talk! talk! talk! スポーツライター・青島健太さん


バックナンバー

プロ選手の要素とは 合理的な動きと客観的視点

Photo(撮影・青島健太氏)
松井選手が所属するニューヨークヤンキースの
スプリングキャンプの取材に来ました。
ブルペンに写る影は撮影者(青島)です。
Photo(撮影・青島健太氏)
フロリダ州タンパにあるホームグラウンド、
レジェンド・フィールド球場の
チケット売り場。

現在はスポーツライターとしてスポーツを伝える立場に立たれているわけですが、客観的に見て、プロ選手に必要なこととはなんだと思いますか?

合理的な動きを追求する姿勢ですね。たとえば、手を横に振りながら走る女の子に、そのスタイルで42.195kmを走れと言っても、走りきれるかどうか? まずは進行方向に、手を前後に振ることが必要です。けれど40kmを走り抜くためには、それだけ直してもだめですよね。首の角度や腕の振り方など、動き全てにおいて走りに最も適したスタイルで走らなければなりません。合理的な動きを追求するということは、動きの無駄を取り除くということです。

そのためには自分の無駄な部分を認識していなければいけませんよね。

もちろん、そういうことです。膨大な練習を通じて途方もない量の無駄を体験し、理解してこそ、ようやく自分のものにできるのだと思います。自分を徹底的に客観視するというのも、プロフェッショナルな選手に必須の条件です。たとえばイチロー選手(注2)などは典型的ですね。彼は、自分自身を完全に第三者の目で見つめることができる、希有な選手ですよね。彼こそ真のプロフェッショナルですよ。

たしかに、イチロー選手の発言は分析的でクールなところがありますね。

メディアに登場する姿を見ると、ストイックすぎるくらいのクールな印象を抱きがちですが、選手としてすごく素直なあり方だと思いますよ。「この間のホームランは、気合いでがんばりました!」なんて言ってくれたらマスコミ的には面白いのでしょうけど(笑)。でも彼は、選手としての自分を正確に客観的に認識し、それを視聴者に包み隠さず話してくれているわけです。自分の負の部分とも真正面から向かい合って把握できるからこそ向上できるんですね。

客観的視点もプロとしての重要な要素なのですね。

自分を客観的に見る手段として、写真やVTRで自分を見るということも効果的です。第三者の視点で自分を認識することができますし、自分の思い込みが明らかにわかります。(バットスイングをしてみせて)こうやって、自分では水平に振っているつもりでも、写真や映像でチェックしてみて初めて、実は右肩が下がっているということに気づいたりね。

  • 注2 イチロー選手=本名:鈴木一朗。愛知工業大学名電高校からドラフト4位でオリックスに入団、7年連続首位打者となる。3度のリーグMVP受賞、7年連続ベストナインに選出され、7年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞する。2000年11月フリーエージェントとしてシアトルマリナーズに移籍。2001年アメリカンリーグの首位打者、盗塁王、新人王や日本人初のMVPを獲得した。

確実に、簡単に撮れるデジタルカメラ 『行動と歩調が合うことが魅力』

Photo(撮影・青島健太氏)
フェンス越しに松井選手の通過を待つファンたち。
Photo(撮影・青島健太氏)
大の大人もネットにしがみついてお目当ての選手を
追っています。
Photo(撮影・青島健太氏)
球場で発見。松井選手にちなんだ寿司(?)弁当。
“SUSHI #55”。
Photo(撮影・青島健太氏)
松井選手の記念すべき第一号ホームランボールが
沈んでいる池。誰も取りに行かないという理由が見てみて
わかりました。汚いんです(笑)。

取材時にはカメラを持参されるのですか?

いつもではありませんが、持って行く機会は多いですよ。撮った写真を記事に掲載する場合がありますからね。取材現場では、僕はわりと選手の近くまで行けることがあるので、その記事のイメージ写真などを撮ってきてほしいとカメラを渡されることが多いのです。もちろん許された範囲の中での撮影にはなりますが。
それ以外にも、記事を書く際の記憶を助ける記録としても使用しています。選手の様子を撮影することもありますが、グラウンドがどんな感じだったかとか、空がどんな感じだったとか、その時の雰囲気をつかめるような写真もよく撮影します。もちろん、強く印象に残ったことを記事にするわけですが、写真を撮っておくことで細かい部分まで思い起こしながら書けるので、すごくありがたいですよ。

その際使われるのは、フィルムカメラですか?それともデジタルカメラですか?

昔はフィルムカメラで撮影していましたが、今はデジタルカメラです。最近はインターネット上のホームページなどに載せる記事も多いので、デジタルカメラが何かと便利ですよね。

デジタルカメラを使われるようになった理由というのは他にありますか?

