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ニッコールクラブ会員展

「遠い町」梶原常実

撮影者プロフィール

かじわら・つねみ 1948年生まれ、大分県在住。由布院の風景撮影をライフワークとして、2004年と2013年に由布院駅アートホールにて個展を開催。ゆふいんアート委員会委員。

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インタビュー

作品のテーマを教えてください

70歳を目前にして、昔を思い出すことが多くなりました。「遠い町」は、遠い昔の記憶へ向かっていく旅のような作品です。
20代の頃、年の瀬のアルバイトで貯めたお金を使って毎年旅行をしていました。生まれも育ちも九州のため雪国に憧れがあり、北陸などを訪れました。半世紀ぶりの旅では3年間かけて北海道まで足を伸ばし、昔訪ねた町や新しい土地を歩きました。

撮りながら意識したことはありますか?

心に響いたものを素早く写すことです。普段使っているフルサイズの一眼レフではなく、ミラーレスカメラをポケットに入れて持ち歩きました。はじめは目についたものを撮るだけに留まっていたのですが、記憶や過去を表現するような演出をしたいと思い、抽象的な表現にも取り組んでいます。

これからの目標は?

ライフワークとして由布院の美しい風景を撮影していますが、今回の作品を通して、昔の記憶に入っていくような写真表現も追究できたらおもしろいと感じました。次に向けても撮り始めているので、なにか形にできればと思っています。

顧問講評 大西みつぐ

遠い昔の「記憶」とは、断片的に心によぎるつぶやきのようなもの。作者は半世紀ぶりに多くの町を彷徨い、導かれるままにシャッターを押しています。そこには大した整合性も物語もないのですが、既視感や感情移入によっては風景やモノが際立ってレンズの向こうに立ち表れてきます。それらは個人的というよりは普遍的な、あるいは時代の記憶と呼んで相応しいものかもしれません。通過者として町を流れ行く感覚も加わり、とてもスリリングなスナップショットです。