓。ここに初めて訪れたという池田さん。

地中海のマルタ島にある日本海軍のお墓なんです。僕には森というイメージがあると思いますが、小説を書く上での題材はいつも海なんです。海は僕のライフワーク、大好きですよ。ちょうど日本海軍の取材をしていたとき、第一次世界大戦時に地中海に派遣された士官の書いた手記を発見したんです。それがとても素晴らしくて、何とか世に出そうと僕が再編集をして、『日本海軍地中海遠征記』という本として出版したんです。
マルタ島には今でもその戦いで亡くなった69人の日本海軍の墓が建っているんです。80年続けてマルタの人々がお墓を手入れしていると聞いて、僕は本当に感動しました。それで、この本の編者としての印税をお墓に寄付したんです。

写っている方はどなたですか?

池田武邦さんという有名な建築家です。池田さんのお父さんは、マルタに来ていた日本海軍の駆逐艦の艦長でした。彼はマルタ島にまだ行ったことがないというから、一緒に行こうと誘ったんです。そしてお墓の前で撮りました。

こうして旅に出かけるときに写真を撮られることは多いのですか?

実はね、最近は撮る機会が減ってきてしまったんです。若い頃、エチオピアにいた頃かな、写真に凝っていてよく撮っていましたけど、今はこうして旅に出る時に撮る感じですね。僕には普段からカメラマンがついていて、森の写真は彼によく撮ってもらっているんです。森の動物や野草……季節ごとにいろいろな野草が出ますから、結構頻繁に撮ってもらいます。あとは雪下ろしの時の写真なども撮ってもらいました。僕自身も撮ってもらいますよ。

アファンの森のホームページにもたくさんの写真が掲載されていますね。

ホームページだけでなく、僕も著書にも彼の撮った写真を掲載しています。森での出来事や活動の報告、そして森の美しい自然を知ってもらうためにも必要なことですから。

日本を緑豊かな美しい国に「平和な国をみんな望んでいるはず」

今の季節、森の仕事は忙しいのですか?

雪が溶け始めてからはとても忙しいです。去年初雪が早く来たからまだ葉っぱのついた枝が重みを増して、たくさん枝が折れたんです。それをちゃんと伐らないと病気が入ってしまうので……。

ではもう、すぐにでも黒姫に帰りたい。

そうです。また松木さんとケンカしながらね(笑)。僕と松木さんは、この森に30年はかけようと言っているんです。松木さんはこの森に来て14年、だからあと16年はこの森を見続けようと思っています。その時僕は生きていたら79歳です。

その頃には理想の森ができているのでしょうか?

いいえ、僕たちの望んでいる森を見ることはできないでしょう。でもその頃にはある程度、この先何年で森がどうなっていくのかということが読めるようにはなっていると思います。森の仕事というのはそれぐらいスパンの長いものなんです。森の未来を見ることはできませんが、今可能性を与えることで必ず望むような森ができると信じています。僕は未来を信じています。

執筆活動を通して、そして森の再生活動を通して、ニコルさんが一番伝えたいことはなんですか?

C.W.ニコルさん

美しい生き物たちと自然を破壊して、この地球に人間だけ生き残ってどうなるのよ、と。水も、空気も、未来を生きる子供もダメにしていったいなんになるの?人は緑がないとどう猛になり、緑のある美しい国にいれば平和を求めるはずなんです。イラク戦争を起こす金があるのなら、半分砂漠になっているあの土地にもっと緑を増やせばよかったんです。その点日本にはまだ豊かな緑がある。だから日本の人にはまず、日本をちゃんと美しい国にすることが大事なんだと言いたいです。森、川、干潟、全部守れば海もきれいになる。緑をふやせば街の空気もきれいになって病気も減ります。平和、美しい国、みんな望んでいるはずです。

1人1人の意識が、美しい日本をつくる第一歩になっていくのですね。私も、家の近くにある緑から見直してみようと思います。本日はありがとうございました。