第61回ニッコールフォトコンテスト

総評

今年は第61回目のニッコールフォトコンテストです。

昨年がニッコールクラブ設立、およびニッコールフォトコンテストがスタートして60回目の記念の年でした。 この大きな節目を迎え新たなる一歩を踏み出そうとしていた矢先、我々と共にニッコールクラブの 発展を心から願いご尽力されて来られたニッコールクラブ顧問、管洋志先生のご逝去は心に言い表せ ないほどの深く悲しい出来事でした。我々顧問は管先生の意思を受け継ぎ、ニッコールクラブの為に 一丸となって頑張ることが何よりの供養となると思っております。

さて、今回第61回ニッコールフォトコンテストの審査は、ゲスト審査員に公益社団法人日本写真家協会 専務理事松本徳彦氏、PHaT PHOTO編集発行人テラウチマサト氏をお迎えし、ニッコールクラブ顧問、 海野和男、大西みつぐ、織作峰子、ハナブサ・リュウの計6名で厳正なる審査が行なわれました。 なお、ゲスト審査員の写真家平間至氏は、体調不良の為、審査にはご欠席されましたが、後日、第4部 入賞作品をご確認、ご了承いただきました。

今年もモノクローム・カラー・ネイチャー・U-31各部へ総合計47,832点にのぼる作品が寄せられました。 その中の頂点、ニッコール大賞に輝いた作品の感想を述べさせていただきたいと思います。 第1部モノクローム、「釜で生きる」石津武史さんは、何度も現場に通い、近からず遠からずの距離感で お互いの存在を認め合った中でこそ撮れた作品だと思います。人間の逞しさと共に生きることとは何か? を考えさせられる、現実をしっかりと見据えた優れたドキュメンタリー作品です。 第2部カラー、「幻の季節」平本貴範さんは、少年の持つふんわりとしたピュアなイメージを春の桜と共に、 まるでショートムービーを作るような感覚で作り上げました。

第3部ネイチャー、「マグリット讃歌」室川康男さんは、新しいネイチャー表現で、驚かれたかもしれま せんが、この作品がニッコール大賞に選ばれるところがニッコールフォトコンテストらしさでもあるように思い ます。つまり一筋縄ではいかないといいましょうか、新たなる発想が奏でるインパクトを期待されていると いうことともいえます。

第4部U-31、「natural」紺田達也さんは、自身の愛祖母の入院、手術、その後体に付いた痛々しい傷を しっかりと見つめ、慈しむような柔らかな光を通して静謐な映像でまとめあげました。1枚1枚に、病室の 空気が伝わってきて呼吸を感じる作品です。

このU-31部門は、年々応募数、作品レベル共にあがってきており、今後益々若者からの作品応募が 増えることと期待をしています。レベルアップの裏には、カメラの軽量化且つ性能アップが影響している ことが原因のひとつともいえるのではないでしょうか。

毎年、撮影者のニーズに答えるべく研究が積み重ねられた高性能なカメラが開発され誕生しています。 フィルムカメラが全盛の時代には考えられないほど高機能になったカメラや、パソコン、プリンターなど、 機器の進化に伴い作品の仕上がりが格段によくなってきました。そして作品のスタイルも年々変化して きています。

ニッコールフォトコンテストは他のコンテストに比べて入賞が容易ではないと囁かれている理由の1つは、 表面的な形だけの作品は選ばれないところにあると思います。作品の根底にある作者の思いや、心の 奥底に眠る感情や物語、テーマやコンセプトをしっかりと持った作品……それらが写真という表現の上に 立ち、新しい方向性のもとに現れた時に感動を与えてくれるのです。1枚の作品であれ組写真であれ、 鋭い洞察力の下に新たに押し出し訴えてくる何かが伝わってくるかどうかを判断しているのです。

しかしながら、写真が訴える力や感動は、根底に「写真は楽しい!」「写真が好き!」と思うストレートな 気持ちから生まれてくるのだと思いますし、この気持ちがあればこそ途切れること無く創作活動を続けて いけるのだと思います。写真に向かう素直な気持ちを忘れることなく、また新たな作品作りへの挑戦を 期待しております。

織作 峰子