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ニッコールクラブ会員展

「氷下でつながる命たち」原田義則

撮影者プロフィール

1947年、東京生まれ。大阪在住。電機メーカーにて製品デザインに従事後、定年退職と同時期に写真を始める。2010年、全日本写真連盟 「日本の自然」コンテスト入賞。

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インタビュー

真冬の植物園で撮られています。

大学の研究用植物園で撮影しました。夏はハスの花などが鮮やかに咲いていて綺麗なのですが、撮影するとありきたりになってしまうのであまり興味がありません。しかし草木の枯れた冬の日に訪れると、水生植物の鉢や水槽のうっすらと張った氷の下に、美しく面白い世界が広がっていることに気づきました。

苦労したことは?

大阪の気候は暖かいので、薄氷が張るほどの寒さになるのは1~2月のたった数日です。また、晴天でないと色が鮮やかに出ず、光の具合から午前中しか撮影できませんでした。こういった条件下だったため時間がかかってしまい、ここまでまとめるのに5年かかりました。

タイトル「氷下でつながる命たち」について教えてください。

多くの植物は春から夏にかけて綺麗な花を咲かせますが、冬には枯れてしまいます。ただ、枯れるとすべて終わりなのではありません。その枯れ葉を肥やしにして新たな命が生まれます。植物は薄氷の下で、また来年の芽を出すため静かに冬の終わりを待っているのです。タイトルには今回の撮影を通して気づいた、私たちが意識していないところで次の命につながっているのだ、という意味を込めています。

顧問講評 大西みつぐ

美しい姿を永遠に留めたいと願う。その生命を凍結しずっとそのまま眺めていることの愉悦。原田さんの作品は、SF小説や映画で時折り表現されてきた世界、あるいは化学実験に使う「シャーレ」に入れた微生物の培養のように繊細で美しく未知のイメージが詰まっています。つながる命たちを見つめる仕事が「ネイチャー写真」だとしたら、この作品は私たちには計り知れない「宇宙」がそこにあることを示唆してくれます。