第62回ニッコールフォトコンテスト

総評

伝統の中に新しい風を吹き込もうと第60回の節目に第4部U-31からはじまったWeb応募、昨年からは全部門での応募が可能になり、今年はその2年目。さてどれくらい応募があるのかと、期待と不安で蓋を開けてみたら、昨年に比べ大幅に応募が増え、1万点を超える応募があり、たいへんうれしく思いました。今年度の応募総数は47,409点で、そのうちおよそ4分の1近くがWebからの 応募でした。入賞総数は217点ですからたいへんな激戦です。第62回ニッコールフォトコンテストの審査は、新しく顧問に就任された三好和義顧問をはじめとする大西みつぐ、織作峰子、ハナブサ・リュウ、海野和男のニッコールクラブ顧問、そしてゲスト審査員に公益社団法人日本写真家協会会長の田沼武能氏、『カメラマン』編集長の坂本直樹氏、第4部U-31には写真家の小林紀晴氏をお迎えして5日間をかけて厳正に行われました。Web応募の作品は2日間かけて1次審査を行い、最終的にはプリントしてほかの応募作品と同列に審査しました。

さて第62回ニッコールフォトコンテストの各部門の大賞に輝いた作品をご紹介しましょう。

第1部モノクローム部門、荒井俊明さんの「里暦」は、兵庫県の小さな集落に生きる人びとを撮影した4枚の組写真です。最後の遊んでいる子どもたちの写真が印象的です。代々受け継がれていく村の暮らしに思いを馳せる作品です。第2部カラー部門、塚本達男さんの「開発の波」は被写体が持つ力に加え、画面構成がとても力強く、審査員一同の目を引きました。周囲が切り崩され、ついに一軒だけ残された家ということはわかりますが、不思議な情景の写真です。写真の力強さと、メッセージ性はこの作品をおいてはないだろうということで大賞に選ばれました。第3部ネイチャー部門、上田正洋さんの「知床の海に魚影踊る」はサケが産卵のために戻ってくる現場をとらえたものです。波が来て、波間にこれから遡上しようとするたくさんのサケが写っています。これを写すためにどれくらい時間をかけたのでしょうか、戻ってきたサケの力がストレートに伝わってくる作品です。第4部U-31部門は山畑俊樹さんの「西岸地区」、パレスチナのヨルダン川西岸での撮影です。紛争地域でのドキュメント写真にありがちな気張ったところがなく、優しいまなざしでたんたんと、悲しい現実を撮られているところが素晴らしいなと思いました。若い感性があってこそ撮れる作品で、若い時に見知らぬところへカメラと共に旅へ出た勇気にも拍手を贈りたいです。

今回はベテランの方々が頑張られて多くの入賞者が出ましたが、U-31部門以外でも20代の入賞者が何人もおられてうれしく思いました。写真文化が途切れないためには、写真を競うコンテストにおいて若い応募者が増えることが重要です。今回応募された若い方々は、入選落選にかかわらず、これからもニッコールフォトコンテストに応募されるよう期待しております。カメラやレンズもどんどん素晴らしくなり、昔では考えられなかったような写真も撮れるようになったこの頃ですが、どんなに機材が進歩しても撮るのは私たち人間です。素晴らしい機材を使用したからといって、人を感動させる写真が撮れるというわけではありません。写真の中にどんなメッセージを込めたいのか、テーマは、コンセプトはといった作者の思いを写真に込めた、新たな作品づくりをぜひ期待しております。

海野 和男