talk! talk! talk! フォトグラファー・鈴木雅之さん


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料理の表情を引き出すには作る段階からの工夫が重要だ!

焼き魚のように焦げてしまうものはどうするのでしょうか。

焼き魚は、普通に焼いてしまうと、尻尾や目玉とかが確かに焦げやすいんですよ。本当なら、この焦げた部分も含めて焼き立てが美味しいのですが、写真になると残念ながらこの焦げたところが、美味しさを損なっているように見えてしまうのです。
 そこで、焼く前に化粧塩をするのはもちろんのこと、頭と尻尾の部分にアルミをかけるようにしています。ただこのとき注意するのは、アルミをギュッと頭や尻尾に巻き付けないようにすることです。なぜなら、すぐに外せるようにしておかないと、焼き上がって外すときに、アルミがくっついてしまって、身を傷つけてしまうからです。また、両面を焼くようなことはしません。片面だけです。焼くことで身が崩れやすくなりますし、撮影用では茶色になった段階で火からおろします。ものによっては焼きゴテなんかを使って、焦げ目だけをつけたりすることもありますね。
 実際に食べるときは、ある程度黒く焦げている方が美味しいんですが、見た目を美味しく撮るためには、半生状態が良いようです。

Photo 撮影・鈴木雅之氏
頭と尻尾を軽くアルミで包んでから焼く。
Photo 撮影・鈴木雅之氏
アルミで包んだ部分は火があまり通らない。身は片面のみ焼き色を付ける。
鈴木雅之さん

味付けとかはどうされるのでしょうか?

写真に匂いや味がついているなら別ですが、幸いにも、いまのところそんな技術はどこにもないので、味付けはほとんどしません。それよりも見た目に美味しく見えるようにするのが第一です。
 ものにもよりますが、煮物とか炒め物などの場合は、調味料の有無や炒め時間によって素材の発色なんかが違ってくるので、特に味付けをしないことが多いですね。
 あくまでも見た目重視なんで…。いろんなものが入っていると、鮮やかな色が出にくいみたいですね。
 例えば、醤油の量を減らしたり、濃口醤油で作るものを薄口醤油で作ってもらったりすることもあります。濃い色は、どんどん沈んでいっちゃうんですよ。

湯気なんかはどうするんでしょうか。あれって、結構むずかしいと思うんですが。

例えば鍋モノの撮影ですと、完全に食べられるようになった状態でないと湯気は出てきませんよね。でもその段階で撮るとなると、野菜なんかはすっかりしんなりしてしまって、見た目には全然美味しそうに見えないんですよ。京都で湯豆腐の名店の撮影とかでしたら、ある程度しかたないのかもしれませんが、それでもつゆだけ先に煮立たせておいて、豆腐をあとから入れたりしますね。
 でも広告の撮影で、寄せ鍋を撮るときなんかは全然違う方法でやるんですよ。

どうやって撮影するんでしょうか?

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コンロで石が真っ赤になるまで焼く。

寄せ鍋は春菊や白菜など、つゆが煮立っているところに入れただけでしんなりしてしまう野菜がたくさん入っていますよね。ですから湯豆腐のようなテクニックは使えないんです。でも京都の湯豆腐は、野菜が結構入ってますけどね。
 寄せ鍋などの場合は、まったく煮立たせずに湯気を出して、且つつゆがグツグツしている写真を要求されます。
 じゃぁどうするかっていうことなんですが、そんなときは石を焼いておくんですよ。

石を焼いてどうするんでしょうか?

赤くなるまで焼いた石を盛りつけた鍋の中に入れるんです。そうすると煮立っていないはずのつゆが、グツグツと泡を立てるんですよ。
 これなら野菜もしんなりすることなく、グツグツした表情の鍋を撮ることができるっていうわけです。

雑誌なんかもほとんどそうやって撮影しているのでしょうか?

湯気を出すための薬品もありますし、ドライアイスを使ったこともありますが、でもやっぱり一番美味しそうに見えるのは、料理人の方が愛情を込めて作ったものを、素早く撮ることでしょうね。住み分けというか、ケースバイケースというか、先ほども言いましたが、求められるものの違いによって、撮影の仕方も変わるんです。ですからどの方法がよくて、どれがダメっていうこともないんですよ。  あっ、忘れてましたが、どのケースでも気をつけていることがありましたねぇ。

ビンの傾きはコインで調整。美しく見せるための工夫の数々

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ビンの下にコインを入れて角度を調節する。

撮影のテクニックでしょうか?

料理の写真って、日本酒とかワインとかのビンを一緒に写すことが多いんですよ。でもこれをそのまま立てて撮ってしまうと、パース(実際には垂直に立っているビンなどが、レンズの曲面の影響で斜めになっているように見えること)がついてしまうんですよ。つまり真っ直ぐ立っているはずなのに、上がった写真を見ると斜めに立っているように見えてしまうんです。
 そんなときは、ビンの下にコインを入れて調整するようにしています。

Photo 撮影・鈴木雅之氏
コインを入れずに撮影したビン。
Photo 撮影・鈴木雅之氏
コインを入れ角度の調節をして撮影したビン。
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アイロンをはじめ、様々な小道具を準備して撮影に臨む。

料理の写真といっても、様々な撮影方法があることがよくわかりました。残念ながら時間もなくなってしまいましたが、最後に一つ教えてください。撮影のときに必ず用意するものはあるのでしょうか?

いっぱいありますよ。
 例えば家の庭でとった葉っぱの類いを用意することもありますし…。アイロンなんかは、必ず持参しますね。バックに使う布のシワを伸したりするのに欠かせません。
 他にも、ピンセットや綿棒は当たり前ですね。

今日はいろいろなテクニックを教えていただき、ありがとうございました。これからは、雑誌や広告で料理の写真に出会ったとき、この魚は本当に食べられるのかな?って観察しながら見るようにしたいと思います(笑)。