第60回ニッコールフォトコンテスト

総評

ニッコールフォトコンテストは今年、節目の第60回を迎えました。

このニッコールフォトコンテストは、ニッコールクラブ設立の翌年、1953年に始まっています。ということは、この2つは一心同体で共に歩んできたことになります。60年の長きに渡って、写真の世界の拡張、「写真文化」の向上、を目標にしてきたのだと思います。現在、日本は世界一のカメラ生産国であり、おそらくアマチュア写真家の人口も世界一であろうと思われます。それはすなわち、ハード面とソフト面が共にバランスよく成長してきたことだと思います。いくら素晴らしいカメラを作っても、それを使いこなす人がいなければ何にもならないからです。

そして、写真を楽しみで撮るアマチュア写真家の中に、表現をしてこそ写真の本当の価値があることを見出した方々がたくさんいます。そして、それが「写真文化」の向上に繋がっているのです。この ニッコールフォトコンテストはその方々の受け皿になってきたと思います。カメラを使って写真で表現する人を育てることの大切さを当初から考えていたからこそではないでしょうか。

さて、第60回目を迎えたニッコールフォトコンテストの応募作品には、節目の年を意識した力作がそろっていました。全体的には各部にわたり新しい表現や組作品へのこだわり、メッセージ性の強い作品が目立っていました。そして今回、一昨年から始まった第4部“U-31”の明らかな成果として、他の一般部門にも若い方々の応募が増えました。そして、堂々と上位入賞しています。その事実は、若い方々の作品が決して浮ついた表面的なものではなく、内容が充実した、体幹のしっかりとした新しい作品表現であることを物語っています。

今回はゲスト審査員に、公益社団法人日本写真家協会副会長の熊切圭介氏と写真雑誌「アサヒカメラ」編集長の勝又ひろし氏、写真家大和田良氏をお迎えして、ニッコールクラブ顧問の海野和男、大西みつぐ、織作峰子、管洋志、ハナブサ・リュウの、計8名で厳正な審査を経て各部門の賞位が決定いたしました。

ニッコール大賞に輝く各部の作品をご紹介いたします。第1部モノクローム、「幸せのひととき」岩渕真理さん、組作品の多い中で、日常での母子の至福な時をセンスよくストレートに単作品で表現しています。窓の内側で羽を休めているアゲハ蝶は、幼虫から育てていた蛹が孵化したばかりと、応募票に書かれた<撮影状況>を読み、より考え深いものがありました。第2部カラー、「Cambodia ~親がいない子どもたち~」大星勇樹さん、作者は昨年“U-31”で準特選を受賞しています。発展途上の国で凛として生きる人々を一貫して捉えています。優しい眼差しが一際輝いていました。第3部ネイチャー、「頑張れカワアイサの親子」上田正洋さんは、とても残酷な自然の厳しさを、淡々とした冷静な眼差しで見せています。客観的に立つ難しさを感じさせてくれました。第4部U-31、「雨の街」知念愛佑美さんは、“U-31”に3年間応募し続けての成果です。旅に出る想い、旅先の風景、孤独感、若い人らしい瑞々しい感性が光っています。

それぞれの表現は違いますが、共に小さな世界から大きな世界を展望しようとしています。現実社会をしっかりと見据えて、未来を感じようとしているのです。それはまさに写真で「生きることの大切さ」を表現しているのだと思います。すべての作品には、写真の素晴らしさ、生きることの素晴らしさが溢れていました。

来年また、未来に向けた素晴らしい作品を是非期待しています。

ハナブサ・リュウ