女優
中村麻美さん
16歳のときに映画の主演女優として衝撃的なデビューを飾った女優・中村麻美さん。個性的なキャラクターを多く演じ、強烈な印象を与える演技派として若手女優の中でも異彩を放つ存在である。
仕事の話をすると瞳を大きく開き、「楽しい!」と語る中村さん。今回は、趣味の写真のことはもちろん、役づくりの話から今後の目標まで、女優としての思いをたっぷりと語っていただいた。
プロフィール |
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映画の主演で女優デビュー 『辛いよりも、とにかく楽しかった』
女優を目指そうと思ったきっかけから教えていただけますか?
両親が大の映画ファンで、小さい頃からいろいろな映画に触れてきました。そんなある日『羊たちの沈黙』(※注1)を家族で見たときに、主演のジョディー・フォスターのものすごく力強い目に惹かれ、「女優としても、ひとりの女性としても、なんてかっこいいんだろう」と思ったんです。作品に引き込まれたというより、その演技に衝撃を受けたんです。そのとき「自分もこうなれたらなぁ」と思ったのが、女優を目指そうと決心したきっかけです。
オーディションに合格されて、女優デビューと映画初主演が決まったんですね。
そうです。女優になろうと決めてからは、毎日のようにオーディション雑誌を見ていろいろと調べました。絶対に映画で女優デビューするんだという強い思いはあったのですが、どのオーディションもピンとこなかったんです。ところが高校1年の夏に“『ファザーファッカー』主演女優募集”という記事を見つけて、ほとんど直感で、「ああ、これだ!」って思ったんです。
この映画の原作は、内田春菊さんの自伝として当時ベストセラーになりました。かなり衝撃的な内容だと思いますが、この作品のどのようなところに惹かれたのですか?
たしかに衝撃的なストーリーだと思いました。でも主人公は、どんなに辛い境遇におかれても、すごく強い意志を持って立ち向かっているんです。その姿が、女優になりたいという強い意志を持っていた自分とシンクロしたのだと思います。だから、この役は絶対私がやる、何が何でも受かってやる! という気持ちでオーディションを受けたんです。
はじめての映画撮影は、いかがでしたか?
はじめての経験でしたので、やはりプレッシャーはありました。撮影が進むにつれてたまっていくストレスを、食べる事で紛らわせていたために、撮影途中なのにすごく太ってしまって……。だけど、それでもすごく楽しかったんですよ。演じることが楽しくて楽しくて。
プレッシャーの重さを差し引いても?
そうです。それと、すごく強気だったんです。どんなにきついシーンでも、私は絶対に負けないんだという気持ちを絶えずもちながら撮影に臨んでいました。
- ※注1 『羊たちの沈黙』(1991・米)=1991年度のアカデミー賞主要5部門を独占したサイコサスペンスムービー。猟奇的な連続殺人事件の捜査に加ったFBI研修生クラリスと、捜査の協力を頼む元精神科医の殺人鬼レクターの奇妙な関係。そこに、彼から得たヒントをもとに真犯人を追うストーリーが複雑にからみ合い、恐怖と緊張感を強烈に印象づける名作として現在も人気が高い。
『白い船』で見せたナチュラルな演技 役づくりは「何も考えずに子供と遊ぶこと」
中村さんは『富江』(※注2)『東京ゴミ女』(※注3)『火星のカノン』(※注4)など、演じる上で一筋縄ではいかないような、個性的な役を多く演じていらっしゃいますが、役づくりはいつもどのようにされているのですか?
