第64回ニッコールフォトコンテスト

総評

 ニッコールフォトコンテストの審査をやらせていただくのは今回で3回目ですが、第64回を迎える歴史と伝統の重みを感じながら進めさせていただきました。

 審査はニッコールクラブ顧問である大西みつぐ、織作峰子、ハナブサ・リュウ、三好和義、小林紀晴に加え、公益社団法人日本写真家協会専務理事の山口勝廣氏、写真雑誌「日本カメラ」編集長・前田利昭氏、第4部U-31部門には鉄道写真家の中井精也氏をゲスト審査員に迎え、計5日間の厳正なる審査を行いました。Webからの応募が、昨年同様に全体応募数の半分以上を占めました。

 ニッコール大賞に輝いた作品をご紹介します。第1部モノクロ部門の大賞は、星川明美さんの「M子さんの暮らし」です。消費社会に背を向けるかのように、多くを持たない「ミニマリスト」の生活を選択した女性を追っています。4枚組の中に女性の人柄、意思、声といったものを静かに感じさせ、それでいてリズム感のある作品でした。考え抜かれた構成だという印象を持ちました。上位に組写真が多かったのが、今年のモノクロ部門の特徴です。

 第2部カラー部門の大賞は、有田勉さんの「別れの日」。以前、ニッコールクラブの会報フォトコンテスト「サロン・ド・ニッコール」で1席を受賞した作品でもあります。大切に育てあげられた馬との別れが見事に凝縮された、密度の高い1枚です。馬と人、さらには人間同士の感情の行き交いといったものが「宴」の背後に透けて見えます。ある種の日本らしさ、風習といったものも感じられます。推薦となりました宇都宮修さんの「GROOVE」は、斬新な構図とスピード感が新鮮で、多くの審査員を驚かせるものでした。

 第3部ネイチャー部門の大賞は、河本新二さんの「知床の夜」という作品です。何度も通われて撮られた作品と伺っていますが、闇に浮かぶ動物たちが神々しさをまとい、あたかも童話の世界から抜け出したようにも、孤高な哲学者のようにも映る作品世界を作り上げていました。ネイチャー写真には珍しいタイプの作品で、その点が高く評価されました。

 第4部U-31部門には、伊熊教宏さんの「それでもパリは沈まない」が大賞に選ばれました。昨年のパリ同時多発テロ事件を踏まえている作品ですが、悲しい出来事に正面から向き合い、明日を感じさせる姿勢が評価されました。優しい目線の中に、力強さがあります。同じく特選には高校生の玉元楓さんの「雨上がり」という作品が選ばれました。身近なテーマを題材にした、骨太なモノクロ作品です。ほかにも高校生の作品がいくつか選ばれました。若い方たちの意欲を頼もしく思うと同時に、今後の活躍にも大きな期待を寄せています。

 なお、デジタルでの応募が飛躍的に増えている今日にあって、審査の過程で画像合成のあり方ついて真剣な議論が交わされたことを、最後に付け加えさせていただきます。

小林 紀晴