大阪ニコンサロン 2012年4月

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
笹岡 啓子

写真
Difference 3.11
3/29 (木) ~4/4 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

震災から一ヶ月経った4月、はじめて被災地へ行った。釜石市の高台で、私はカメラを取り出すこともできないまま眼下に拡がる町をみつめていた。そこで地元出身の方から「となりの大槌町はもっとひどい。広島に落ちた原爆が落ちたみたいだよ」という話を聞いた。広島出身の私はその表現に驚き、大槌町へ向かった。
車の窓ごしから見た町の印象は、確かに写真で見たことのある被爆直後の広島に似ていた。県道から海側へ、JR大槌駅のあった周辺を一人で歩いた。一面に茶褐色のがれきが拡がり、復旧用の道路が数本、白く交差していた。吉里吉里へ抜ける大槌橋から見ると、遮るものが無くなって、町を囲む山並みだけがくっきりと見渡せた。
冷たい海風が吹いて、肌寒い。砂塵が舞って目を開けていられない。焼け焦げた匂いと魚が腐ったような匂いが鼻をつく。折れ曲がったトタンが音をたてて転がっていく。骨組みが剥き出しになったビルの残骸がぶら下がったまま揺れている。よく見ると、がれきの間に行方不明者を捜索する人の姿がある。大槌町で見た光景は、3月11日以降、テレビやインターネットで繰り返し見てきた被災地の写真や映像の印象とも違っていた。いままで写真を撮ってきて、見たように写ったことは一度もない。もちろん、それを望んでもいない。歩いている間、たくさんのイメージが頭の中に浮かんでは消えていった。私はここで、はじめてシャッターを切った。
大槌町を撮影した後、津波の痕が生々しい三陸沿岸をゆっくりと南下していき、さらに、目に見えない原発の災禍に見舞われた阿武隈山地へと撮影地を拡げていった。あの釜石の高台で聞いた言葉の直接的な響きが、いまもずっと身体の奥に残っている。カラー30点。

作者のプロフィール

写真

1978 年広島県生まれ。東京造形大学卒業。2008 年「VOCA 展2008」奨励賞受賞。10年日本写真協会新人賞受賞。
写真展に、08年「SASAOKA Keiko 2001-2007」(タマダプロジェクトコーポレーション・東京)、「PARK CITY」(銀座ニコンサロン)、10年、「CAPE」(photographers’ gallery・東京)ほか、個展、グループ展多数。写真集に『PARK CITY』(インスクリプト、09年)、『EQUIVALENT』(RAT HOLE GALLERY、10年)がある。

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
新井 卓

写真
Here and There -明日の島
4/5 (木) ~4/11 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

岩手、宮城、福島は、ここ数年の間くり返し訪れ撮りつづけてきた、作者の愛する場所である。
昨年3月11日の震災以降、被災した沿岸部や福島第一原発の周辺でめまぐるしく変化する状況に圧倒されながら、そのとき見たいと思ったもの、遺しておきたいと願うものを、1枚ずつ手探りで、銀板写真(ダゲレオタイプ)に記録してきた。
写真は、写しとられた現実に劇的な効果を与える。津波に襲われた街区の言葉を失うほどの光景であっても、それは同様である。
写真という行為によってふたつの現実─写真の中の現実と、その映像に触れる人々の日常─を分断することなく、なにが可能なのか。
昨年4月、樹齢1,200年の三春滝桜を撮影するため福島を訪れた。津波の被害が甚大だった沿岸部とは違って、事故を起こした原発の周辺は奇妙な静寂に覆われ、山野は、まるで何事もなかったかのように浅い春を迎えていた。
作者は、これからこの場所で起こるであろう永く目に見えない変化を、自分という極小の存在を通して見つめてみたいと思っている。200年の時空を超える銀板写真が、きっとこの試みの役にたつことを信じて。ダゲレオタイプ10~20点。

