talk! talk! talk! 早稲田大学教授 (工学博士)・吉村作治さん


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写真撮影に大事なのは 撮影者の心や考えをどう表現するか

Photo(撮影・吉村作治氏)
ギザの三大ピラミッド

発掘現場では記録のために写真を撮影されているということですが、吉村先生ご自身はどのようなことを意識されて撮影するのですか?

うーん……僕は撮る行為そのものが非常に好きなんですよ。楽しいから撮っているんです。
 でも確かに「記録する」ということは写真の重要な役割ですよね。ですがそこに重点を置くと、ビデオカメラにはかなわない。ひとコマひとコマ写すのと違って連続性があるわけですから、記録する能力がそもそも違うのです。現に発掘現場にはカメラと一緒に、ビデオカメラを必ず持っていきます。

カメラにとって重要なのは記録することではないということですか?

最終的に突きつめればカメラは記録するためのものかもしれないけれど、それよりむしろ、カメラは写す人の心の内や考え、生き方を表すものだと僕は思うのです。もっと言えばその人の哲学や文化を写しているのです。
 カメラを始めてから、僕には自分の写っている写真がほとんどないんですよ。それは自分を記録しておくための記念写真という撮り方ではなくて、自分が何を見てどう受け止めたのか、どうとらえたのかを表現したいと思って撮ってきたからなんでしょうね。昔から、自己をどう写真に表すかということを考えて撮影していたのかもしれません。

なるほど。

Photo(撮影・吉村作治氏)
砂漠を行くラクダ

だから自分で撮った写真にはすべて自分のストーリーがあって、それについて語ることができます。記録することが大事なのではなく、大事なものだから記録するということです。どう大事なのかを写真は表現してくれる。そうでなければ写真は芸術という分野に入らなかったと思いますよ。

写真で自己表現することができるからこそ芸術性も生まれる。

そうそう。でも写真で自己表現するというのはダンサーや役者の自己表現とは意味合いが違いますよね。自分を表現することではなく、自分が受け止めたことをどう形に表していくかという、間接的な表現方法になるんです。だから僕には写真がより哲学的に見えるのです。プロカメラマンの撮る写真などは絵画に近いと僕は思います。

写真の説明をしても意味がない 見る人が自由に感じ、解釈をすればいい

Photo(撮影・吉村作治氏)
アスワンの夕景
Photo(撮影・吉村作治氏)
ギザの三大ピラミッドとラクダ

エジプトは、被写体としてもとてもおもしろい場所なのではないですか?

そうですね……でもエジプトに限らず、写真を撮るならどこでもおもしろいですよ。たとえエジプトまで来て遺跡を撮ったとしても、ただ撮るだけならどうってことないつまらない写真になるんです。大事なのは、やはりその人の撮り方や気持ちです。それがないのならば、記念に絵ハガキを買えばいいわけですから。

吉村先生が写真を撮りたいと思うのはどのようなときなのですか?

そういう意識は持っていません。先ほども言ったように、僕は撮る行為が楽しくて写真を撮っているんですよ。ただ撮りたいから撮っているのであって、たとえば被写体としておもしろいから撮ってみたくなるといったような考えはありません。撮りたいという欲求があれば、どんな被写体だっておもしろいはずなんです。撮影時はただ夢中になってシャッターを押しているだけです。

でも、一枚一枚にストーリーが存在するのですよね?

もちろんそうです。でもそれは僕個人の写真の解釈方法であって、僕がそれを見る人に説明しても意味がないんですよ。見る人それぞれが、好きに受け取って好きに解釈をすればいいのです。絵画も同様で、それが芸術の楽しみ方だと思います。

吉村先生がどう考えて撮ったかを知ることより、見た人が自由に感じればいいということですね。

そうです。でも僕はプロのカメラマンではありませんし、人に写真を見てもらいたいという気持ちはないんです。撮った写真を自分で見ているだけで十分楽しいんです。著書の中で、僕の撮った写真が多く使われていますが、僕にとってそれはあまり重要なことではありません。僕にとっての写真の楽しみは、「撮る」という行為そのものと撮った写真をあとで自分で見ることです。それができればいいんです。

「発掘をはじめてからずっと夢の中で生きてきたようなものなんです」

吉村作治さん

エジプトの一番の魅力とはなんですか?

よく聞かれますが、難しいんですよね(笑)。ピラミッドだけならメキシコにもあるし、砂漠が好きならサハラに行けばいいんです。何が、というよりもエジプト全部が魅力なんですよね……それが体にピタっとおさまる感じなんです。

おさまる感じ?

エジプトにある遺跡、人、食べ物、環境、ひとつひとつの要素がすべて混合されてひとつの文化、歴史になっているんですよ。その文化が自分に合うか、合わないかだと思うんです。日本の文化も好きですが、美的センスなどはエジプトの方が僕にとっては体になじむんです。

だからこそこれだけ長く発掘を続けることができたんですね。

40年間、一度も発掘をやらなかった年はありません。これはおそらく世界のエジプト研究者のなかでも数少ないと思います。

では最後に、吉村先生の夢を教えてください。

夢ね……僕は夢って言葉大好きなんですよ。発掘をするということ自体が僕の夢でしたから、この40年間はずっと夢が叶っている状態なんです。ずっと夢の中で生きてきたようなものなんですよ(笑)。

40年も夢が叶い続けているなんて素晴らしいですね。

ええ、だからもう今はすべてOK! という感じです。よく「何の遺跡を見つけたいですか?」と聞かれるのですが、そんなことを考えているうちは何も発見することはできないんです。誰々の墓を見つけようとか、この辺りを狙ってやろうなんて思っていては見つからないものです。結果は神様にゆだねて、ただ僕は一生懸命に発掘作業をするんです。そうすると、まるで神様が、“そろそろ見つけさせてやろうかな”、なんて言ってくれたみたいに突然見つかってしまうものなんですよ。
今後の夢としては、より多くの子供にエジプトに興味を持ってもらって、エジプト学者がもっと増えるといいなとか、細かいことではいろいろあるんですけどね。でもやっぱり1番の夢は、このまま死ぬまで発掘を続けることですね。

ぜひその夢を実現させてください。新しい発見があったという一報を耳にする日を楽しみにしています。本日はお忙しい中ありがとうございました。