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ニッコールクラブ会員展

「Sapaからの手紙」古清水輝光

撮影者プロフィール

1944年、長野県出身。貿易関係業務退職後、モノクロ写真に魅せられ65歳から写真を始める。過去の写真展に「成田空港人模様」(2015年 ニコンサロンbis新宿)がある。

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インタビュー

きっかけを教えてください

ベトナムが好きで5、6年ほど毎年訪れるうちに、中国との国境付近の地域・サパ(Sapa)に興味を抱きました。ベトナム北部に位置するサパは、標高1600メートルの山岳地帯です。いくつかの少数民族の部落が集まって暮らしています。
現地の旅行社と半年かけて計画を練り、雨季をねらって、おととしの夏をサパで過ごしました。

撮影しながら意識したことはありますか?

サパはとても簡素な家が建ち並ぶ、貧しい地域です。滞在中は集落での生活を感じながら撮影するため、ホテルではなく民家に泊めてもらいました。
早朝、家畜のブタやニワトリの鳴き声が聞こえて目が覚めます。ヒヨコが親鳥の後ろについて歩く様子を見ていると、60年前の日本を思い出しました。先進国といわれる日本では、今やヒヨコも蛍光灯の下で育てられる時代です。しかし大自然の中で、あらためて本来の姿を見せつけられたように感じました。

印象深かった出来事は?

幼い家族の世話をしながら農業の手伝いをしたり、水牛を世話する子どもたちの屈託ない笑顔と、輝く瞳が印象的でした。山々の中腹まで棚田が広がる美しい景色も圧巻です。展示を見て興味を持たれたら、ぜひ、訪れてみてほしいです。

顧問講評 小林紀晴

ベトナム北部、Sapaの近郊にはいくつかの少数民族が暮らしているという。作者である古清水さんは6月の田植えの時期に合わせて現地を訪れ、その光景をカメラに収めた。代々、大切に受け継いできたであろう田んぼに水が入り、総出の田植えが始まる。どこか日本の里山を連想させる風景の中、人びとの暮らしぶりが丁寧で優しい目線で写されている。被写体との交流も随所に感じられ、作者の人柄を感じさせる。何より、同じアジアに生きる人びとの普遍的ともいえる農耕の暮らしが、モノクロ表現によりしっかりとらえられている。だからこそ、かつての日本の農村を連想させるのだろう。