まず脚本を読んで、台詞から感じ取ったものをガーっと箇条書きで書き出していくんです。“青い空”とか、“クサイ台詞”とか、本当に他愛もないことなんですけどね。あと、絵を描いたりもします。コンテとまではいかないんですけど、イメージを落書きみたいな感じで描くんです。そうして、撮影に入る前にある程度のイメージを固めておくのです。
手を動かしながら役をつくり上げていくんですね
そうですね。頭で考え出すと自分にぐーっと入り込んでしまって疲れてしまうから、どこかで気を抜きながら、手を動かして遊びながら役づくりをするんです。
それから、自分でその役の設定を考えて、作り込むのが好きなんです。『火星のカノン』という映画では、髪をボサボサにしたり、マニキュアを塗ったあとにわざと剥がして、2週間前に塗ってそのままといった雰囲気の爪を作ったりして、ボロボロの女の子というイメージを作りました。そういう作業をひとつひとつ行なうことで、役柄を演じる状態に自分の気持ちを持ってゆくのです。

- 『白い船』(2002年 監督/錦織良成)
子供たちはある日、校舎の窓の外を通る白い船を
見つける。仕事に自信をなくしていた女性教師と漁村の
人々を巻き込みながら、あの白い船に乗りたいと
行動を起こしてゆくが……。
島根県平田市の小さな漁村で起きた実話の
エピソードを元に作られた、見る人に
忘れかけていた素直な心を思い起こさせる
感動のストーリー。
2002年に公開された映画『白い船』では、これまでとは少し違った役柄にチャレンジされていますね。
そうなんです。はじめに『白い船』のオーディションの話をいただいたときびっくりしました。まず『白い船』っていうタイトルからして、今までと違う!って(笑)。いわゆる“感動もの”の映画はやったことがありませんでしたし、自分が学校の先生を演じることになるとは思ってもみなかったので。
静香先生という小さな学校の先生役でしたね。教師という仕事に自信をなくしながらも子供たちと向き合っていくという……。
まず脚本を読んでみて、ずいぶん気持ちのいい映画だなと思いました。それと妙に気に入ったシーンがありまして、そこを読んだときに鳥肌が立ってしまったんです。
どのようなシーンだったのですか?
静香先生が久しぶりに実家に帰ってきて、家の側の田園の中にたたずんで、風にふかれているシーンなんです。そのシーンで静香先生は、自信をなくしていた教師という仕事をまた続けて行こうと決心するんです。このストーリーの軸は、子供たちと白い船の交流を描くことにあるのですが、静香先生にとっては、そこが一番大事なシーンなんです。脚本を読んでいたらこのシーンの風景が浮かんできて、本当に風を感じたんです。オーディションの時に、監督にそのシーンのことを伝えたら、監督もそのシーンが一番好きだっておっしゃって、すぐに意気投合したんです。
実際に静香先生を演じてみていかがでしたか?
今回も、自分なりに考えてから撮影に臨んだのですが、どうもしっくりいかないままに撮影も中盤になってしまったんです。そこで、いったん自分の中にあったイメージを全て捨てることにしました。そして、イメージづくりの代わりに子供たちとサッカーや竹馬をして、毎日ドロドロになるまで遊んだり、暇があれば町を歩き回って地元の人と交流を持ったり、そうやってただ毎日を楽しく過すことにしたんです。
今までと違った役づくりのアプローチですね。結果的にうまくいったのですか?
いつも撮影が終った後にやっと役になれたかなって思うことばかりで、撮影中にうまくいったかと聞かれてもわからないんです。でも、風にふかれる田園のシーンを撮影したときに、あ、ちょっと静香先生が自分に近づいてきたな、もうちょっとこの役を続けることができそうだなって思うことができたんです。それはやはり、子供たちと一緒に遊んだという経験が大きかったのだと思います。
静香先生にとっても、中村さんにとっても転機となる重要なシーンだったのですね。
- ※注2 『富江』(1998年)=ホラー漫画界で実力、人気ともにナンバーワンと絶賛される伊藤潤二の人気コミック「富江」を映画化。死んでもなお再生を繰り返すという美女・富江にじわじわと追い詰められてゆく月子(中村麻美)の恐怖を描いたSFホラームービー。
- ※注3 『東京ゴミ女』(2000年)=愛する人のすべてを知りたいという思いから、同じマンションに住む男の捨てたゴミを拾って集めてしまうみゆき(中村麻美)を通して、不器用だけれども、どこかいとおしくなってしまうような女の子の日常を繊細に表現した青春映画。
- ※注4 『火星のカノン』(2002年)=30歳を目前にした絹子の実らない恋愛と、彼女に秘めた片思いをしている少女・聖(中村麻美)を通して描かれるリアルで切ない恋愛ストーリー。