デジタルカメラは、撮影者に「動きながら撮る」自由を与えてくれるツールだということですね。まず軽いし、簡単に撮ることができる。取材中は動き回っていますから、フィルムカメラのように一回一回フレームをのぞいて構えてという手間が結構ネックになるんです。それにフィルムカメラは撮影可能枚数も限られているでしょう。だから一枚一枚を慎重にならざるを得なくなる。でも、デジタルカメラなら、いらない画像をその場で削除してゆけばいいわけですから、枚数も気にすることなく好きなときにシャッターが押せるのです。
それに、素人でも確実に撮れるようになりましたよね。フィルムカメラの精度とはまた違うのでしょうけれど、そこで見たものをきちんと記録してくれる。室内の撮影なのにスピードライトを使わなくてもすんでしまうことも多いので、とても助かります。

取材においては、簡単に確実に撮れるということ、そしてフットワークの軽さが重要になってくるのですね。

そうです。それに、気持ちの面でも負担がなくなりました。フィルムカメラを持ち歩いていたときは、「撮らなきゃいけない」という意識が働いていたような気がします。たとえば、旅行に出かけても、有名な建物の前では必ず記念撮影を撮らなくちゃとか、あっちもこっちも写真に撮っておきたいという気持ちが大きくなってしまうことってありますよね。それよりもまず、自分の目でよく見て楽しむことの方が大切なのに。取材だって、写真を撮ることよりもその場でよく見て感じることが大事なわけですから。

デジタルカメラの場合、そうした気持ちの負担がなく、現場を感じながら撮れるということですか?

ええ、いろいろと歩き回りながら、気軽にパシャ、パシャと撮ることができる。やはりこの手軽さがいいのでしょうね。僕にとって行動と歩調が合うという点がデジタルカメラの一番の魅力なのです。

なるほど。自分のリズムで撮ることができるということですね。

最近では取材陣の中でもデジタルカメラ使用者は増えてきていますよ。以前は、カメラマンが撮り終えたフィルムをすぐに現像に出すために、今か今かと待ち構えているアシスタントの姿をよく見かけましたけど、今はカメラマンがデジカメで撮ったらその場で自分のパソコンに取り込んですぐに編集部などへデータを送ったりしていますからね。便利になったと思います。

公平な目でスポーツの魅力を伝えたい

青島健太さん

取材時に気をつかっていることは何ですか?

先ほども言ったように、その場でよく見て感じること、そして選手に迷惑をかけないことですね。

写真を撮るということが、迷惑になるということはありますか?

それはあります。もちろん取材ですから、ある程度は仕方のないことですが、急にスピードライトをたいたり、写真ばかり撮っている取材者を嫌がる選手もいます。選手に迷惑をかけることだけは絶対にしたくないですから、そのあたりには気を使います。そういった点でもデジタルカメラはいいですよ。シャッター音が静かなうえにスピードライトも派手でないから、撮る相手をびっくりさせなくてすみます。小さいから圧迫感もありませんし、毎回、「あっ撮られた」という感じがしないから、撮られる方も自然体でいられるようです。

スポーツライターとして気をつかっていることはありますか?

野球を長くやってきましたから、それ以外のスポーツを野球に置き換えて説明してしまうことがあるんですよ。僕に限らず野球好きな人って、とかく、他のスポーツの話を「野球で言えば……」と例えたりしがちだと思うんですよ。野球に例えて説明したりすることは、野球好きにとっては簡単なことですが、そういうラクな方向に安易に流れないよう、できる限り努めています。

逆に野球選手の経験が役に立つ場合もありますよね?

もちろんありますよ。体力面でも精神面でも、選手をやってきたからこそ理解できたり、予測がついたりすることも多いです。ただ、思い込まないよう気をつけるようにはしています。野球ではこうでも、他のスポーツにそれがあてはまるとは限りません。野球だけに固執せず、公平な目でものごとを見つめていけたらと思います。

これまで、多方面からスポーツを見つめてこられた青島さんの考える、スポーツの面白さは何でしょうか?

たとえば、僕の入った高校の野球部は、1年生が入部するまで部員が10人しかいない弱いチームでした。ところが最終的には関東大会に出て、甲子園を目指すチームにまで成長しました。確かに高校生の吸収力はずば抜けていますから、練習すればそれだけぐんと伸びる時期ではありました。ですがその伸びというのは、やはりスポーツならではのものだと思うのです。昨日と今日が違う。そういう伸び方をするんですよね。
 甲子園を目指すチーム、ましてや優勝を狙うようなチームではもっとたくさんの奇跡やドラマが起きています。他のスポーツでも然り。そのことに人は感動を覚えるのでしょうし、それがスポーツの面白さであり、素晴らしさだと思います。もちろんいくら練習を積んだからといっても、それだけで勝てる世界でもありません。ですがそれも人がスポーツに夢中になる理由のひとつなのでしょうね。

なるほど。今後も、スポーツの楽しさを現場から直球で届けてくださることを期待しています。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。