作者のプロフィール

写真

1978 年川崎生まれ。写真家。国際基督教大学(ICU)中退。東京綜合写真専門学校卒業。横浜を拠点に、国内外の美術館、ギャラリー、大学、NPOなどと連携して多彩な活動を展開する。
写真黎明期の技法・ダゲレオタイプ(銀板写真)を独自に習得し、作品制作に用いる、現代において数少ない写真家のひとり。2006年横浜美術館にてダゲレオタイプによる個展「鏡ごしのランデヴー Rendezvous on Mirror」、2011年川崎市民ミュージアムにて個展「夜々の鏡 Mirrors in Our Nights」を開催。
公式サイト http://www.TakashiArai.com

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
吉野 正起

写真
道路2011 -岩手・宮城・福島-
4/12 (木) ~4/18 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

町のすべてが瓦礫の原になった絶望の現場に、即座にとりついて道路の復旧にとりかかる人々がいた。とにかくなにがなんでもそこへ行くために、一人でも生存者を助けるために、医療と食料を届けるために。
私たちはまずはじめに道路を必要とした。道路は、自衛隊もマスコミも泥棒も医者もヤジ馬も、無差別に誰でもつれてくる公共施設だが、少々の不都合は仕方ない。道路は、私たちが一人では生きていけない証拠だ。ある道路は跡形もなく崩壊し、ある道路は水中にしずみ、ある道路はずたずたになってしまったけれど、人はあきらめることなく工事をつづける。
道路は、どんなことをしてでも私たちが生きていく意志でもある。だから、たった一夏放置されただけで雑草の海になった田畑の中を、誰一人とおる者のない空っぽの道路がのびている時、その場所は今でも私たちの意志さえゆるさない、恐怖が支配しているということだ。カラー約60点。

作者のプロフィール

写真

1960年埼玉県生まれ。早稲田大学文学部卒業。日本写真芸術学会会員。93年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ・コミュニケイションズMA。95年第6回写真「ひとつぼ展」グランプリ受賞。
写真展に、96年「飛地の外の風景―成田空港周辺―」(銀座ガーディアンガーデン)、2010年「道路」(銀座ニコンサロン)などがある。
公式サイト http://jpgarden-jpfan.blogspot.com/

juna21 高橋 尚子

写真
景色は私に吸いつくか
4/19 (木) ~4/25 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

作者は学生の頃、冬の牧場で働いたことがあった。
たくさんの動物と人間との共同生活。作者は、子牛の哺乳の作業をまかされていた。大きな哺乳瓶で体温まで温めたミルクを与える。しかし、生まれてすぐの子牛は、それをエサと認識できず、なかなか吸ってくれない。その人工的な乳頭に、子牛が吸いついてくれるまでの数分間のやり取りの中に、どこか普遍的な関係性の法則が見てとれる気がした。カメラを手にして、そこに景色と自分があるとき、この時の感覚が再び思い起こされたのだった。カラー約40点

作者のプロフィール

1984年仙台市生まれ。ワークショップ「夜の写真学校」第16期生。
写真展に、2010年「景色は私に吸いつくか」(新宿PLACE M)などがある。

juna21 丸山 勇樹

写真
光野
4/26 (木) ~5/2 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

作者の生まれた町では、夜になると不思議な光が立ち上がる。その光の根本には何があるのか、作者は知りたかった。
光を追っていくと、発行体を見つけた。しばらくその光を見つめていると、それが膨張しているかのように見えてくる。
作者が生まれたときからその町にあるものが、突然、その姿を変えるのかもしれない。そんな不安と好奇心の中で、発行体にカメラを向けた。
※「光野」は、作者の故郷を中心に構成された架空の地名である。

作者のプロフィール

1986年生まれ。東京都市大学中退。日本映画学校映像科撮影・照明コース卒業。セツ・モードセミナー在学中。
APA AWARD 入選。1-WALL ファイナリスト。
東京都写真美術館、大阪市立美術館、町田市立国際版画美術館、新宿眼科画廊、3331、銀座ガーディアン・ガーデンなどでの写真展(グループ展)を開催している。